傾国の美女は旦那様に溺愛されたい!?
この国の一番の美女・美少女という称号10年ほど保有しているヒルダという女がいる。
黙って立っていれば、絵画や彫像のごとく、微笑みは慈愛をやどしていた。
が、口を開けば。
「旦那様はお仕事しすぎですので、私と遊びに行くべきです」
そう真顔で言いだす。
そんな彼女はグースの婚約者である。
婚約者なのに、旦那様と言って居ついている。同じ部屋に住みたいと訴える美女。周囲の評価はともかく、グースにとっては得体のしれない生き物だ。
「ねぇねぇ、お庭でピクニックしましょうよ。ほら、料理長オススメ、卵サンドがありますよ! 焼いてあるタマゴなんですって!」
「卵焼きね、たまごやき」
「あれはおいしいですわね。裏庭のニワトリさんたちに感謝ですわ」
重々しく言っているところは妙に神々しい。言っていることは食い意地が張ったことだが。
グースは自称妻を見上げる。座っている都合上、立っている彼女は見上げるしかないのだ。
麗しきという以外の誉め言葉ない。すべてが神の思し召しと言わんばかりの完璧配置。髪の毛はサラサラでいい匂いがするし、肌は滑らかで荒れているところを見たことがない。世話役のメイドが、手入れするところがありませんとしょんぼりするくらいのすばらしきボディ。
という美女が、何を血迷ったか、幼いころに火事で怪我をしてひどい見た目になり、人間不信を患っているグースの婚約者である。それも押しかけ妻も狙っている。
贅沢させてくれる素敵な旦那様が欲しかったというわりに、慎ましいお願いばかりだ。
ただし、仕事が中断され、なにも手につかないということになる。総合的に色々問題がある。
「今日は、ダメだよ。
買った領地の管理の引継ぎ全然終わってないし、みんな困るよ」
「そうですわねぇ。私が手伝えればよいのですけど……」
「だ、だめだからね! せっかく、そろえた書類、燃やしたりするから」
「ですわよね……」
ヒルダが扱うとこの部屋には火の気すらないのになぜか、部屋の中を書類が舞い、どこかへ流れて一枚だけ破損。そういう奇跡を起こす。
いやな方面の奇跡である。
しょんぼりしたヒルダにグースは焦った。不思議人間でもグースに好意を寄せてくれる人間である。がっかりさせてどこかに行かれてしまうのは嫌だった。
「ちょっとだけだよ……?」
「わぁい」
嬉しそうに笑う彼女にグースは胸の奥が温かくなるのを感じた。
ちょっとだけのピクニック兼昼食。食後、膝枕しましょうよと提案され、グースは逃げかえることになるのだった。
みたいな、終始、いちゃいちゃしているだけの話。
そんな話を書き続けることができるのか。
と自問自答して、無理そうという結論が……。うっかり陰謀とか入れたがる性癖の都合です。




