▼旅の途中で色んな物がバグっていました。【Lv6】
「うわぁ…でっか……?!」
「まあボスは基本あんな感じだよね~、じゃ、頑張って☆」
どうやらミワさん達は基本『放っとけ教育方針』らしい。
ただ、背中から伝わる温もりは、無理に言葉を掛けられるよりずっと頼もしい。
ガチャッと【天の刃】を構える。
『__カケル君は、冷静に分析すれば勝率が確実に上がるタイプだからそこをうまく
使いこなしてみて。それと、武器を使う時に一点に集中できるのはとても良い事なんだ
けど、集団で攻めてきた時は視野を広くしないと、隙をついてやられちゃう可能性があるから、気をつけてね。』
ミワさんがアドバイスしてくれた言葉(実際にはエコさんが作った台本なんだけど)
を噛み締めながら、隠れていた岩から顔を覗かせる。
周りにゴーストがいて見えづらいが、間違いなく“大きな目玉”だ。
[▼【ビッグ・センサーアイ】 Lv10]
ゆっくりと浮遊しているが、ギョロギョロと動く目は実に威嚇的だった。
背後から攻めた方が良さそうな感じだ。
____まだだ、まだ情報が足りない。
武器を【お下がりの弓】に変え、少し横にある岩壁に向かって解き放つ。
カンッ!と音が響いた瞬間、ギロッ!と目玉が矢を睨んだ。
瞬間、
ビ___________________ッ!
光線が飛び出し、矢が丸焦げになった姿がそこに映された。
マジか、あいつビーム出すんだ。怖っ。
武器を【天の刃】に変えながら心の中でニンマリと微笑む。
ビームを出す“合図”が分かったのだ。
障害物を睨んで、一秒後。
かなりギリギリではあるけれど、一秒以内にちょっとでもそこを離れれば良いだけ。
イチかバチかの勝負だ。
ボスが背中をこちらに見せる。
見ろ!…あ、いや、見るなよ。鍛え上げたこの疾走スキルを!
【天の刃】を目の下に生えている触手に叩き付ける。
瞬時に視線がこちらを向くが既にプレイヤーの位置はビームの狙いと大幅に違っていた。
更に連続で叩き込む。移動。ビーム。
敵のHPは確実に、大幅に下がっていった。まあ勿論武器のお陰なんだろうけど。
でもこのままやっていけば、あと2,3回で…!
ポワッ☆
「へっ?!」
なんとセンサーアイが回復スキルを持っていたのだ。
HPがほぼ元通りになるのが見える。う、裏切られた…!
「おーい、カケル~っ!そいつバグってて回復スキル持参してっから!」
「あっちょっと私のセリフですよソレ!」
ルフさんとエコさんのギャーギャーとわめく声が聞こえたが、そもそも言うのが遅い。
最初にそれ言えよ!と叫びたくなるのをグッとこらえて剣を構えた。
回復スキルは厄介だ。ほぼ一発で倒した方が賢明だろう。
ビ____________ッ!
「いっ…?!」
腕を見ると焦げていた。しまった、避けるのを忘れていた…!
恐らく、もう一度くらったらゲームオーバーだ。
立派な武器を持ったって、所詮【Lv5】の初心者なのだ。
でも初心者は、初心者なんだけど…ッ!!
沸々とわき上がる力に、もう無視する事も出来なくなっていた。
「使えたらカッコいいな」って意味のない練習を重ねていた“必殺技”。
【天の刃】をそっと振り上げて、頭に浮かぶ文字を力の限り叫んだ。
「【ウィンドクラッシュ】!!!
喰らえぇぇぇぇぇぇぇええぇぇッッッ!!!!!!!」
ブォォォォォォォンッ!!
刃から放たれた風が、ボスに向かって音の蹴りを食らわせる。
竜巻は周りのゴーストもろとも引き裂いて、天上高く舞い上がっていった。
……台風が去った後にあるのは、【ビッグ・センサーアイ】から採れる宝石、【悪魔の瞳】だけ。
「かっ…勝った?」
力が入らなくなりその場に座り込むと、ようやく現実感が脳に伝わった。
倒したのだ。あのモンスターを。
____ふいに、一匹のネズミが目の前を駆けていった。
ちなみにミワちゃん達は透明バリアか何かで安全ですb
まあ見えていたって攻撃も効かないんですけどね。くそう。




