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15 舞踏会前日!

 舞踏会を明日に控えて私はマリア姫の準備で忙しく動いていた。

 魔法騎士の詰め所には忙しくて通うことができずアウリス様の姿を数日見ていない。

 会いたいなと思うが、アウリス様のお屋敷に行ったことで私はいい気になっているような気がする。

 犬を亡くした悲しい気持ちを味わうのが嫌だったのかそれとも慰めてくれたのか定かではないが私にだけ優しくしてくれたと勘違いをしそうになる。

 あの時の温かい気持ちを何度も思い出して鼻歌混じりに仕事をしていたら気づけば夕方になっていた。


 本日の仕事はもう終わりだ。

 明日の舞踏会の準備で朝から忙しくなる予定なので今日は早めに切り上げる。

 夕日を眺めながら寮へと向かう。

 城から外へ出て裏庭を通り抜けたところが女子寮だ。

 魔法騎士の詰め所とは全く反対側だが、なぜかアウリス様が城の壁沿いに立っていた。

 夕陽に照らされているアウリス様は恐ろしいほど美しい。

 顔が整いすぎていて無表情ということもあるからだろう。


「アウリス様。こんな所でどうしたんですか?」

 

 久しぶりのアウリス様に会えたことが嬉しくて思わず駆け寄る。

 アウリス様は駆け寄ってきた私を少しだけ驚いて見つめると微かに、本当に微かに唇の端を上げた。


「お前を待っていた」


「私ですか?」


 私を待ってくれていたという言葉だけでなぜか胸が高鳴ってしまう。

 ドキドキしながらアウリス様を見上げると彼の青い瞳と目があった。

 アウリス様が自分の胸を抑えているのを見てハッとする。

 私の感情が伝わっていることをすっかり忘れていた。


 平静にならないと、アウリス様にドキドキしていることが伝わってしまう。

 慌てて彼から目を逸らして何度か深呼吸をする。


「ミユール。お前に渡したいものがあるんだが……」


「私にですか?」


 アウリス様に言われて反射的に美しい顔を見てしまい、また胸がドキドキしてしまう。

 これはヤバいと目を逸らすとまたアウリス様の口の端が微かに上がった。


「その前に、明日俺と舞踏会に出ることになっているが。……お前は承諾しているのか?」


 どこか緊張感を持った言い方に疑問を感じつつ私は頷いた。


「もちろんですよ。警備の都合で魔法騎士様と一緒にって聞きましたよ」


「……お前は俺でいいんだな?」


 確認するように聞かれ私は頷く。


「私で申し訳ないですが、私はアウリス様で嬉しいですよ」


 勇気を振り絞ってドキドキしながら正直に言う。

 恐る恐るアウリス様を見上げると満足そうにうっすらと微笑んでいた。

 伯爵夫人のように晴れやかな笑みではないが、それでも無表情なアウリス様の微笑に私の心臓がドキドキと高鳴る。


 これは間違いなくアウリス様に私の気持ちが伝わっている。

 逃げてしまいたくなる私にアウリス様は満足したように頷くと、懐から小さな箱を取り出した。


「なんですか?」


「母上からだ。どこから嗅ぎつけたのか知らないが、ぜひお前につけて欲しいと言っていた」


 アウリス様と同じ顔をした美しい伯爵夫人を思い出しながら箱を受け取る。

 片手でなんとか持てるぐらいの大きさの箱の蓋をゆっくりと開いた。


 箱の中身を見て私は驚きのあまり落としそうになる。


「ヒィ、なんですかこれ」


 箱の中に入っているのは大きな宝石がついたネックレスだった。

 夕陽に輝いてギラギラと輝いている宝石は今まで見たこともないほど大きい。


「……これをつけて欲しいと母上が言っていた」

「いや困りますこんな大きいの今渡されても。誰かに盗まれたりしたら大変ですよ」


 一晩だけでも私の元にあると思うとゾッとする。

 それに私がつける理由もない。

 アウリス様に箱を突っ返した。


「……なるほど、当日なら問題ないな」


「はぁ?いやいや、私、そこまでしてもらう理由がありません。そんなに大きな宝石つけてたらアウリス様と変な噂流れますよ?」


 半ばパニックになりながら言うがアウリス様は平然としている。

 元から無表情な人なので今は特に何を考えているかさっぱりわからない。


「……今更だろう」


 アウリス様はボソリというと突然私の顎に手をかけてぐいっと無理やり固定される。

 青いアウリス様の瞳に至近距離で見つめられる。


「ヒィ、なんですか?」


 驚きよりも、キスされるんじゃないかと思うぐらいの距離にアウリス様の美しい顔に胸がドキドキしてしまい狼狽えてしまう。

 アリウス様はじっと私を見つめて満足したのか手を離した。

 一体なんだったろうか。

 高鳴る胸を抑えているとアウリス様は突き返された宝石箱を懐に再びしまった。


「この宝石をつけて欲しいと母上たっての願いだから明日はつけてもらう」


「な、なぜそんなにこだわるんですか?」


 アウリス様はしばらく言葉を選んでから口を開く。


「母上と、俺の気が済むから……だろうな」


「……はぁ?」


 意味がわからない私を置いてアウリス様は去っていってしまった。

 女子寮の前にポツンと残されて私は首を傾げる。


「一体何だったのかしら?」


 あんな宝石を見せつけられて、つけて欲しいと言われてホイホイつけれるわけがない。

 考えても答えが出ないので仕方なく自室へと戻ることにする。

 明日は舞踏会だ、ミスがあってはいけないので考えないようにしよう。

 

 

 

 

 


 

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