李白
ウィリーは転移呪文を唱え、シンデレラ一行はベリンダの家の前に戻った。
「メガンテ!」
突然、フェルディナンドが自爆呪文を唱えた。
一同自爆に巻き込まれかけたが、ベリンダがそれよりも早く防壁の呪文を唱え、皆事なきを得た。
ねずみのフェルディナンドは爆発で倒れてしまったが。
「あー全く。教会で復活させなきゃいけないじゃないか。ウィリー、シンデレラ、フェルディナンドを近くの村の教会に行って復活させて、元の姿に戻ったら縄で縛って連れて来な」
「多分こいつ縄引きちぎりますよ」
「あー仕方ないねえ。わかった。私も行くよ。そこの二人は私の家で茶でも飲んでてくれ」
「はい」
「フェルディナンドの奴……無茶をする……」
シンデレラ一行は、アブドゥルとクレスタンを残しベリンダを混じえ、森を抜け近くの村の教会に訪れた。
シンデレラがエプロンのポケットから傷だらけでぐったりしているフェルディナンドを取り出し、手の平に乗せ、神父の前に差し出す。
神父は聖書の文を唱え、フェルディナンドは緑色の王族服を着た元の姿に戻り復活した。
素早くベリンダが呪文を唱え、フェルディナンドをねずみの姿に変えた。
「どうしたのフェルディナンド」
シンデレラがフェルディナンドの様子を伺う。
「自爆したくなった。俺はどこへ向かえばいいんだ……」
「アメリカを返せよ」
「ウィリー、カンパネルラ王国って言いなさいよ」
「全く。大人しい奴に限ってやることが派手なんだよなあー」
「よし。戻ったね。皆帰るよ」
「メガ……」
「あーもうやめろって」
ウィリーがフェルディナンドの口を抑える。
「取り敢えず私の家に戻ろうか」
ベリンダの言葉に皆頷いた。
教会を出て、森に入り、ベリンダの家に入る。
ベリンダの家ではアブドゥルとセレスタンが椅子に座り、お茶を飲んでいた。
「あ、お帰りなさい」
「邪魔しているぞ」
「ああ、私達にもお茶を煎れとくれよアブドゥル。皆一旦お茶にしよう」
ベリンダがそう言い、皆椅子に座った。
足りない椅子はベリンダが魔法で出した。
ねずみのフェルディナンドはちょこんとシンデレラの肩に座っている。
「俺はどこへ向かえばいい……」
「いやだから乗っ取った国を返せよ国を」
「了解した。感情のままに行動する」
フェルディナンドはそう言うとガブリとウィリーの指をかじった。
「いってええええ!何すんだよ、フェルディナンドお前ええええええ」
フェルディナンドはシンデレラの胸元にすっぽりと入った。
「あれま」
「ここなら手が出せまい!」
「おーい……」
「そのねずみ本当に日本の王子なのか?」
「そうらしいよセレスタン」
お茶をすすりながら、アブドゥルとセレスタンは話した。
「アメリカを絶賛乗っ取り中だぜ……」
「まあまあ皆。私が焼いたクッキーを食べておくれよ」
ベリンダはそう言い、クッキーを乗せた皿をテーブルの上にどんと乗せた。
皆でクッキーを食べながらお茶を飲む。
「メガ……」
またフェルディナンドが自爆呪文を唱えようとしたので、ウィリーは慌ててフェルディナンドの口を抑えた。
「あーもうお前はシンデレラの胸の谷間におさまっとけよ」
ウィリーの言葉に、フェルディナンドは大人しくシンデレラの胸の谷間に収まった。
「ああ、そこなら自爆呪文も唱えられんだろ」
クレスタンの言葉にアブドゥルが苦笑いを浮かべる。
「大人しくしてますね。フェルディナンド」
フェルディナンドはシンデレラの胸の谷間でクッキーをかじっていた。
「で、次はどこへ行けばいいのベリンダ」
シンデレラが聞くとベリンダが「ああ」と答えた。
「次はそうだね。塩だね。華国にいい塩があるんだよ。それを採って来て貰おうかね」
「中国だな」とフェルディナンドが言った。
「まあ、今日のところは休んで……いやそうだね。ここのところ旅ばかりで皆疲れたろう。今日明日は休んで、それから出掛けといで」
「あー全く」
ウィリーは溜息を吐いた。
「もう休もう!今日明日は休もう!」
クレスタンがベリンダに聞く。
「俺はサーカスの仕事があるんだが、暫く休んで付き合ってやってもいい。姉さんに連絡したいんだが」
「ああ。どこの誰とでも話せる魔法の電話があるよ。それを使いな」
その日一日は皆ベリンダの家で過ごし、ベリンダが作った夕食を食べて寝て、やがて翌朝になった。
休日だ。
アブドゥルは女装していた。
朝食を食べると、シンデレラはフェルディナンドを肩に乗せて傍に流れる小川の川べりに行った。
アブドゥルはクレスタンと仲良く話していて、ベリンダは洗濯をし、ウィリーは寝転がってテレビを見ていた。
川べりで、シンデレラは肩に乗っかるフェルディナンドと話す。
「フェルディナンド。あなたは何故カンパネルラ王国を乗っ取りに来たの?」
「任務だからだ。俺はただ任務を遂行するだけだ」
「そう……良くわからないけれど……。お義母様やお義姉様や、五十の州伯を解放してくれないかしら」
「任務だからそれは出来ない」
「そんな……」
シンデレラは愕然とする。
「私は義母様と義姉様を、この国を救い出したいわ」
「では、やってみるんだな」
その日一日、ウィリーはベリンダの家でお菓子を食べながらゴロゴロテレビを見ていた。
翌日、シンデレラ一行は華国に行くことになった。
「いいかい。高級な塩を買ってきておくれよ」
「わかったわベリンダ」「高級な塩ねえ……」
「皆ー俺に掴まれー転移呪文使うぞー!」
ウィリーの言葉に一同、ウィリーの服につかまった。
「いってらっしゃい」
ウィリーが転移呪文を唱える。
ベリンダの家から、人混みの多い街中に出た。
「中国だ」
「中国だな」
アブドゥルとセレスタンが口を揃える。
「高級な塩を探すぞ」
「あっ、待ってください」
アブドゥルが口を挟む。
「ここにも僕友達がいるので会いたいんですが」
「またか」
フェルディナンドが冷たく言う。
「小林寺拳法の道場に友達が……」
「仕方ねえな。ここでいいのか?北京でいいのか?」
「はい」
アブドゥルの歩く後を一同はついて行く。
小林寺拳法の道場に入ると、突然人が吹っ飛ばされてきた。
「げふうっ!」
黒髪を後ろに縛ったチャイナ服の少年が現れた。
「弱い!貴様の正義はそんなものか!」
「李白!」
「ん?貴様誰だ」
「僕だよ!アブドゥルだよ!友達のアブドゥル!忘れたの?」
「ああ……」
「こいつ絶対俺のこと好きアルよ。うぜー」
李白はふうと溜息を吐いた。
「また弱い者と戦ってしまった……叱ってくれ師匠……」
「いや叱って師匠って師匠いないだろ」
ウィリーが突っ込むと、李白はウィリーの腹に思い切りパンチを入れた。
「ぐふあっ!」
ウィリーは痛みに床の上を転げ回る。
「弱い者が正義を語るなあああああ!」
「俺正義なんか語ってねえよ!」
「ふん。ざまあないな」
「今のはウィリーが悪いわ」
「良くわからないがお前が悪いな」
「僕もウィリーが悪いと思います」
皆冷たい。
「何で俺ばっかりこんな目に合わなきゃならねーんだあああああ」
フェルディナンドが李白に言う。
「おい。中国はドラゴンボールやキングダムもあるだろうが」
「ん?ああ、そうだな」
「こちら華国の王子、李白です」
アブドゥルが李白を紹介する。
「ふん」
「ここらへんで高級な塩ってないかしら」
「高級な塩?崑崙山に伝説の塩があるって話を聞いたことがあるアルな」
「取りに行くのか」
「その方がいいんじゃないかな」
「メガンテ!」
突然フェルディナンドが自爆呪文を唱え、慌てて皆伏せた。
ドカーンと爆発し、フェルディナンドは黒焦げになった。
「何だこいつ」
瞬時に爆発を避けた李白が聞く。
「すぐ自爆したくなるんだこいつ。なあ近くに教会ないか?」
「ああ、教会ならあるが……」
「フェルディナンド……何で……」
シンデレラが黒焦げになったフェルディナンドを拾う。
「何か自爆したくなったんじゃないかな」
「仕方ないな……」
シンデレラ一行は李白を交えて北京にある教会に行き、フェルディナンドを復活させて貰った。
緑の王族服を着たフェルディナンドがむくりと起き上がった。
「どうしたのフェルディナンド」
「俺の……俺のミスだあああああ!」
「何もミスしてねえよお前」
「ふと自爆したくなった」
「はた迷惑な奴だな」
李白が眉をひそめる。
「どうしたフェルディナンド」
「本当だよ。ふとした瞬間に自爆するね君」
「俺をねずみの姿に戻せ。そして俺をシンデレラの胸元に乗せろ」
「何言ってんだよお前……」
「フ……フェルデナンドってこんな人だったっけ」
「フェルディナンドお前キャラ崩壊してるぞ」
「……馬鹿馬鹿しい。女の胸に乗せとけばいいんだろ。そいつは」
「じゃあ遠慮なく」とウィリーは杖を振り、フェルディナンドをねずみの姿に変え、シンデレラの胸元に乗せた。
「フェルディナンド……あなた本当にこれでいいの?」
「俺は感情のままに行動する……それだけだ」
「感情のままに一々自爆されてちゃたまんねえよ。もうお前永久にシンデレラのおっぱいに挟まれてろよ」
「ふっ……ここは居心地がいい」
「プライドを捨てたなフェルディナンド」
「こんなフェルディナンドは見たくなかった僕……」
「日本はこれでいいのか……?」
「おっぱいがそいつの正義なんだろう」
一同は教会を出ると、ウィリーの移動呪文で崑崙山に向かった。
李白も一緒だ。
皆で魔物を薙ぎ倒しながら塩を手に入れ、さっさとベリンダの家に戻った。