お手紙
拝啓
もう名前を呼ぶこともなくなったあなたへ
あの日々を思い返すたびに
胸の奥でまだ少しだけ
痛む場所があることを
正直に伝えておきます
あなたを責めたいわけじゃない
忘れられないと嘆きたいわけでもない
ただ
あの頃の自分が抱えていた言葉を
ようやく封筒に入れられる気がしただけです
笑い合った日も
すれ違った夜も
どれも嘘じゃなかった
それだけは今でも信じています
だからこそ
手放すのに時間がかかったのだと思います
あなたがいなくなった部屋で
ひとりで立ち尽くしたあの時
世界が急に静かになって
自分の呼吸だけがやけに大きく聞こえた
あの孤独を
今ではもう責めていません
別れてもう一年が経ちます
自分を見つめ直す始まりだったと
ようやく言えるようになりました
あなたと過ごした時間が
無駄だったなんて思わない
むしろ
あの時間があったから
今の自分がいるのだと思います
ありがとう
と言うにはまだ少しだけ
胸がざわつくけれど
さよなら
と言うにはもう
心残りは溶けた気もします
だから
この手紙にはどちらも書きません
ただ
あなたの未来が穏やかであるようにと
遠くから願うだけにします
追伸
私はちゃんと前に進んでいます
あなたがいなくても
ちゃんと笑えるようになりました
それを伝えられるくらいには
もう大丈夫です
敬具




