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最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
1章 拾った娘と美人の為に生きたいだけなのに、アレもコレも俺の手柄にしないで!
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054話 決着!

 台地へ登るための坂道、その入り口には未だ大勢の野盗がいた。

 その坂道の最上部あたりに、能力で繋がったミュリエルの気配がある。

 そして視線を向ければ村の人間でない者たちや、アトラスの姿も。

 空を飛べるミアに先行してもらったが、俺も急いで駆けつけないといけないってのに野盗共が邪魔過ぎる!


 一瞬野盗共を馬で蹴散らして進む事も考えたが、手荒な真似をすれば事故の可能性も否定できない。

 馬の首を返して人のいない場所まで台地の下を駆ける。

 荒業だしミュリエルに負担をかけるが緊急事態だ。

 苦手な集中を行い、ミュリエルとの繋がりを意識しながら魔法を準備する。

 ミュリエルの意思に心で触れる、その魔力を委ねられる感覚を得て、土の精霊に極大の魔力を持って命じる!

 自主訓練で土を移動し、堀と土塁を作っているのはちょうどこの辺りの場所だ。

 問題ない、いつも通りに……!

 魔法が発動した瞬間、俺の意思に従って地面が抉れて大きな堀となり、余った大量の土砂を使って台地に新しい坂道を作る。

 出来た……! 効果時間の1分を過ぎれば崩れるかもしれないが、馬で駆けるなら十分だ!


「お父様……!」

「さ~本命登場だ! やっちゃえユーマ!」


 ジグザグの坂道をショートカットした俺の前に、ミュリエルを捕らえた細身の男と両手剣を持った大柄な男がいる。

 その向こう側にはタロと倒れたアトラス、ミアは俺の肩まで降りてくるが少し疲れている様に見える。

 ジローの元にと伝えたが、この状況を見て何かの魔法で介入したんだろう。


「状況から見てお前が頭目だな? 村を襲った目的はなんだ」


 捕まっているミュリエルを見れば、聞くまでもない事ではあるが。


「お嬢さんを貰いにきただけだ、お義父様への挨拶は遅れたがな」

「その呼び方は止めてもらおうか」


 軽口を交わしながら馬から降りる。

 足場が坂道な上に捕まっているミュリエルがいると、馬上で戦うのは上手くないだろう。


「降りる時に斬りかかってくると思ったんだが、随分余裕だな?」

「子供の前でそんな事しねぇよ、娘にひでぇもん見せる前に諦める気はないか?」


 長剣を鞘から抜く俺に「まあそうだろうな」と笑う頭目。


「妙な手でスルーされちまったが、足止めやらで坂の下に降ろした部下がこっちにくるまで5分もかからん、俺にやられなくてもどうにかなるとは思えんぞ?」

「うん、あいつ強いよユーマ。アトラスもやられちゃった」


 ミアの言葉にアトラスを見ると、片足にのみ損傷が集中してる様子だ。

 そして目の前の男は傷を負った様子もない。

 今もタロが折れた槍を握ってミュリエルを救う機会を伺ってるのを、視線だけで牽制してるようだし、強敵だな。

 ――だが。


「5分もかけないよミア、せいぜい15秒だ」

「言うねぇ」


 楽しそうに笑う男に向かい合ったまま、腰の革鞄の留め金を外す。

 自主訓練についてきたのは一度や二度じゃない、返事は無いがミアになら伝わるはずだ。

 肩に止まっていたミアが定位置に収まったのを確認して、長剣を構える。

 俺に先手を打たせるつもりらしい男の前で、左右にステップを踏むこと5秒。


 一直線に頭目に向かって踏み込み、その広い胸めがけて突き込む!

 俺の感覚では訓練通りの突進そして突きだが、頭目の表情がゆっくりと驚愕に変わっていく。


「なんだその速さは⁉」


 驚きながらも、俺の初撃を大剣でギリギリ受け流している。

 強いな、アトラスが負ける訳だ。

 肉体を操作する系統の魔法に、体の敏捷性を上げる魔法がある。

 だが師匠いわく、それは元の2割程度が効力の限界らしい。

 今、ミアの切り札で加速された俺の全ての動きは普段の2倍に達する。

 大技らしく魔法を得意とするミアでも集中に5秒、効果時間は10秒ほどだ。

 はっきり言って人間が対処できる速度じゃ無いと思うくらいだが、目の前の大柄な男は俺の攻撃を受け流し、反撃すら試みてくる。

 恐ろしい強さ、だが俺とミアの2人分ほどじゃない。


「チッ……俺が……負けるか」

「鎧さえあれば凌ぎきってたかもな」


 大剣の攻撃を避けてからの、後の防御を捨てた4連撃は最後の刺突が頭目の胸を貫く。

 分厚い胸を形作る太い筋肉を切断していく嫌な感触に続いて、剣との隙間から血が真っ赤な血が溢れ出した。

 緊張と共に魔法が切れ、一気に加速の代償である疲労が襲ってくる。

 この魔法は使い手と魔法をかけられた側の双方の消耗も激しいが、革鞄には万一の手段と交渉材料に魔石を入れてあったので、ミアはそれを使用している。

 鞄から顔を出したミアの様子なら、倒れる様な心配は無いだろう。

 地に膝をつく頭目の胸から剣を引き抜き、ミュリエルに向き直る。


「お父様……すごい!」

「バカな……ウルソン……」


 ミュリエルと捕らえている男が歓声と悲鳴をあげ、体を支える気力を失った様に男がミュリエルから手を離す。

 疲労にふらつく足に、ミュリエルの体当たりじみた抱擁は厳しいが、ここで倒れるような真似が出来る訳がない。

 無事取り返した愛娘を抱きしめ返……。


「ミュリエル⁉ なんだか大きくなってないか⁉」

「あ~そうだね、どう見ても急に育ってるねぇ」


 鞄から出てきたミアがパタパタと浮かんで、ミュリエルの周囲から観察する。

 事情を知ってそうなのはこっちに歩いてくるタロだが……。


「村を守るのに魔力を集めたらこうなったらしいッス」

「だって必要だったの! 私も戦わないとみんな――!」

「そうだな……嬢ちゃんが戦わない姫様なら……上手く言ってたんだが」


 ミュリエルに気を取られている間に、背後から声がかけられる。

 細身の男の方はもう意識も無い様子だが、もう1人は違ったようだ。


「剣では負けたが、仕事は仕事だ……最後までやらんとな」

「そんな状態で何か出来るつもりか?」

「ふっ……まあ聞け、こんな話を知っているか?」


 まだ諦めてないらしい、こいつにはこいつの事情があるのかもしれない。

 それでも、だ。

 大剣を地について体を支えている頭目に近づき、話を続けようとしたその顔に拳を叩きつける。

 手甲に包まれた一撃を受け、今度こそ倒れた頭目に向けて俺から伝えるべき言葉はひとつだ。


「知ったことか‼」


 こうして村の攻防戦は全て決着が付いた。

ブクマ、評価、感想、誤字訂正等いつもありがとうございます!

明日の投稿も昼12時過ぎ予定です

後始末したら1章完結です~!

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俺とポンコツ幼馴染と冒険とパンツ
― 新着の感想 ―
[一言] 見え見えの時間稼ぎに付き合わない系だ!
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