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『俺には無理。』 ― 最後の砦 ―  作者: Alma.


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PROLOGUE ―「無理」という言葉。

「お前には無理や。」


君たちがその言葉を初めて聞いたのは、いつだっただろうか?


小学校だったか?


中学校だったか?


それとも、もっと前だったのか。


もう覚えていない。


でも、不思議なことに。


その言葉だけは、何度聞いても忘れなかった。


ずっと頭から離れずこびりついていた。


人は簡単に言う。


誰かは「現実を見ろ。」


誰かは「夢なんか見ても仕方ない。」


誰かは「お前じゃ無理。」


誰かは「才能がない。」


誰かは「身の丈を知れ。」


誰かは「お前はそんなこと言って恥ずかしくないのか?」


その言葉を口にする人間は、決まって悪人じゃない。


親だった。


先生だった。


友達だった。


上司だった。


顔も知らない人だった。


心配して言ってくれた人もいた。


笑って言った人もいた。


本気で見下して言った人もいた。


理由なんてどうでもよかった。


残ったのは一つだけ。


「無理。」


その二文字だった。



人は、その言葉を聞き続けると変わる。


夢を見ることをやめる。


期待することをやめる。


挑戦することをやめる。


失敗しない、当たり前を当たり前にこなす、

実に普通で、無難で、トラブルも無い安定した人生という道を選ぶ。


そして、自分でも気が付けば、

ふと考えれば無意識に言うようになる。


「俺には無理。」


そうして人生は終わっていく。


何も始まらないまま。



当の本人である俺も、そうなるはずだった。


誰よりも弱かった。

嫌なことがあれば直ぐに逃げ出してきた。


誰よりも何も持っていなかった。

仕事をしてないニートだった。

車も持っていない。

バイクも持っていない。

当然家も借家。

空っぽだったから失うものが何一つ無かった。


胸を張れるものなんて、一つもなかった。

夢も希望もない。頭も良くない。仕事もしてない。


笑われる理由なら、いくらでもあった。

ニートだから。無職だから。低学歴だから。

貧乏だから。恋人もいないから。


誇れるものは、一つもなかった。



だから、ある日。


俺はとあるデカイ嘘をついた。


誰にでもない。


自分自身に。


鏡を見て。


惨めな自分を笑いながら。


泣きそうな気持ちを抑えて震えながら。


しょうもない自分に怒りながら


情けなくて仕方ない顔を見ながら。


痩せこけて頬骨が浮いてる自分の顔を見ながら。



俺は言った。


「俺は無敵や。」


当然、誰も信じなかった。


もちろん俺も微塵も信じていなかった。


ただ。


その言葉だけが。


折れそうな心を、ほんの少しだけ支えた。



この物語は、


生まれながらの天才の話じゃない。


特別な力を持った英雄の話でもない。


誰かに選ばれた救世主の話でもない。


これは、何も持っていなかった一人の人間が、


何度も笑われ、


何度も否定され、


何度も自分を嫌いになりながら、


それでも歩き続けた物語。



そしていつか。


世界はこう呼ぶ。


「伝説」と。


だが、本人は最後まで首を振る。


「伝説なんかじゃない。」


「証明しただけや。」


「『無理』って言葉が、一番無価値やってことを。」

episode1.


「俺には無理。」に続く。

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