対決 ブラックシャーク
砂地を進む僕とブラックシャーク、流石に今回は油断できる相手ではない。
二匹の距離が残り三十メートル程度あるところで、僕は泡を膨らませ、口をツッコミ
「土針!」
そう唱えるも、現れた土の槍は、ロッシュクラブに対しては大きいが、僕たちブラックシャークにとっては、本当に針のような大きさだ。
大したダメージは与えられない。顎に刺さる程度。
【ブラックシャーク:HP289/300】
それでも、まずは直接戦う前にできるだけダメージを減らしておくことができるのはいい。
「土針! 土針! 土針!」
3回唱えて、土の槍は全てブラックシャークに命中した。
よし、このまま一気に――と思ったところで、ブラックシャークが急浮上しやがった。
上に逃げられたらもう土針での攻撃はできなくなる。
【ブラックシャーク:HP271/300】
1割も減っていないか。このまま戦ったらこっちもただでは済まないな。
「落穴! 落穴!」
目には見えない穴を掘る。
戦う準備は整った。
浮上していた鮫は、巨大な口を開け、僕目掛けて真上から襲い掛かってくる。
残り10メートル、5メートル!
僕は泡の中の顔を中心に回転し、尾っぽを下に向けた。
3メートル……「落穴!」……!
僕の足元――いや、目の前にぎりぎり僕が通れるくらいの穴が開く。と同時に、僕の顔の泡が割れて消えた。
ボーちゃん、しっかりつかまっていろよ!
僕は急いで穴の中に入る。
穴の底にはさらに穴があり、そこから横穴が伸びている。
僕があらかじめ掘っておいた穴がこれだ。
そして急いで泡を展開。
横穴に入り込んだ僕は急いで泡の中に口を入れ、
「落穴! 土針! 土針! 土針!」
前に出口となる穴が現れ、僕の後ろには土の槍が真上に伸びる。
僕は現れた穴から逃げようと進むと、後ろから砂埃が舞い、血の匂いが漂ってきた。
……落穴で作った穴は簡単には壊れないけど、本当に大丈夫だろうか?
急いで穴から逃げ出すと、入口だったところに鮫が突き刺さっていた。
【ブラックシャーク:HP204/300】
おぉ、なかなかのダメージだ。
そして、奴は今、普通に動けない。つまりチャンス!
僕は大きな口を開け、
――いただきます!
奴の腹に噛みついた。っていってぇぇぇっ!
くそ、スキルの鮫肌の効果か。ってあれ? 痛くない?
よし、いただきます! あ、やっぱり痛……くない!
僕は全力でさらに噛みついた。
ブラックシャークが必死に暴れるが、穴が狭いのと、土の槍がくいこんでいるせいか動けない。
でも、こいつの鱗はかなり硬い。
いままでのように簡単には殺せない。
ブラックシャークが暴れるたびに奴の盾鱗、鮫肌が僕の口を擦って一時的にダメージを与えてくる。
まぁ、すぐに痛みは引くんだけど。
もうすぐだ。
【ブラックシャーク:HP90/300】
よし、残り3割。このまま一気に――と思ったところで、僕の腹の下が崩れた。
バカな、魔法で作った穴を壊しただと!
そして、そいつは僕の腹に噛みつこうとしてきた。
しまったそこにはボーちゃんが……あれ? いない?
と思った瞬間、腹に激痛が走った。
いってぇぇ、まるで剣山の上で寝ているみたいだ。
針の筵だ!
でも、ボーちゃんが先に逃げていてくれて助かった。こんなの喰らったら一瞬で死んでいただろう。
だが、奴のHPはもう風前の灯火。
このままHPを削って行けばこっちが倒せる。
根競べをするには、こっちが有利すぎた。
そして、僕のHPが200を切る前に、奴のHPは0になり、絶命した。
【経験値220獲得】
【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】
よし、レベルが上がった。次は今夜……あ、まだ午前中か。ならブランチの時間だ。
と、その前に、ボーちゃんを探さないと。一体どこに逃げたんだ?
お、あんなところに……って危ない!
ぷかぷか海底を漂うボーちゃんの横に、そいつはいた。
【ギフトエイ:HP12/12】
あぶない、毒針持ちのエイじゃないか。
ボーちゃん危ねぇっ!
僕はそいつに突撃し、
【経験値6獲得】
【スキル“捕食”の効果により経験値9獲得】
あぁ、悪い、ボーちゃんの分まできっちり食べちまった。
でも、安心しな、もっと大きなエサが……って、
【クリーンフィッシュ:HP1/20】
ボーちゃん! どうしたんだよ、それ。
瀕死じゃないか。
僕は慌てて泡を作ってその中に口を入れ、
「ヒール! ヒール!」
回復魔法を唱えた。
ふぅ、これで大丈夫だ。
すると、ボーちゃんは元気に泳いで僕の腹に行き……
【クリーンフィッシュ:HP3/20】
となって瀕死状態に戻っていた。
そして、僕の腹から離れて砂地を浮かんでいた。
な、なんで?
って、そうか。ボーちゃん、献身で僕の身体を治療したのか。
でも、なんでそんなになってまで……
(宿主のために命がけで頑張る良い魚だよ)
神が言っていた。命がけって、そこまでするのか。
そういえば、戦い中、ブラックシャークに噛みついたとき、鮫肌のせいで痛みが走ったのだが、それがすぐに消えていた。
今思えば、ボーちゃんが治療してくれていたのか。治療して、治療して、治療して、HPが少なくなって戦いの衝撃に耐えられなくなって、僕の腹から離れたのか。
ボーちゃんは逃げたんじゃなく、最後まで戦ってくれていた。
とりあえず、僕は自分にヒールをかけてHPを全回復させてから、ボーちゃんに回復魔法をかけた。
……つ、疲れた。
MPがほとんど空になっている。
ボーちゃん、二度とこんな無茶をしないでくれよ。
と、そうだ、ブランチの時間だ。
幸い、鮫肌のスキル効果は死んだあとは発動しないらしく、大した怪我をすることなく僕たちはブラックシャークを味わった。
もちろん、フカヒレは仲良く半分ずつ。
僕が背びれで、ボーちゃんが尾びれを食べた。
んー、あまりおいしくないな。
味付けがないせいかな。
食べ終わったとき、僕だけでなくボーちゃんにもある変化があった。
【ヴィンデのレベルが上がった。各種ステータスがアップした。スキルポイントを手に入れた】
こっちは予想通り。いや、予想よりも早くレベルが4になれたのでうれしい。
そして、
【クリーンフィッシュ:HP24/25】
HPが5増えていた。そういえば、最初に会った時はHP19だったから、そこから比べたら6も増えてる。
ボーちゃんもちゃんと成長してるのか。
でも、なんかHPが減ってるな。
ヒールをかけておくか。




