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レイヴァンが勢い良く扉を開けると大聖堂の中にもアガシオンに取り憑かれた人間たちが数人不気味な唸り声をあげていた。
しかし、外にいた人間たちのように見境無く暴れてはおらず全員が聖堂の奥に向かって構えている。
じりじりと間合いを取っていて攻めあぐねているようだ。
レイヴァンはミカエリスの像の前で息を荒らげながら取り憑かれた人間たちに鋭い視線を送っているウィルを見つけた。
彼女からは今にも消え失せそうな清らかな霊力が感じられる。
とても悪魔が発するような魔力ではない。
その霊力が淡い光の壁を作り出し相手の攻撃を防いでいた。
どうやら思っていた事態とは違うようだ。
心の中で舌打ちをすると、すばやく取り憑かれた人間たちに詰め寄って腹部を強打していく。
打撃は的確に急所を捕え一撃で相手の意識を奪った。
その後をリルがついてまわり、手際よくアガシオンを精霊石に封じ込めた。
レイヴァンはウィルを囲んでいた人間たち全員の意識を奪うと剣を鞘へと収め彼女の下へと歩み寄った。
「あんたが俺たちが追っている悪魔。 ……というわけではないようだな」
「レイヴァンさん、今までどちらに?」
「さてね。 どうしようが俺の勝手なはずだ。 ここにきたのはようやく悪魔が現れたと思ったからだ。 あいにく予想は外れたがな」
レイヴァンは彼女に手を差し伸べると身体を起こし避難を促した。
「見捨てると多くの修道士たちに恨まれそうだからな。 まずはあんたを修道院の外まで連れ出す。 良いな?」
「お願いします。 ところでマリアンが教えを守り隣町まで行ったかどうか、ご存じですか?」




