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19/25

19:振り出し

「ディオン! あなたずっとここにいたの!?」

「やぁ、おはようセリス……ふわぁぁ」


 アイテムボックススキルの事をどう説明しようかと悩んだ結果、眠れなくなって朝まで厨房にいた。

 話すとなるとリカバリーの説明もしなきゃならない。これはユニークスキルだ。

 今この瞬間、このスキルを所持しているのは世界で俺ひとり。

 全部話してしまった方が、この先楽ではあるんだけど……。

 そもそもリカバリーの性能だけだと、俺がいくつものスキルを自由に入れ替えられる理由にはならない。

 そこはスキルポイントの話になる訳で……すると転生者って説明も必要になってくるけど、転生者の存在は知られていない。


 で、どうするかって振り出しに戻る訳だ。


 はぁ……。


「眠ってないの?」

「あ、うん……ちょっと悩んでてね」

「あら。私で良ければ相談に乗るけど」


 それが出来ないから徹夜で悩んでいたのに……。


「あ、そうだ。厨房に食堂のテーブルと椅子を運んだんだ。これからはここで食事をとろうと思ってね。あっちの食堂はほら、ストーブが使えないし」

「いい考えね! これならわざわざ二階に食事を運ばなくて済むし。ここから料理で火を使うから、ある程度暖かいものね」

「うん。あと日中の間にマットを天日干しして、三階の掃除にしようと思う。一部屋に全員は狭いだようしね」

「ふふ、確かにね。じゃあ部屋割りはどうするの?」


 猫人族と、それ以外──と言うのは恥ずかしい。

 だってそれってつまり、俺とセリスが相部屋ってことだし。

 今までもそうだったけど、改めて部屋分けするのに俺たちがっていうのはね、うん。

 ここは普通に考えて、


「男女で分けよう。一番小さなクークをどうするかだけど、ナナさんに聞いた方がいいだろうね」

「そう……分かったわ。朝食の時に話しましょう。あ、でももう二、三日は上で食事ね。あの子たち、元気そうに見えてやっぱり体力が凄く落ちてるから」

「了解。運ぶのは手伝うよ。さて、今朝はどうしようか。まだ固形物は控えた方がいいよね」


 玉葱はコトコト煮込めば柔らかくなる。だから昨夜はオニオンスープにしたのだけど、別の味のほうがいいよね?


「昨日のスープが余ってるから、そこに魚の出汁を加えてあげたら?」

「残っているなら使わなきゃ勿体ないね。じゃあ出汁を取るか」

「イモ菜の葉を細かく刻んで入れましょう。少しだけね」


 それは喜ぶな。


 魚の骨も塩漬けにしてある。そのまま出汁取りにつかうと塩分過多になるので、いったん水で洗い流して、それからお湯を沸かした鍋へ。お湯は少なめで、出汁が出たら、オニオンスープに加えた。

 この時には既にイモ菜の葉も浮かんでおり、パセリを散りばめたように見える。


 今度はポタージュスープでもいいかもしれないな。






「わぁ、お野菜も入ってるニャ」

「玉葱だって野菜だぞ、ファンファ」

「そ、そうだったニャ。でもお兄ちゃん、お野菜二つも入ってるんニャよ! それにお魚の匂いもするニャぁ」

「美味しいねぇ、こんなご馳走が食べられるニャんて、ボク天国にいるみたいニャ」

「こらっ、縁起でもないこと言うもんじゃないっ」


 とまぁ、猫人族の子供たちは元気だ。

 ただそれは心だけで、体の方はまだ元気とは言えない。

 起き上がって歩けば、軽い貧血のようにふらつくときもある。

 ネネさんはまだマットから起き上がることも出来ない。


 食料調達……どうするかなぁ。


「それでね、塔の二階と三階で部屋を分けようと思っているの。さすがに全員で眠るのは無理だから」

「えぇ、それで構わないです。オレと……クークはどうする? 兄ちゃんと一緒でいいか?」

「ヤダ」


 クークの一言で、ロロは少しだけ傷ついたようだ。

 寂しそうに「オレだけです」と言った。


「じゃあ俺とロロ、それにゴンがこの部屋を使って、女性陣は三階だ」

「だけどネネさんが歩けるようになってからね」

「すみません、お手数をお掛けして」

「気にしないでください。部屋の掃除もあるんで、今すぐって訳にもいきませんから」


 それを聞いてロロが「俺がやります!」と声を上げる。するとリリも掃除を手伝うとと言い出す。

 いやいや、二人ともまだ本調子じゃないから、今日明日ぐらいまではゆっくりして貰わないと。


 だけど……住民が増えた分、更に食料の備蓄を増やさないと。

 野菜はなんとかなるだろうけど、タンパク質が必要だ。


「床を掃いて、雑巾がけするだけでいい。それ以上はしなくていいから、ゆっくり、休み休みやるんだよ」

「任せてください!」

「俺とセリスは魚を獲りに行ってくる。冬支度用にね」

「ファンファはクークとお母さんの面倒を見てあげてね」

「はいニャの!」

「クークも、お母さんを助けてあげるんだぞ」

「ニャ!」


 子供たちは『仕事』を与えられて嬉しそうだ。

 

 朝食のあとは昼食の用意をして、ストーブに鍋ごと掛けておく。

 じゃがいもを三つ入れているので、柔らかくなったら潰して解すように言ってある。


「じゃ、大漁を祈っててね」

「頑張ってください!」


 子供たちの応援があったからか、この日の釣果は、これまでで一番になった。



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