表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の娘と虚名を得た俺は、乱世から逃れられないので終わらせる!  作者: 楼手印
1章 拾った娘と美人の為に生きたいだけなのに、アレもコレも俺の手柄にしないで!
39/206

038話 防衛施設

 村の中でゴーレムが石材を運んでいる。

 ゴーレムの中では体力のないクレイゴーレムだが、100kg近い重量を黙々と運び続ける姿は頼もしい限りだ。

 資源を採掘したり利用するには権利が必要なわけだが、当然この石材についてもそれは同じである。

 元々マダーニの所有だった採石場だが、街の移転の際に距離が遠すぎるという理由で放棄された。

 移転前の街の跡地にある村の活動範囲なので目をつけるのは当然の流れなんだが、さて権利をどうするかという問題が持ち上がった。

 元の持ち主は権利を放棄している、だが見捨てられた村が国に「権利をくれ」と言ってすんなり通るか? という――。

 だが実のところあっさりと通ってしまったのだ。

 貯水池を作り、農業も改善が見込めそうだという報告を王都へ行った時に一緒に申請してみたんだが、捨てられた物は好きにしろとばかりの返事だった。

 顧問的には「……また横槍ですか」と気になる事もあるみたいだったが、村にとって好都合なら何だって良い。

 

 この石材は村にとって重要な資源である。

 言ってみれば輸出品であり、これで外貨を稼いでいるのだ。

 山脈に囲まれたミノー王国では石材の産出が豊富ではあるが、うちの村の競争力は強い。

 採掘は人間も結構な数が働いているが、キツい場所はゴーレムを使えるというのが大きい。

 そしてなにより、運搬に費用がかからないからだ。


 運ぶのはゴーレムである。

 ゴーレムの集団を襲うバカもそうそういないし、警護もゴーレム本人達だ。

 人件費がゼロ……近い! おまけに休憩も無しで発注から配達までが早い!

 まあ念の為に担当である村の人間が1人付いているが、それだけだ。

 他より安く売れるので、街の市場や商会に卸す事で安定的に収入を得る事が出来ている。

 これに関して一連の運用を計画したのも農業顧問だ。

 得た予算を農地に投入するから無関係じゃないしな、何も問題ない。


「そこで頼りになる顧問に相談しに来たわけだ」

「どういうわけですか、それに今日は工房にいると聞きましたよ」

「スタッフが育ってるんで、はっきり言って昼の工房に俺の仕事は少ない」

「ユーマ……君の唯一の肩書は工房支店長だろう……?」


 そんな事言われてもな。

 それに肩書を言うなら、それに関係ない仕事をやたらと増やすのを止めてもらいたい。


 ゴーレムの製作にあたって必要な行程は3つ。

 1,素材を加工してゴーレムのボディを成型する、この村なら粘土だ。

 2,成型された粘土に土系統の魔法をかけて固定する。

 3,完成したボディに魔法を用いて精霊を封じる。

 この三点である。


 他の工房であれば三点目の行程でさらに、複数の助手を使って長期間の儀式を行い、必要になる大量の魔力を蓄えるという作業も加わる。

 だがクレイゴーレムくらいなら、ミュリエルの体内に蓄積された魔力だけで製造出来てしまうのだ。

 二点目も使うのは基礎的な魔法なので、俺1人でも大した時間はかからない。

 なので製作に必要な期間はボディの成型が99%と言っても良い。

 さすがに形を作るだけ、という作業ではないがこの行程に魔法の素質は必要ない。

 うちの工房ではこの部分を数人のスタッフに任せており、一週間に3~4体というハイペースでゴーレムが完成しているのである。

 職人技を身に着けつつあるスタッフに混じって作業しようとしても「支店長は外でアトラスでも磨いててください」とか言われてしまうのがオチだ。

 壊れた石材を俺の魔法で修復し、それを素材にストーンゴーレムへとアップグレードされたアトラスを磨くのは嫌いじゃないが、そんなに頻繁に必要でもない。


「こないだ防壁が完成しただろ? それと俺の魔法訓練で土を生み出したり移動させたりするんで、ついでにこういうのはどうかと思って」

「設計図?」

「これは要塞……ですか」


 俺の使う土の精霊を操る系統魔法、訓練にはその基礎的な魔法を使っている。

 だが日課でドサドサと土の山を作り、ウニョニョと形を変えたり移動させたりが無駄に感じられて仕方ない。

 どうせなら訓練しつつ、同時に何かの作業に出来ないかと考えたのが今回の相談だ。

 ジローとテオドールに見せた羊皮紙にあるのは、俺の描いた星型の図面。


「星型の防壁? これをこの村で作るのか?」

「そうそう、あと無駄に積むだけになってる土を台地の下で土塁に出来ないかと思って」


 土の変化、移動に使う魔法なら穴を掘って空堀にしつつ、その土をさらに土塁に盛ったりもできるしな。

 2人は図面をを見ながら思案していたが俺が説明を加えようとしたと同時に、農業顧問が口を開いた。


「この突端は――」

「なるほど、この星型の先端に塔や楼閣を築き相互に支援するわけですか。」


 父さんが好きだった星型城郭をあっさり理解された⁉。

 まあいいや、話が早いし。


「そうそう、さすがに俺の魔法だけじゃ無理なんで必要な予算なんだけ――」

「それで敵味方の武器は何を想定しているのです? 相互に支援するのであればその射程は? 航空戦力は用いる勢力が少ないのでまあいいでしょう。しかし、そもそも防衛に優れたこの台地上の村でさらにこの形状……?」

「しゃ、射程……? 武器はたぶん弓とかクロスボウとか……だろ?」


 設計図描いた人、そこまで考えてなかったよ……。

 でも台地の上でさらに高い位置からなら相互支援には十分だろ⁉ たぶん!


「そちらの意義には私も疑問符をつけたいが……しかしハッタリは有効では?  物々しい物や機能的に見える要塞は戦意を削ぐ。こっちの土塁はどうだろう?」

「そっちは俺とゴーレムだけで予算かからず作れるし、敵の進入路を制限できないかなって……」


 楽しんで描いた星型城郭が、ハッタリにしか使えないとかダメ出しを受けて自信無くなってきたぞ。

 まあ今まで無駄に作ってた土の山で、何か出来ないかってのが本命だったんだけどさ。


「ふむ……正門への登り口から遠い位置に土塁の切れ目を作り、そこに照準を固定した投石機やバリスタを設置という形なら費用対効果は悪くなさそうですね」

「油壺や藁束を投げ込んで一時的に分断というの手も良いかもしれない」

「そうだろ……? 俺とアトラスでチマチマ作るんで許可をください……」

 

 こんな辺鄙な村を攻める物好きなんている訳ないし、無駄コストって点は俺も気になってたけどね!

 大きい物を作るのは好きなんだ、明日からの日課自主訓練は土塁と堀作りだな。

 ……でも星型城郭そんなにダメか?


ブクマ、評価、感想、誤字訂正等いつもありがとうございます!

明日、月曜日は夜8時過ぎに投稿します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
▼こちらもよろしくお願いします(短編)▼
俺とポンコツ幼馴染と冒険とパンツ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ