episode Final.─そして、君の物語へ……
俺は、特別な人間になりたかった。
誰にも届かない場所へ。
誰にも真似できない景色へ。
自分がどこまで行けるのか、その答えを知りたかった。
何度も挑み、何度も間違え、何度も自分自身を疑った。
それでも、歩くことだけはやめなかった。
強くなりたかったから。
自分の可能性を、誰かの言葉で終わらせたくなかったから。
そして何より、自分が生きたことを、自分自身で証明したかったから。
けれど、今なら分かる。
人間の価値は、どこまで登り詰めたかだけで決まるものじゃない。
どれだけ大きな夢を叶えたかでも、どれだけ多くの人間に認められたかでもない。
誰かの痛みに気づけたこと。
自分より弱いと思った相手にも、名前があり、人生があると忘れなかったこと。
失敗しても、恥をかいても、自分の信じたものと向き合い続けたこと。
その一つひとつにも、人間として生きた意味がある。
俺は、誰かより上に立つためだけに生まれたんじゃない。
俺は、俺の人生を生きるために生まれた。
そして、それはきっと、君も同じだ。
誰かに笑われた夢があるかもしれない。
一度は諦めた未来があるかもしれない。
自分には何もないと、思い込んでしまった夜もあるかもしれない。
それでも。
まだ終わっていないのなら、終わりだと決めつけるには早すぎる。
今の君に、俺と同じことをしろとは言わない。
俺のように生きる必要もない。
俺と同じ夢を見る必要もない。
俺を超える必要だってない。
ただ一つ。
自分の人生まで、他人に決めさせないでほしい。
何を成し遂げるのか。
何を守るのか。
どんな人間でありたいのか。
その答えは、誰かに与えてもらうものじゃない。
君が選び、君が悩み、君が歩いた先に、少しずつ形になっていくものだから。
いつか君が、自分の歩いてきた道を振り返る日が来たとき。
胸を張って言える人生であってほしい。
成功したからじゃない。
失敗しなかったからでもない。
自分の人生から、最後まで逃げなかったと。
そして、もし君の歩く道の途中で、立ち止まっている誰かに出会ったなら。
その人の名前を呼んでやってほしい。
肩書きでも、役割でも、過去の失敗でもなく。
一人の人間として。
手を差し伸べられるなら、差し伸べてほしい。
言葉を届けられるなら、届けてほしい。
君の何気ない一言が、誰かの人生を変えることだってある。
君の歩く姿が、誰かにとっての道標になることだってある。
そうして受け取ったものが、また別の誰かへと渡っていく。
俺が残したかったものも、きっと、そういうものだったのだと思う。
俺の名前が、いつまでも残る必要はない。
俺の言葉が、俺のいない場所で誰かの背中を押してくれたなら。
俺の生き方を見た誰かが、自分の可能性を信じてくれたなら。
そして、その誰かがまた、別の誰かに希望を渡してくれたなら。
俺が歩いた道は、そこで終わらない。
俺が生きた時間は、俺一人の人生の中だけに閉じ込められない。
それこそが、俺の望んだ未来なのかもしれない。
だから俺は、これからも歩いていく。
どこまで行けるかなんて、まだ分からない。
何を成し遂げられるかだって、分からない。
それでも、確かめたい。
自分の可能性を。
まだ見ぬ景色を。
そして、この人生で出会えるはずの、まだ知らない誰かを。
俺は、俺の人生を生きる。
君は、君の人生を生きてくれ。
いつか、君が誰かの道標になる日が来るかもしれない。
そのとき君は、きっと気づくだろう。
生きた証とは、ただ自分の名前を残すことではなかったのだと。
自分が生きたことで、誰かの未来に何かが残ること。
そして、その未来が、また次の未来へと続いていくこと。
物語は、いつか終わる。
どんな英雄にも、どんな強者にも、そのときは訪れる。
けれど、物語が終わることと、すべてが失われることは同じじゃない。
受け取ったものを、誰かへ渡せばいい。
自分の足で、また一歩進めばいい。
だから、これは終わりじゃない。
俺の物語は、ここで一度幕を閉じる。
だが、ここからまた新たに俺の物語は進み始める。
さあ、次は君の番だ。
君は、どんな人生を生きる?
無理と言われ諦める人生か?
全力で足掻いて波乱万丈な人生か?
落ち着いた人生か?
それは俺が決めることではない。
君が決めることだ。
俺と共に始めよう。
俺は見ているから。
~END~




