第六十話 新たな旅に出よう ~ヴァナヘイムの層の件~
『ヴァナヘイムの層』へ出ると見渡す限りの白い世界だった。
大理石のような真っ白な床は地平線まで続き、
空は白い天井が明るく輝いている。
雲一つない空は、ここが塔の中であることを感じさせる。
これまでの世界は、ごく普通に自然や空や海が存在していたが、この世界はただ白く無機質な空間が広がっている。
これまでの事を考えながら進んで行く。
どこまで行っても白い地平線が見えるだけだ。
俺はうぬぼれていた。
RP2200万という数値。
上には上が居ると考えて必死に生きるべきだった。
この世界は、元居た世界とは違う。
日々の努力不足、慢心は死に直結する。
ブライスとザムウェルが知性の無い魔物だったら全員が食われて終わりだったろう。
俺の慢心は遅かれ早かれ危険を招いていたのだ。
「あれは……」
地平線の先にぼんやりと山なのか、建物なのか、何かあるのが見えた。
とにかくあそこに向かって歩こう。
ただ1人で歩いていると次から次へと後悔の念が浮かんできた。
「フレイヤ……」
「アイラ……」
「ノル……」
「カール……」
「みんな、どこに行ってしまったんだ」
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目の前に広がるのは城壁。
そして、城壁の先には城が見える。
ただし、全てが透き通るような白い物質で構成されている。
神々が住むと言われる『ヴァナヘイムの層』。
ここに神々が居ると言うのだろうか?
門に近づくと何かの電子音が鳴った。
ゆっくりと門が開いた。
ギルドに道具屋、武器屋とエルフの街とうり二つだ。
建物や石畳の道路から街なかのありとあらゆる物が眩しいほどの白で統一されている。
エルフの街は、この神々の街を参考にして作られたのだろうか?
城壁の中の街には様々な人種の人々が行き交っている。
ワニやトラのような顔を持った亜人。
ケンタウロスも居る。
みんな何かしらの神なのだろうか?
俺があたりを見ていると声をかけられた。
「アルス様ですね。
『ヴァナヘイムの層』の神がお待ちです」
俺よりもまっ黒な大きなカラスがしゃべっていた。
「私の名前はフギン。
我が王の使いです」
何をどうすればいいのかもわからない状況。
ついて行ってみよう。
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案内された城へ進み玉座の間へと入った。
王座には老人が座っていた。
片目に海賊みたいな眼帯をした青いローブのじいさん。
脇に青い帽子を置いている。
会ったことがある。
「よくぞ、ここまでいらした。
アルス君。ホッホッホ」
神々の王。
オーディンだ。
「なんで、こんな所に?」
「ホッホッホ。ワシは神々の王じゃよ。
第一層『ミズガルズの層』からここまでワシの統治する世界なのじゃよ」
「お主、まったく歯がたたなかったようじゃの」
「な、なんでそれを?」
「ホッホッホ。ワシは神々の王じゃよ」
オーディンはニコニコと笑いながら言った。
オーディンも俺より遥かに強いのではないだろうか?
RPを探るとオーディンは言った。
「ホッホッホ。
ワシの現在のRPは0じゃよ。
ちいと本気を出してやろう」
オーディンの目が一瞬光ったと思ったら一気にRPがあがっていくのが感じられた。
100万。
500万。
1000万。
2000万。
2200万。
これ以上は俺にはわからない。
俺を越える力を持っているのだろう。
「ホッホッホ。
わかったかね?
ワシが修行をつけてやるよ」
なぜ神々の王であるオーディンが俺に修行をつけてくれるのか? わからない。
だが、今はそんな事はどうでもいい。
とにかく強くなりたい。
「お願いします!」
俺は力を込めて返事をした。
「よい返事じゃ。
ホッホッホ」
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オーディンに案内された扉を抜けると白い世界が広がっていた。
イズン師匠の訓練を受けた場所と似ている。
いや、むしろそのものだ。
俺はオーディンにブライスとザムウェルとの経緯を話した。
そして、どこかへと飛ばされたフレイヤ、アイラ、ノル、カールの事について尋ねた。
オーディンによると全員無事なのは確かとのことだ。
しかし、その場所は不明。
そして、その場所は今まで旅して来た世界ではなく少なくともこの『ヴァナヘイムの層』よりも先の世界らしいのだ。
第七層 ムスッペルスヘイムの層
第八層 ニヴルヘイムの層
第九層 ヘルヘイムの層
第七層以降はオーディンでさえも立ち入ったことの無い世界であり『第九層 ヘルヘイムの層』に至っては前人未到の世界らしいのだ。
今、俺が出来ること、やるべきことは、力をつけること。
そして、十分な力をつけることが出来たらみんなを探しに行くのだ。




