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「俺はそう簡単に死なないから寝かせて置いてくれれば十分だったものを」
「ご、ごめんなさい。 あなたがずっとうなされていて、あまりにも苦しそうだったので……」
そこまで話して何かを思いだしたかマリアンは頬を赤らめる。
「す、すぐに皆さんを呼んできますね! それから食事もお持ちします! レイヴァンはここで待っていて下さい!」
彼女はそれを誤魔化すように慌てて部屋を出て行った。
彼女は落ち着いていて、しっかりとした印象だったのだが……
眠っている間に何かあったのだろうか?
突然部屋を飛び出した彼女に唖然としていると入れ違うように扉を叩く音が聞こえた。
レイヴァンが部屋の中へ促すと現れたのは修道院院長のウィルだった。
「気分はどうですか?」
「どうと言われてもな。 目が覚めてから慌ただしかったしな……」
無意識に怪我した箇所を触れると傷は一切見あたらなかった。
自分の全身を意識しても違和感は何一つない。
「強いて言うなら、寝過ぎで身体が鈍っているようだ」
レイヴァンの返事にウィルは微笑んだ。
「怪我は全て癒えたようで何よりです。 見つけた時はそれはもうひどい怪我で、どうなることかと」
彼女が何気なく口にした言葉にレイヴァンの鼓動が高鳴った。
意識を失ってからどうなったのだ?
悪魔はどうした?
他のハンターが倒したのか?
溢れ出してきた疑問を矢継ぎ早に問うと、彼女は冷静に受け止めてから一つずつ咀嚼するように答えてくれた。
「我々が見つけたとき、あなたは意識を失って倒れていました。 何度呼んでも目を覚まさないので一時はどうなることかと思いましたが、しっかりと鼓動が聞こえましたので、こうして街の宿に運び治療にあたったのです。 獅子の悪魔はハンターの一人が封印し勝ち鬨を上げたのを聞きましたが、ゼノ司祭に化けていた悪魔を倒した、もしくは封じたという話は誰からも聞いておりません。 お告げに出てきたマリアンはもとより、ずっと戦っていたあなたがこうして無事に生きているということは、おそらく悪魔は目的を果たせぬまま何処かへ去って行ってしまったのでしょう。 禍々しい力は消え修道院は穏やかさを取り戻しています」




