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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
2章 勇者なんて虚名です、神竜より強いわけ無いじゃないですか!
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034話 黒幕、ブロス伯爵との対面

「団長さん……モイーズさんは……」

「確認した、子供は見ない方が良い」

「あの人……死んじゃったのね……」


 レティの提案で砦に行く事にした俺達だったが、ミュリエルとレティを逃してくれた恩人であるモイーズをそのままにしてはおけなかった。

 縛り上げて放置してある連中から場所を聞き出し、団長達に確認してもらったんだが……。


「遺体は持ち帰れそうかな? 娘の恩人なんだ、町の墓所できちんと弔いたい」

「傭兵のマナーとしちゃ戦死した地に葬るんだが……問題はない。聖女様に葬儀を執り行ってもらえるなんて、あいつも出世したもんだ」


 ちょっと言葉を濁したくなる聖女様だけどね。

 あまり好意的に見てなかった相手だけど、恩を着せられてすぐに死なれると返しようがないじゃないか。

 団長に聞いたら、家族とかもいないって言われたしなあ。


「モイーズは契約に則って報酬を受け取り、自分で参加すると決めた任務中に死んだ。それだけだ、大将。傭兵の生死にいちいち気を取られてちゃ、これから先も気落ちするばかりだぞ?」

「そんなに死なせるつもりは無いけど……せっかくの長期契約なんだ、心を痛める程度には仲良くなるのも悪くないだろ?」

「それもそうだな、まずは臨時ボーナスなんてどうだ? お手軽に仲良くなれる」

「友情は金で買えないってのが父親の教えなんだ、未来の友人に失礼な真似はできないな」


 俺の言葉に肩をすくめる団長だが、今回は多数の相手と敵対する無理な仕事を雇い主として命令した。

 臨時ボーナスというより、危険手当として正当な支払いは考えるべきだな。

 ……傭兵の仕事って、基本危険手当が含まれてる気がしないでもないけどさ。


**********


「さて、申し開きを聞こうか?」

「平民風情が王族の威光を笠に、好き放題してくれるものだ」


 砦に着いた俺達は、名乗りを上げて堂々と中に入った。

 内部に戦力はそれほど残っていない事に加え、こちらにレティとミュリエルがいる以上弱味は無い。

 おまけに王宮へは、子細を連絡済みだと言ってやったのだ。


 これで門を閉ざして籠城したら、それこそ非を認めるような物。

 ブロス伯爵とやらは砦の跳ね橋を降ろし、俺達を迎え入れるしかなかった。


「そっちがしてくれた事に比べれば大した事はないだろ? 娘と王女を拉致しようとした戦力は、全て力尽くで叩きのめした。まだやりたい悪事は残ってるか? オススメはしないけどな」

「……勇者などど煽てられて図に乗りおって」


 応接室のソファに身を沈めて余裕を見せつつも、悔しそうな表情が隠しきれていない。

 さすがにこっちの数倍の戦力を持ち出しておいて、一方的に全滅させられるのは予想外だったらしい。

 

 対面のソファには俺とミュリエルとレティが座り、背後では傭兵達が威圧している。

 伯爵の背後にも護衛はいるが、主力が全滅したと聞いては完全に及び腰だ。


 ちなみに俺達のソファで中央に座っているのは、立場上レティだったりする。

 ミュリエルは着替えさせたかったが、別行動させる訳にもいかないのでベルト代わりのロープで服やスカートを縛った姿のままで、レティの左側に。

 なんだかレティを守るのは自分だというやる気に満ちていて、俺よりも騎士に向いていそうな態度だ。


「素直に謝れば許してやらなくも無いって言ってるのに、強情よね」


 言い出した本人である上に真ん中に座ってる以上、自分が交渉を進めるべきだと思っているんだろう、レティが時々口を開くが……。

 こういう場は初めてなんだろう、ちょっと声が震えてるぞ。

 左手は不安を払拭するためか、ミュリエルと強く繋いでるようだし。


 だが、レティの言葉に伯爵は嫌らしい笑みを浮かべ、臆面もなく台詞を吐く。


「外は危険だと申し上げたはずですよレティシア様。私の述べた通りに不埒者共に襲われたのでしょう? ご無事で何よりでした。」

「は? あんたの部下でしょ、あの連中!」

「何をおっしゃいますか! その様な事など、あろうはずもないですな!」


 この期に及んでこの態度。

 王様にこの件を報告すれば国が混乱するという、こちらにとっても頭の痛い事を利用してシラを切り通す気か?

 いや、それ以外にも何か――。


「当家は私の代より王族の方とも懇意にしております。王宮に連絡をなされたとの事、であれば――来たか、通せ」

「来たって……え、もう?」


 今わざわざこんな砦に来る人間なんて、そうはいない。

 俺達が呼びつけた味方だろう。


「失礼、フェリシア王女殿下付きの騎士サビーナ・オスマン参りました」

「待っていたぞオスマン殿、急に呼びつけられるなどご苦労な事だな」


 待っていた?

 サビーナ様は護衛の騎士と言いつつ、フェリシア様の近くであれこれと用を仰せつかっている事実上の側近だ。

 そしてフェリシア様はレティの安全を最優先だと言い、拉致された事に激昂していた。

 それを、まるで向こうの味方の様な物言いで……。


 俺の疑問は、続くサビーナ様の言葉で解消された。

 

「ブロス伯爵は、この一件とは無関係であるとフェリシア様はお考えだ。セヴラン王子とも懇意になさっておられる伯爵が、その様な事をなされるはずがない」

「はあ⁉ 何言ってんのよサビーナ!」

「ハッハッハッハッ! さすがにフェリシア様は聡明であらせられる! レティシア様も見習われるのが宜しいのではないですかな?」


 レティは開いた口が塞がらない様子だが――なるほど。

 この一件に関わっているかどうかは知らないが、王子が後ろ盾についてるのか。


 セヴランっていうと、評判の悪い第二王子の方だな。

 年長だし、性格はともかくフェリシア様よりも貴族社会に力を及ぼせて不思議はない。

 丸ごと握りつぶすのも可能なんだろうな、伯爵の態度からすれば。


「そういう事だ、評判の勇者殿。平民であれば勘違いで事を荒立てる事もあろう、今回の件は不問に付す。寛大な私と王子に感謝するがいい」


 ソファから立ち上がり、俺を見下ろすのは立場の逆転を意識しての事か。

 その上で寛大さをアピールしているつもりか、両手まで広げてみせる。


「ユーマくん……ブロス伯爵はセヴラン王子に多額の貸付を行っておられる資産家で大切にされている。これ以上は為にならないとフェリシア様からの言伝だ」

「本当にフェリシア様はよく分かっておられる。平民、頭を下げよそれでこの件は終わりだ」

「……わかりました」


 頷いて、立ち上がる。

 

 そして伯爵の前へ足を進め、踏み込み、腰から肩へとひねりを加えて真っ直ぐに拳を突き出す。

 それは伯爵とかいうクズの顔に真正面から突き刺さり、鼻をへし折ってふっ飛ばした。


 なんか色々言われたが、俺から返す言葉は他に無いだろう。


「知ったことか‼」


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俺とポンコツ幼馴染と冒険とパンツ
― 新着の感想 ―
[一言] 面の皮が厚くないと貴族なんてやってられないですよね… 予知は未来の覗き見ではなく演算による予測のようなものですか?
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