第一次羽毛獲得戦
クローゼット・ダンジョン 〜ある日、おうちにダンジョンが湧きまして〜より。
この世に魔窟が現れるようになって100年とちょっと。どこにでも現れる魔窟は、普通のお家にも発生するようになったのでした。
芙実の家のクローゼットに湧いたダンジョンは石壁型。ポップするのは服飾関係。最初に吸い込んだダウンコートやカシミヤコート、合皮ジャケットと裏地各種がお仕事したらしい。
そのうち、アルミも産出する可能性がある。
夢にあふれる魔窟である。
残念ながら実力があれば、という注意書きが付く。
「うぎゃーっ!」
悲鳴を上げながら芙実は迷宮を爆走する半馬にしがみついていた。
背後から怒れる怪鳥コカトリスが追いかけてきていた。通常のニワトリの3倍はでかい。羽毛が欲しいなといったらでてきたのである。
「これでも食べて死になさぁい!」
その背中でカピバラが瓶を投擲している。爆音とともにこけーっと悲鳴が上がる。
「アタシの左腕が唸りを上げたわっ! 投擲スキルアップ間違いなし!」
なお、カピバラの主職業は魔法使いである。瓶に風魔法付与してぶん投げている。省エネでいいわねぇとご満悦。
「こけーっっっ!」
爆炎をくぐり抜けた怒れるコカトリスが威嚇のポーズを取っていた。
「うわ、かっこいい」
「殺意が決まってますね」
「あああ、このぼんくらーっ! のんびり見てないで逃げなさぁい! いしにされたいのっ!?」
「いやです!」
「次よこしなさい。ほんとこの愚か者たちときたらぁ」
やれやれと言いたげな態度は腹が立つが、芙美が役立たずはそのとおりだ。錬成した新しい瓶をカピバラにわたす。
「爆炎。……ほんと、いやんなっちゃうぅ」
ぼそっと呟いてカピバラは右手でそれを投げた。
コカトリスの頭にクリーンヒットし、ごふっと音をたて倒れる。
「石にされた。
もう、石よこしなさい。あんでしょ? あなたのこわぁい妹のよこしたやつ」
「はい、どうぞ!」
手下のように芙実は要望のものを差し出した。ただの石のようで、よくわからない文字が書いてある。なお、半馬は背の上でアレコレされているので手出しはできない。ただの乗り物状態である。
「こけ……」
ふっ、俺としたことが、といわんばりの頭を振ってコカトリスが起き上がった。
それは再度、沈められる。
そして、二度と立ち上がらなかった。
「最初からアレで良かった気がするわぁ……」
「ですねぇ……」
そんな話をしながら、コカトリスに近づく。魔窟内では原生生物は一定期間消滅しない。剥ぎ取りしたら消えるというのはご都合主義が極まっている気がしたが、そもそも魔窟の存在理由がわからないので一般市民は気にしても仕方がない。
「あとは任せたわよぉ。アタシお昼寝してくるからぁ」
そう言ってカピバラが立ち去る。
羽をむしるという作業には向いてないのである。芙実は一人むしむしすることになった。半馬もやっぱり向いてなかったのである。
魔法使いが魔法を使わないのはフレンドリーファイアする仕様だからである。魔窟主VS侵入者扱いなので。




