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レイヴァンは血の付いた口を袖で拭うと悪魔に鋭い視線を送る。
今の攻撃を受けて異様な点に気がついた。
それが相手の癖ならば攻略の糸口になるかもしれない。
早速それを立証すべく自ら取った間合いを詰め剣を振るう。
勢いよく刃同士がぶつかり合うと体に激痛が走った。
体勢を崩すと相手はすかさず重い拳を振りかざしてくる。
それを跳躍して後方に回避すると剣を構え直した。
身構えいると今度は悪魔が先手を取り間合いを詰めて来る。
レイヴァンは痛みに堪えながら剣を受け止め、前蹴りを入れて相手を押し返した。
それから相手がふらついた僅かな隙を使って握っていた剣を手放し、空いた手の平を前方に突き出して光の矢を繰り出した。
悪魔は矢を全身で受け止めると間髪を容れずに繰り出した一太刀を予想していたかのように受け止める。
「なかなか、しぶとい人間よ」
「しぶといのが人間なんだ」
「それに、その剣をよく使いこなしている」
「悪魔に誉められるとはな」
レイヴァンは悪魔の言葉をあしらうと距離をとり短い息を吐いた。
やはり考えたとおりだった。
この悪魔は攻撃だけでなく防御の時も片手で剣を扱う。
最初は腕力に自信があるのか、すばやく攻撃を繰り出すために片手を空けていたのかと考えていたが違うようだ。
しかも距離を取った時に優勢なら必ず間合いを詰め、劣性なら口を開いて間を作る。
他愛もない話だと思ったが間違いなく気を逸らすためだ。
どうやら狙う先が見えてきたな。
一呼吸するとレイヴァンは自分の右手を意識した。




