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蜘蛛たちが守りし者

暫く更新空いてすみません。理由は一番最後に。

 攫われていないというノーチェの言葉を聞きながら、僕は変身し、BB(ブラックベビー)ドラゴンに戻った。

 そして、ノーチェを傷つけないように気をつけて、爪で縄を切り裂く。

「ありがとうございます」

「ううん、ノーチェを助けるのは僕の役目だから。それで、どういうこと? ノーチェが攫われていないって」

「実は――」

 とノーチェは麻痺で動けなくなっている男を見て言った。

 なんでも、この男たちの仲間が魔蜘蛛に捕らわれてしまったらしい。

 それを助けに行きたいのだが、毒状態になったときのためにキュアを使えるノーチェの力が必要だった。最初は本当に誘拐して無理やり連れて行こうとしたそうだが、事情を聞いたノーチェは自らの意志で彼等についていくことにした。

 本当は僕にも相談したかったそうなのだが、男たちが首を横に振った。

 そう言って油断をさせて、ドラゴンに自分を襲わせるかもしれない、そう思ったのだろう。

「でも、魔蜘蛛たち、その人はもう食べられちゃっているんじゃない?」

「そうかもしれませんが、魔蜘蛛は獲物を捕らえると、一度巣の奥の食料保存庫に連れ込む習性があり、三日前に連れ込まれても生きていたという報告もあるそうです」

「なるほど……」

 僕は気を失った三人を見て、嘆息を漏らす。

 こいつらをこのままにしてその男を助けに行くわけにはいかない。

 そんなことをしたら、もれなくこの三人も救助候補にあがってしまう。

「クリス、ここまで世話になっていて悪いが、三人を連れて地上に上がってくれないか? 僕たちはそのひとりを助けに行くよ」

「私がそのひとりを助けに行きましょうか?」

「いや、蜘蛛相手だと、火を吹ける僕のほうが有利だし、解毒魔法も使える。それに、この三人と一緒にいたら、せっかくのめでたい日に邪魔されたことに対して嫌がらせをしたくなるからね」

「そうですか、わかりました。ヴィンデさん。そして、ノーチェさん、どうかご武運を」

 クリスはそう微笑むと、僕は麻痺毒で動けない男にキュアをかけてやった。

 これで麻痺が完全に抜けたはずだ。

「じゃあ、行ってくるよ」

 僕はそう言って、ノーチェと一緒に地下を目指して歩いて行く。

 嗅覚強化で人の匂いを追って。

「でも、本当に心配したんだよ、ノーチェ」

「……ごめんなさい」

「怒ってないよ。でも、そのノーチェのその優しさにつけこむ悪いやつがいるかもしれないってことは覚えておいてね」

 これは決して嫉妬とかじゃないよ。ノーチェの優しさを一身に受けてきた僕以外に、ノーチェの優しさを享受する男が現れたことへの嫉妬なんかじゃない。

 でも、クリスを帰らせたのは少しだけラッキーだ。

 彼女と一緒にいたら、ノーチェにカッコいいところを見せられないからね。

 蜘蛛くらいなら僕の炎で楽勝だ。

「そういえば、ノーチェ。光の弓は? もしかして奪われたとか?」

「それはここにあります」

 と、ノーチェはスカートの中から光の弓を取り出す。

「これ、折り畳みができるんです。本当にいい光の弓ですね」

「う、うん」

 スカートの中から武器を取り出すって、セクシーすぎる。

 童貞の僕には刺激が強い。

 ……童貞と言いながら、子供いっぱいいるんだけど。


 暫く歩くと、蜘蛛の糸が多くなってきた。

 僕が炎を吐いて焼き払っていく。

 チリチリと音を立てながら焦げ落ちていくのを見ていると、

「ノーチェ、後ろに下がっていて。魔蜘蛛たちが来る」

 巣を壊されたことへの報復か、前から蜘蛛たちがわらわらと現れた。

 この光景、虫嫌いだったら軽くトラウマものだな。

 でも、僕にとっては経験値体力獲得の大チャンスだ。

「……ヴィンデさん」

「大丈夫、すぐ終わらせるよ」

「いえ、その……彼等は何かを守っているように思えます」

「なにって……もしかして子供とか?」

「そうではありません。もしかしたら、この先にいるのかもしれません」

「いるって何が?」

「魔蜘蛛の女王が……この迷宮のボスが」

「迷宮のボス?」

 それって……と僕は思い出す。

 これまで行った二カ所の迷宮。

 海底迷宮と森の迷宮。その二カ所のボスはこう呼ばれていた。


 魔王……と。


 魔王がこの先にいるっていうのか? いや、まさかな。

 きっと、アリにとっての女王アリ、ハチにとっての女王バチみたいな女王蜘蛛でもいるんだろう。

 クイーンスパイダー、みたいなのが。


 でも……うん、大丈夫だ。この先にいる気配を見ても、一番濃い色は薄いピンク。僕の敵じゃない。

 魔蜘蛛たちも今の僕にとっては白色の気配だし、獲物でしかないね。


 僕と距離をとりながら巣を守ろうとする蜘蛛たちを見て、


「まだ浅い階層だから大丈夫だよ。マッピングの地図を見ても3%も埋まっていないから、奥はもっと深いはずだし。ノーチェ、フォローをお願い、」


 と僕は飛んでいき、バランスを崩しそうになる。

 いけない、体がまだ本調子じゃないのを忘れていた。

 でも――と僕はなんとかバランスを保ち、


【ドラゴンブレス!】


 口から炎を放つ。

 魔蜘蛛たちは一瞬にして丸焼きに。まるで芋を焼いたみたいなクリーミーな匂いが広がる。

 そういえば、魚だったころは焼いたものを食べたいと切に願っていたなぁ。

 さすがに蜘蛛を食べたいとは思えないけど。


【経験値135獲得、次レベルまで残り経験値3057】

   ・

   ・

   ・

【経験値135獲得、次レベルまで残り経験値2011】

 よし、9匹くらい倒したな。

 ついでに巣も焼けていき、

【称号“陣地クラッシャー”を予約取得した】

【スキル“陣地効果()らし”を取得した】

 という称号を予約取得、スキルを取得した。

 どうもスキルで陣地を作るとその陣地に応じた効果が発生することがあり、陣地効果減らしはその効果を意図的に減らす力があるそうだ。

 よしよし、また強くなったな。

「ヴィンデさん、こっちも終わりました」

「ノーチェ、お疲れ様」

 とりあえず倒した蜘蛛たちはアイテムバッグに保存。全部食べたらレベルアップできるだろう。

 もちろん、今は食べない。ノーチェに見られたくないということもあるが、なによりこれからは婚約式があるんだから、そのためにもお腹を空かせておきたい。

 はやく、捕らわれているバカを助けて帰ろう。

 そう思った時――巣の向こうにそいつはいた。

 倒れた男。きっとあのスパイダーハンターたちの男だろう。

 蜘蛛の糸で簀巻きにされて動けなくなっている。

 それともうひとり。


「あれは……」


 そこにいたのは、ひとりの人間の女性だった。

 ただし、人間なのは上半身のみ。

 下半身は八本足の蜘蛛だった。


【アラクネ―:HP357/357 MP294/294】


 そこそこ強いけど僕の敵じゃない。

 でも、一番の問題は――


「ヴィンデさん、見たらだめです」

「見るなって言われても」


 そのアラクネーは可愛らしい外見なのに、上半身丸裸だった。

 くそっ、さすがに人型の、しかも女の子の姿の魔物と戦うのはきついか?

 そう思った時だった。


『あの……私の声がわかりますか?』


 確かにアラクネーは僕にそう語りかけたのだった。

更新が暫く空いてしまってすみません。

というのも、成長無職、アイコレの原稿があっただけでなく、

「お魚から人外転生の出世魚物語 ブラックバスからいつかブラックドラゴンへ!」

の書籍化が決定して、それを原稿に起こす作業で、手がいっぱいでした。

詳しくは活動報告に書きますが、とうとうWEB小説から書籍小説に進化しました。

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