クリスティーナのステータス
感想欄でクリスが偽物説が続出。普通に強いんですけどね、彼女は。
凄い、凄すぎる。
僕は本音でいえば、人を越えた力を手に入れたと思っていた。まぁ、人を越えたというか、人ではないんだけれども。
でも、目の前のクリスという女性は、僕の常識という壁の遥か先にいる。
「ヴィンデさん、どこから探しましょうか?」
「あ、うん、ちょっと待って」
何かいいスキルはあったかな? とステータスを見て、それを見つけた。
嗅覚強化。そういえば全然使ってなかったな、このスキル。
僕は鼻をピクピクさせる。
ノーチェの匂いは……あっちか。他にも最低三人の匂いがする。
「あっちにノーチェの匂いが続いている。血の匂いとかはしていないから無事のはず」
「では、急ぎましょう」
僕はクリスの肩に乗せてもらい、ノーチェのいる場所を目指す。
途中で大きな魔蜘蛛――巨大魔蜘蛛(そのまんまの名前)が現れたけれど、クリスの剣がそれを一刀両断するのに三秒もかからなかった。
一刀両断された巨大魔蜘蛛が魔蜘蛛の虹糸玉を落とすも、彼女は一切振り返らずに前へ前へと進む。
クリスは強い。彼女と一緒ならば、スパイダーハンターなど一網打尽にできるだろう。
クリスのステータスを覗こうかと思ったが、ギルドの受け付けのお姉さんを思い出す。あの人のステータスを勝手に見ようとして怒られた――というか脅されたあの時のことを。
「あの、クリスさんのステータスを見せてもらっていいですか?」
クリスに走って貰って僕は楽をさせてもらっているので悪いかと思ったけれど尋ねた。
「ステータスってなんですか?」
「あぁ、ステータスって知らない人がほとんどなのか。えっと、筋力とか魔力とかを数値化して見ることができるんだよ」
「……んー、よくわかりませんが、別にいいですよ」
【クリスティーナのステータス閲覧許可が一部出ました】
閲覧許可が出た。よし、見てみよう。
……………………………………
名前:クリスティーナ
種族:ヒューム
レベル:91
HP 9872/9872
MP 120/120
状態:契約
スキルポイント180
……………………………………
ぶっ。
思わず吹き出しそうになった。
すごい。
レベルもそうだけど、HPが1万に達しようとしている。
状態が契約となっているけれど、一体何の契約を結んでいるんだろうか?
【称号:“高みを知る者”を予約取得した】
【スキル:“ステータス把握”のレベルが6に上がった】
称号が手に入った。高みを知る者の取得条件は予約取得なのでわからないが、恐らく自分よりもはるかに強い人のステータス閲覧許可を貰うことで、ステータス把握のレベル上昇ボーナスがつくのだろう。
レベルの上がったステータス把握で、クリスを見てみる。
すると、まだ力とか速度は見られないけれど、称号が見られるようになっていた。
……………………………………
名前:クリスティーナ
種族:ヒューム
レベル:91
HP 9872/9872
MP 120/120
状態:契約
スキルポイント180
称号:【神子候補】【神童】【英雄の子】【冒険者】【巨乳】【ゴブリンハンター】【ゴブリンの天敵】【薄幸】【剣の申し子】【詐欺被害者】
【称号収集家見習い】【賞金稼ぎ】【王を導きし者】【白光】【剣鑑定士】【冒険者マニア】【剣マニア】【B級冒険者】【A級冒険者】【カモ】
【称号収集家】【盗難被害者】【勇者候補】【蜥蜴の天敵】【牛人の天敵】【勇者】【神薬漬け】【剛腕】【鉄壁】【借金王】
【称号マニア】【神剛腕】【過回復】【ホエールハンター】
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……いろいろと凄かった。
冒険者として活躍してから、なんかいろいろと不幸な目にもあっているように思える。
幸が薄かったり、詐欺や盗難の被害にあったり、最終的に勇者になってから借金まみれになっている。
そんな気がする。
残念なことに、クリスの称号は称号鑑定でも調べることができなかったから、称号の入手条件は僕が思っているようなことじゃないのかもしれないけれど。
でも、詐欺の被害にあって称号が手に入るのなら、あの詐欺師にもう少し騙されたらよかったかな。
「ヴィンデさん、どうでした?」
「う、うん、凄いよ。物凄い強い……ところで、クリスさん。神薬って知ってる?」
ステータスに、神薬漬けとあった。薬漬けだと危ないイメージはあるけれど、今のクリスにそういう悪い雰囲気はない。
彼女の強さの秘密は、その神薬ではないか? と思って尋ねたのだけれど、
「神薬ですか? そうですね、力の神薬という、力を恒久的に一割上昇させるという薬があるそうです。一度でいいから飲んでみたいですね。超薬という一パーセント力が上昇する薬は最近見かけたんですが、お金が借りれなくて買いそびれたんですよ」
……あ、そうなんだ。
神薬漬けの神薬とは関係なさそうだけれども、クリスが借金体質だということはよくわかった。
そんなにお金に困っているのなら魔蜘蛛の虹糸玉を拾わないなんて……もしかして、ただ単純に気付いていなかっただけ……ということはないよね?
うん、考えないでおこう。ここで進言して、引き返されても困るし。
「……クリスさん、ノーチェの匂いがだんだんと近付いてきている。もうすぐだから急ごう」
「はい!」
クリスはそう言うと、速度を三割ほど上げたのだった。
この物語は異世界でアイテムコレクターの番外編ですが、ステータスやシステムに関しては多少異なります。あっちの物語ではそもそもレベル、称号の概念が存在しません。
なので称号を手に入れてステータスを覚えることはありませんし、スキルポイントもありません。
このステータスは、クリスがもしもこちら側の住人だったら、程度に思ってください。




