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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
2章 勇者なんて虚名です、神竜より強いわけ無いじゃないですか!
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プロローグ

 野盗軍の襲撃を受けてからしばらく経った。

 痛手を受けた村だが、土地の復興に目処が立っていた事に加えて、襲撃の規模が大きかった事が逆に幸いする形になっている。

 

 まず物資の支援があり、資金援助の話や融資も来た。

 全くの無償ではないが、王家が具体的な支援を公表しているのが大きい。

 この規模の事態に国が何もしない訳にはいかない、という事だ。

 

 物資や資金があっても労働力が減っていては……という懸念もあった。

 だがそれも解決済みだ。


 損害を受けたとはいえ、発展中だった村が国から公式に支援を受けると発表されたのだ。

 今の村は移住先や投資先を探している人間にとって、非常に目立つ存在なのだ。


 もちろん良い事ばかりでもない。

 少し前から急激に移民が増えた理由、それは山脈外側の国が1つ滅んだからという物だった。


 俺の実家がある、バキラ王国の北部にあったシータ公国がそれだ。

 バキラ王家が本国の防衛の為に興した公国だったが、獣人族との決戦に破れて公都が陥落、その役目を果たせずに歴史からその名を消したらしい。

 

 その結果生まれた難民は、安全な山脈の内側へ流れ始めた訳だが――。

 ここに来て「圧倒的多数の野盗軍を逆に壊滅させた村がある」という噂が流れ出した。

 さらにはその村に勇者がいる――と。


 かつての帝国時代、異種族を蹴散らした異能を持つ転移者である勇者。

 その威名は強い力、指導者を求める移民に対してこれ以上無いほど魅力的……らしいが。

 そんな虚名を押し付けられる側の身にもなってほしい。



「ユーマ様! 追加の資材が届いたそうです!」

「様は勘弁してくれって言ってるだろ、せめてさん付けか支店長で頼む」

「で、ですが……あちらで」



 指で示された方向へ視線を移すと、直立するワンコがそこにいた。

 茶色と白の毛並みを持ったその喋るワンコは、周りで働く人間にキビキビと指示を出している。



「それは多分あっちに持っていくッス! 新しく来た物はとにかく全部ここへ……何ッスか? 僕はごすじんの一番古い奴隷ッスよ? 勇者のユーマ様に逆らったらへぶしっ⁉」

「工房の新人で遊ぶんじゃない! あと奴隷とかユーマ様は止めろタロ!」



 手に持ってた羊皮紙の束を丸め、コボルトの後頭部に振り下ろす。

 現場を混乱させる事に定評のあるタロだが、悪意がある訳ではない。

 指示を出したら人が動くのが楽しいから遊んでいるだけだ。


 新人は引っかかって右往左往するが、少しでも慣れた人間なら干し肉を一切れ渡すとしばらく静かになるのを知っている。

 それもなければ散歩に行こうと誘えば喜んでついてくる。

 新人が走り回らされているのを見て、慣れた人間が笑うのももう日常だ。


 でも今は村の防衛強化の大事な作業中。

 俺が支店長を務める魔道具工房に限っても、新人作業員が増えているので混乱されると困る。

  

 あんまり走り回って、無駄に水を消費されるのも問題だしな。

 貯水池は無事だったとはいえ、人口の急増にともなって必要な水の量も当然ながら増えている。

 無駄遣い出来る状況じゃないのだ。



「……ここに来るまで外側で暮らしてましたけど、山脈ひとつへだてると内側とはやっぱり違いますね」

「そんなに違ってるか?」

「えぇ、外側じゃもう人間の街でコボルトは見ませんよ」



 叩いた詫びにタロ用に取っておいた干し肉を渡してやりながら、初めて会った頃に言っていた事を思い出す。

 獣の頭を持った獣人と戦争しているから、直立した犬の外見をしたコボルトは恨みをぶつけられると。


 シータ公国の滅亡でそれが加速してるのかも知れないな。



「あとはそうですね……神竜のありがたみですかね?」

「神竜か? たしかにこっちじゃ扱いが軽いかもしれないな」



 神竜とはその名の通りドラゴンだ。

 俺の生まれたバキラ王国と、今住んでるミノー王国をへだてる山脈のどこかに巣を持っているらしい。

 帝国時代以前から生きている古強者だが、「神竜」なんて呼ばれているのはそれなりに理由がある。


 100年かそこら前に異種族との大決戦中、突如現れた神竜が人間に味方した――というのがその理由だ。

 その結果異種族の軍は、神竜によって炎のブレスで焼き払われ人間が大勝利。

 以来神の遣わした竜である、いずれ劣勢になった時はまた現れて人間を助けてくれるのだ……そう勝手な願いを込めて呼ばれだした、と母さんが言っていた。


 父さんと母さんが協議した結果、偶然通りがかったら流れ矢が飛んできてブチ切れたんじゃないか?

 という結論にウチではなっていたんだが。


 ともかくその神竜、知名度こそ高いが実際に異種族の脅威にさらされている外側と内側では、当然扱いも異なるだろう。

 俺が来る前は内側の空を飛んでいるのを度々目撃されたらしいが、最近は見かけられていない、なんて話を聞く程度だ。

 これが外側なら「いつもと違う動き、これは助けに来てくれる前兆だ!」とかいう噂になりかねないしな。



「まあアテになるか分からない神竜よりは、目の前のゴーレムだ」

「そうですね、こちらは完成さえすれば確実に戦ってくれますし」



 増えた人手に加えて、ミュリエルの成長で使える魔力も増加した。

 ゴーレム工房は以前にも増して、急ピッチでゴーレムを増産しているのだ。

 

 製造しているゴーレムの質にも変化があり、以前は粘土製のクレイゴーレムがメインだったが、今は石材を用いたストーンゴーレムも一定数量産している。

 そして――。



「でも、さすがにこっちはまだ趣味の段階を出ないなあ……」



 台地の外れに作った作業場。

 そこに並べられた長さ10mほどの石の柱を見る。

 2対4本のそれらは、本体に接続してしまうとスペース的に邪魔なのだ。

 

 それに必要な魔力も目処が立っていない。

 今のところは、いつだったかジローや顧問に見せた星型城郭の図面と同じ。

 これが出来たら良いなあ……という、俺の趣味の品なのである。


ブクマ、評価、感想、誤字訂正等いつもありがとうございます!


ちょっと改行を増やしてみました

2章も出来る限り毎日の投稿で頑張ります!

今後は基本的に昼12時更新で行こうと思ってます


それと、休んでる間に短編も書いてみました

幼馴染な冒険者コンビが頑張る話です

https://ncode.syosetu.com/n9301go/

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▼こちらもよろしくお願いします(短編)▼
俺とポンコツ幼馴染と冒険とパンツ
― 新着の感想 ―
[一言] 待ってました!そういえばなんですがコボルトの猫版とかいます?
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