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レイヴァンたちが街の大通りに辿り着くと、恐れていた通り炎は修道院を飲み込み始めていた。
火の手の無い所で馬を下りると二人は逃げ惑う人間を掻き分けて修道院を目指す。
「ご主人様! あんなところに綱いでおいたら借りた馬を誰かに盗られちゃうかもです!」
「今は気にしている場合ではない!」
リルの言葉を振り払い修道院に辿り着くと一気に門を潜り抜ける。
すると、そこに待ち受けていたのは想像を絶する光景だった。
修道士、修道女、修道騎士にハンター、更には街人たちが入り乱れて壮絶な戦闘を繰り広げているのだ。
辺り一面には既におびただしい数の人間が倒れている。
リルはその惨劇に思わず顔を背けた。
やはり、ただの火事ではないのか!?
レイヴァンが辺りを見渡していると、一人の修道士が奇声を上げ剣を振りかざしてこちらに向かってきた。
その表情に二人は目を疑った。
瞳孔が大きく開き、焦点の合っていない眼。
獣の牙のように犬歯が鋭く伸び、口からは涎が流れ出している。
とても人間とは思えない顔だった。
こいつは、まさか!
レイヴァンはすばやく剣を抜くと相手の剣を払い退け、一蹴して相手を吹き飛ばした。
そして今度は自ら間合いを詰めながら上着のポケットから小さな精霊石を取り出すと、倒れた修道士に向けて石をかざす。
「精霊石よ!」
彼が短く言葉を紡ぐと、倒れた修道士の口から黒い影が飛び出して精霊石に吸い込まれた。




