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その六
人形が空中で閃光を放つと、それは筋骨逞しい甲冑武者に変化した。
褌一丁の素肌の上に、漆黒の鎧。半月を描いた凛々しい兜を被り、顔は面頬で隠されているが、野太い眉と大きな目だけは確認する事が出来た。
「全てを滅せよ、太兵衛」
「承知」
流石の山犬も、新たな獲物の出現に牙を剥いた。
ほぼ食い尽くされた藤九郎の残骸を捨て、太兵衛に襲い掛かるも、ほぼ同時に犬の断末魔が六つ響いた。
殴り殺したのだ。
巨木のような太い剛腕が唸り、太兵衛の足元には頭蓋を潰された山犬が転がっている。
「うぬ。式鬼の分際で我の眷属を。許さぬ」
今度は血相を変えた犬童丸が飛び掛かった。
爪と拳が交錯し、互いの位置が入れ替わった。どうやら、互いの攻撃が空を切ったようだ。
二人の対峙は暫く続いたが、それを破ったのは太兵衛の一言だった。
「日本号」
そう呟くと、太兵衛の足元からまるで筍のように、長いものが伸び出た。
(槍だ)
しかも、ただの槍ではない。総黒漆塗の柄に二尺六寸ほどの穂を有した、大身槍だ。
太兵衛はその槍を抜きとると、頭上で回し犬童丸に突進した。
「小癪な」
犬童丸が慌てて迎え撃ったが、氣を呑まれた妖鬼に勝機は無かった。
日本号の槍先が右肩を貫くと、そのまま宙に放り投げ、犬童丸の首を一閃した。




