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また、当時は観光のルートも十分に確保されてはいなかったとか。
そういった、観光客の安全を考慮しなければならないという面から、宿場町の設立は宿泊食事の他に、谷の案内人を置くための場所を作るという意味合いも持っていたようだ。とフリックは続けて説明する。
しかしながら、こんな山間谷合の地帯に、都合よく行商が集まるのだろうか。
「それに関しましては、カトレアを拠点にする商人たちが中心となって動いていたのだと聞いております」
第二停車駅は、アイアンホースのために作られた停車駅ではない。元は首都と大陸南の港町を繋ぐ路線の中間地点として開拓された場所である。
「表面上は物資補給場所となってはいますが、駅の周辺地域の特産物を首都へ発送していたりしますから、事実上、物品の流通も担っているのです」
首都から港町間の中央路線はアイアンホース路線と違い、旅客車だけではありませんしね。とフリックは付け足す。
「そんなカトレアですから商人は当時から大勢居たのでしょう。売り手が過多であったという話も聞いたことがあります。であれば、そこから新たな商業地を求めて旅立つのは至極自然なことではないでしょうか」
言われて納得するロニ。
確かにカトレアに腰を据えていた商人であれば、環境は微妙に違うにしても荒野での商売に少なからず心得があるはず。
ただ、問題もある。
物資の運搬についてだ。
人間は徒歩で目的地へ向かうことができるが、物資を運ぶとなると話は別だ。しかも人が留まる休憩所・宿場町として機能しなければならないだけの物量を運搬するとなると、その労力は生半可なものではない。
フリックは目を細めながら言う。
「当初は行商たちが仕入れて、その都度運んでいました」
「人力、ですか」
途方もない話だ。




