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「それなら力尽くで吐かせるまでだ」
「力尽く? それは面白い、やってみせろ」
レイヴァンは剣を構え様子を伺ったが相手には一切隙がなかった。
片手で黒い剣を握ったまま、ほぼ直立している状態。
それだけで、この威圧感は尋常ではない。
「どうした? こないなら、こちらから行くぞ?」
余裕の笑みすら浮かべている。
「人間をなめるなよ」
レイヴァンは相手を鋭く睨むと、剣を握りしめ駆けだした。
間合いを詰め袈裟斬ると悪魔はその一撃を易々と受け止める。
「その程度か?」
相手が力を込めると剣が押し戻された。
わずかな隙ができると悪魔は片手で人間の頭ほどの火の玉を作り出しレイヴァンの腹部で炸裂させる。
爆風に煽られ大きく吹き飛ばされるレイヴァンを目の当たりにして女性陣からは悲鳴が上がった。
「人間とは実に脆い生物よ」
悪魔は鼻で笑うと視線をレイヴァンからマリアンへと移す。
「次は封印の楔である貴様だ」
黒い剣をすっとマリアンに向けて突きつけた。
ゆっくりと近づいてくる悪魔。
逃げなければ。
そう考えることはできても身体は震えるだけ。
足が動かない。
声もあげられない。
マリアンは心の中で女神の名を呼び続けた。




