~ 66 ~
「何を企んでいる?」
「企みではありませんが……」
彼女が答えあぐねていると、レイヴァンが逆に問いかけた。
「理由を聞かずに連れて行くとでも思ったか?」
「そんなことはありません」
「なら何だ。 得意のお告げとでも言うか?」
「そ、そうです」
咄嗟に返事をした彼女だが表情を見れば嘘だと解る。
「修道女が嘘をついていいのか?」
「申し訳ありません」
ウィルが口を噤んでしばらくすると静寂の中、勢い良く扉が開いた。
「ご主人様〜!」
喜びに満ちた明るい声と共に小さな少女リルが部屋に入ってくる。
彼女は主人であるレイヴァンを視界に捕らえると躊躇うことなく飛びかかり抱きついた。
「ご主人様、やっと目が覚めたんですね! リルとっても心配してたです!」
「お前に心配をかけさせるとは俺もまだまだ未熟だな」
「そんなことないです。 ご主人様はいつでも最高です!」
彼女が背中に回した腕に力を込めたことに気がつくとレイヴァンは応えるように彼女の頭を優しく撫で、真剣な言葉には笑みを返した。
「ところで、リルはご主人様に渡さないといけない物があるです」
抱きついていたリルがそう言って突然ポケットから取り出したのは一つの指輪だった。
その意匠には見覚えがある。
悪魔が身につけていたものだ。
だが、奴の手と同時に吹き飛ばしたはず。
「リル、これをどこで手に入れた?」
「どこって、倒れていたご主人様の近くに落ちていたから、ご主人様の物だと思って拾っておいたです。 違うんですか?」
「これは悪魔が身につけていた指輪だ」




