悪役令嬢の兄
アルシャードは、薫子の向かいに座った。
「さてマリーどうしたのかな?」
薫子が座るとアルシャードは薫子へ聞いてきた。
「うふふ、お兄様率直にお聞かせください。わたくしはお兄様の社交内で評判はいかがでしょうか?」
アルシャードは驚いて、しばらく薫子を見つめた。
「マリーも社交に興味があるの?」
遠慮がちにアルシャードは聞いてきた。
「はいもちろんです、わたくし来年にデビュタントですよ?興味がない方がおかしいですよ。」
「そう・・・だね。ただマリーは社交をしてこなかったし、マリーが交流してきた家は少ないんだよ。だからマリーはゆっくり勉強すればいいさ。皆に敬遠されても気にすることはない。」
アルシャードは、妹を想うあまり余計なことまで口にしてしまう。
「うふふ・・・お兄様、わたくし敬遠されているのね。この際だからありのままに教えてください。わたくしは何をしたのかしら?」
薫子は、アルシャードへ有無を言わさず確認をした。
「マリーは覚えてないだろうが・・・マリーは色々な男性へ媚を売っていた。特にコール家のレックスには付き纏い、抱きつき、キスをして色仕掛けをした。ついには寝室に潜り込み既成事実を作ろうとして・・・レックスからは徹底的に拒否された。公爵家の長男に大変なことをして家同士の問題になりかけたが、レックスが今までの付き合いを大切にしてくれて大きな問題にはしなかったんだ。以降、マリーは主だった家同士の付き合いをしてきていない。この件が広まってマリーについてよくない噂もあるよ。これを払拭するのは大変だろうね。マリーは覚えてないのかな?今のマリーはそんなことしないといいけど。」
アルシャードが同意を求めるように薫子を見ると、薫子は顔を真っ赤にしていた。
アルシャードはこの様子を見て、今のマリーはハレンチなことはしないと思った。
「聞いてくれマリー。レックスはマリーのことをひどく警戒しているんだ。レックスにこれ以上迷惑はかけられないから僕ができることはあまりないんだよ。」
薫子は首をブンブンと首をふって頷いた。
「・・・お兄様、よくわかりました。」
薫子は、小さくなってアルシャードへお礼を言った。
すると部屋に待機しているアルシャードの侍女が慌てて来訪があることを告げてきた。
「おや、こんな時間に珍しい。誰が訪ねてきたの?」
「その・・・コール家の小公爵様です。」
「何だって?マリー!すぐに部屋を出るんだ!」
アルシャードは急いで薫子に告げると、薫子も青い顔をして立ち上がる。
薫子が立ち上がり退室の挨拶をしようとした時、
「入るぞ?」
と背の高い男性がアルシャードの部屋へ入るところだった。
(こんな小説みたいな偶然があるかしら、あぁここはゲームの世界だった。・・・レックス様にお会いするのが恥ずかしい。聖一さんともキスしたことないのに・・・橋本がいたら笑いを堪えているはずね・・・)
薫子は、無意識に自分の口を手で押さえると、レックスへ頭を下げた。