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レイヴァンが先ほどの話の確認を取ったのは食事の終わりかけだった。
回りくどい話が嫌いな彼はマリアンに端的に旅に出たいのかと質問をする。
彼女はスプーンを机に置き真剣な眼差しをレイヴァンに向けた。
「もちろん本当です。 悪魔が私の命を狙っているとなると私がこの街に居るかぎり、ここは常に危険に晒されることになります。 これ以上皆や街の方に迷惑はかけられません」
「別のどこかで暮らそうとは考えなかったのか?」
「それも考えました。 しかし別の街で暮らしたとしても悪魔が私を見つけてしまえば、それまでのこと。 この街と同じような悲劇が生まれます」
「だから旅をして大陸を転々としたいわけか?」
「連れて行っていただけますでしょうか?」
「連れて行くとなるとだ……。 俺たちは悪魔を封印、討伐するハンター。 今回のような血生臭い惨劇をこれから毎日のように目にして行くことになる。 覚悟はできているのか?」
「もちろんです」
「旅に出れば、まともに食事や睡眠がとれないし、何日間も風呂に入れないぞ?」
「我慢できます」
「時には俺が人間を殺める瞬間を目撃することにもなる」
「誤った殺生ならその時は私が救ってみせます」
彼女はミレーニアと瓜二つ。
一国の姫だった彼女と同じくマリアンも澄んだ瞳と凛とした表情に迷いがなかった。
正直なところ旅慣れない彼女の同行は反対だった。
毛嫌いしそうな話を並べ諦めさせるつもりだったのだが、彼女の揺るぎない意志を覆せそうにない。
まるで本物の王族の気質を持ち合わせているようだ。
レイヴァンが唸っていると、今度はマリアンが心を見透かしたように質問をする。
「レイヴァンは私が一緒にいると不都合ですか?」
「そうだな、旅慣れない修道女が一人増えるとなると何かと不都合だ」
「それでは、こういう考えはできませんか?」
レイヴァンが首を傾げると彼女は一層真剣な眼差しを彼に向けた。




