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新たなスキルは命を繋ぐのか?

 僕は大馬鹿だ。

 大馬鹿すぎる。

 考えたらわかることだっただろう。

 ボーちゃんのHPが減っていた原因は一つしかなかった。

 ギフトエイにボーちゃんは既に襲われていた。すでに毒をくらっていた。


 僕が毒をくらったときはHP自動回復を持っていたため、毒によるダメージを相殺できていた。

 だが、ボーちゃんはそうではない。


 僕の現在MPは73。ヒールによる消費MPは4。

 つまり、18回……MPの自然回復分を考えても19回しか使えない。

 いや、そうじゃない。ヒールを使うには泡を出さないといけない。

 泡でMPを1消費するから、15、16回くらいが限度か。

 ボーちゃんはブラックリトルシャークだった時と同じように1分でHPが1減っている。

 僕の回復魔法では、まだ解毒魔法は使えない。

 HPが3になったときに回復をするように心がけても……猶予は6時間もない。


 そうだ!

 解毒用の海草!


 ミュルシェルの教えてもらって食べたあの海草ならばボーちゃんの毒を回復できた。

 そう思い、僕はあのときの場所を目指して泳ごうと思ったが、その海草がどんな海草だったのか、どこにあったか思い出せない。


 だが、海草の種類も多く、どれが解毒用の海草かわからない。

 もしかしたら、この中にないのかもしれない。

 とりあえず、僕は似たような海草を手当たり次第に食べてボーちゃんもその食べかすを食べたが、毒が治る様子はない。

 ボーちゃん、次に行くぞ! ……くっ……


【クリーンフィッシュ:HP4/25】


 ボーちゃんが僕から離れて浮いていた。

 いっつもは吸盤のようなものできっちりついているのに……HPが5を切ったらだめなのか。

 泡を出してヒールを唱える。

 ボーちゃんのHPが全回復して、僕の腹にくっついた。


「そうだ、ボーちゃん! 献身で僕のMPを回復できるか?」


 泡の中でそう尋ねた……が、ボーちゃんから反応はない。

 言葉がわからないのか。献身でMP回復、ヒールのコンボなら制限時間は実質なくなると思ったんだが。

 なんとか命令する方法はないか。


【絶対強制を取得するにはスキルポイントが足りません】


 この場合、強制的に命令するのも仕方ないが、スキルポイントはやはり足りないのか。

 その時、僕の索敵に獲物の気配がかかった。


 そうだ、あの時と同じ手段を使えばどうだ?


 僕は獲物――タコの魔物、オクトクラーケを見つけた。

 奴も僕に気付いたらしく、墨を岩陰に逃げ出そうとするが、そうはいくか!

 僕は体当たりをかませた。


【オクトクラーケ:HP 5/18】


 よし、まだ生きているな。

 僕のMPは2減ったが、これでこのタコは毒状態になったはずだ。

 あとはこいつが毒を回復させるために海草を食べてくれたらどれが解毒の海草かわかる。


 タコから距離を置き、観察する。

 途中でボーちゃんのHPが4になってしまったので、泡を出してヒールを唱える。

 よし、もう少しだ、待っていろよ。

 きっとあのタコが……


【オクトクラーケ:HP1/18】


 あのタコが……


【オクトクラーケ:HP0/18】

【経験値4獲得】


 くっ、ダメか。

 僕はオクトクラーケを食べた。


【スキル:“捕食”の効果により経験値5獲得】


 レベルが上がればMPが全回復するのだが、レベルが上がったばかりの僕にそれは見込めない。

 ボーちゃんのレベルも上がらなかった。

 3回目のヒールを終え、僕のMPは56。


 時間がない。

 手当たり次第に海草を食べ、ミュルシェルを初めとした魔物に毒攻撃をしたけれど、解毒性のある海草を見つけることはできなかった。


 そして、無情にもMPの残りが2になった。

 回復魔法はもう使えない。


 回復魔法のレベルが2に上がったが、覚えた魔法は【ヒールフォルテ】というヒールの強化系だった。

 これで治療できないかとボーちゃんに使ってみたが、毒の治療はできず、しかもMPを10も消費してしまい、時間制限を縮めるだけに終わった。

 

 何か……何かないか?

 ボーちゃんを救う何かが。


 ……ボーちゃんのHPは残り9……くそっ


 これがゲームとかならいいのに。

 絶対強制をするにはスキルポイントが足りない。


 ……ん? ゲームなら?

 ゲームでも、僕がパーティーのリーダーでない限り、命令なんてさせられない。

 僕たちの関係はあくまでも共生なのだから。


 ならば、ボーちゃんを僕の部下……つまり僕たちの関係を上下はっきりさせることができたら命令できるんじゃないか?

 ……対等な関係から強制すると思われる絶対強制と違う、その方法があるのでは?


【スキルポイントを25支払い、テイムを取得しますか?】


 ……ぎりぎりだ。ぎりぎり覚えられる。

 僕はYESを選択。


【スキル:テイムを取得した】


 テイム……調教だよな。

 倒した相手を部下にするスキル。

 だが、すでに毒状態で弱っていて、僕と共生状態のボーちゃん相手ならどうだ?


 MPを消費するのか? それも問題だ。

 でも、やってみるしかない!


 テイム!


 そう念じた。

 すると――


【クリーンフィッシュが配下に加わった】

【配下残り1/2】

【称号:支配者を取得した】

【スキル:君主を取得した】

【クリーンフィッシュに変身可能です】

【称号:称号収集家を取得した】


 よし、ボーちゃんが配下に加わった。

 しかもMPは消費していない。

 ボーちゃん、命令だ! 献身スキルを使って僕にMPを2渡すんだ!


 すると、お腹のボーちゃんからゆっくりと魔力が伝わってくるのを感じだ。

 僕のMPが2回復し、ボーちゃんのHPが2減った。

 ボーちゃんの残りHPは6……毒でも1減っている。

 僕は泡を展開、その中に口を入れ、ヒール!

 と唱えた。

 すると、ボーちゃんのHPは全回復した。


 ……これでなんとかMPの心配はしなくてすむ。

 献身スキルと回復魔法のコンボは現在のところ最強だ。


 でも、予断を許さない状況はまだ続くだろう。

 ボーちゃんの毒はまだ消えていないのだから。

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