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第49話 セイレーンの島とゴブリンスタンピード

 教会からシーアとスーアが出て来た。


 『じゃぁ、セイレーンの島に行くぞ。』


 セイレーンの島は、渡船の航路から少し東に寄って、若干カレースパンに近い辺りにあった。

 広さは、直径5kmくらいの島で、中央には山があり、昔は煙が出ていたらしいから、火山の様だ。

 殆どのエリアは森になっていて、セイレーン達は海岸沿いの狭い地域に村を作って住んでいた。

 砂浜以外は、断崖絶壁になっていて、船が入れそうな横穴が所々に開いている。


 「アルティス様、ようこそお越しくださいました。何も無い村ですが、どうぞごゆっくりなさってください。」

 『あぁ、それほど長居はしないから、とりあえず島を確認させてくれ。』


 村のあちこちでは、バウンドパイクの干物がぶら下がっていて、食べた後の骨がゴミ捨て場に山積みになっていた。


 『腐敗臭が凄いな。何か活用しないと駄目だな。』

 「骨は、いつもこうして処分しているんですが、駄目なのですか?」

 『臭くないのか?』

 「臭いですが、仕方ないので。」


 仕方ないか。

 そうかもしれないが、そのまま放置するのは、良く無いな。

 見て回っていると、鶏が放し飼いになっていた。


 『鶏は飼っているのか?』

 「はい、特に天敵もいませんし、そこかしこに卵を産み落とすので、毎朝集めて食べています。」


 火山島だから、そこら中に花崗岩や大谷石、割と新しめの溶岩石がごろごろとあって、中々に面白い。

 気泡の多い熔岩石を薄い板状にして補強したら、おろし金っぽくならないか試してみたが、結構脆くてすぐ割れてしまう様だった。

 やっぱり、熔岩プレートとして売った方がいいかもしれない。


 『これを切り出して、このプレートで焼き肉やったら、きっと美味しい。』

 「穴がたくさん開いてますよ?」

 『洗うの大変なんだけどな。でも良い感じに火が通るんだよ。商品化は難しそうだけどな。』

 「試してみたいですね。」

 『こっちの脆い石は、竃に使うといいんだよ。断熱性と保温性がいいし、加工しやすいから使い勝手がいいんだよ。』


 軽石が押し固められた様な岩が、露出している場所があり、大谷石っぽかった。


 「少し持って帰りますか?」

 『持って行こう。燃料の消費量が抑えられるかもしれないから、検証して良さそうなら王城に入れよう。』


 崖下にある横穴に来てみた。


 「凄いですね。誰が掘ったんでしょうか?」


 リズは、この穴は誰かが掘ったと思っている様だ。


 『ここは溶岩が通った道だよ。火山が噴火して溶岩が流れると、上の方は空気に触れて冷やされるから、どんどん固まって、トンネルになるんだよ。中を流れる溶岩は冷えずにそのまま海に流れ落ちて、冷えて固まると、どんどん積み重なっていって、陸地になる。そうやってこの島ができたんだよ。』

 「へぇー、じゃぁ、この穴は火口の方まで続いているんですか?」

 『近い所まで行ってる可能性は高いけど、どうだろうな。氷穴担っている可能性もあるし、途中で崩れている事もあるからな。』

 「氷穴?」

 『溶岩が固まると、中にたくさんの気泡ができる。この気泡がそうだな。そうすると、保温性が高くなるんだよ。保温性が高いと、冷えたら冷えたままになって、地下水が凍ったりする事があるんだよ。』

 「へぇー、だから涼しいんですね?」

 『そうだな。この穴は涼しいな。別の所で熱い所があれば、温泉が湧いている可能性も出て来るな。』


 噴火していたのが、100年くらい前らしいから、どこかに温泉が湧いている可能性があると思う。

 

 「円形山脈の温泉みたいな感じですか?」

 『どうだろうな。あそこは地脈が近いからMAGに影響があったけど、ここは地脈が遠そうだし、違うタイプなんじゃないかな?』


 温泉が湧いているなら、この島を王家の避暑地にするのもいい手かもしれないな。

 まぁ、セイレーンが頷くか判らないが。


 近くの地表に大きな花崗岩の岩があったので、錬金術で石臼を作った。


 「どうするんですか?それ。」

 『魚の骨をこれで磨り潰して、粉にしてもらうんだよ。その粉は肥料の材料にできるからな。大量にあるのなら、加工してもらって使うのがいいだろう?鶏の餌にもなるんだぞ?』


 洞窟から村に戻って来た。


 『村長、魚の骨を磨り潰して、粉にしてから麻袋に詰めて売ってはどうだろうか?』

 「売れるのですか?」

 『売れると思うぞ?それと、干し魚を食った後の骨は、一旦焼いて煮ると、いい出汁が出て、美味しいスープが作れるんだぞ?そのまま捨てるなんて勿体ない。』

 「本当ですか?」

 『カレン、リズ、作ってやれ。小魚は、軽く洗ってから、煮て干すと、いい出汁が出るし、塩漬けにして、汁を採れば魚醤という調味料になるぞ。そこの海に沢山生えている海藻を乾かすと、昆布になるし、波打ち際の砂を掘れば、貝が獲れる。』

 「この島の貝には、毒があって食べられないのでございます。」

 『それは、毒をもつ時期に食ったからじゃないのか?』


 貝は、時期によって毒を持つ事があるので、そのタイミングで食べると、死ぬ事もある。

 原因は、毒を持つプランクトンを食べると、貝の中に蓄積して、毒性を持つ様になるが、毒を持つプランクトンが居なくなれば、徐々に毒が抜けていく。


 「この島は、猛毒の島といいまして、当初この島に入植しようとした人間が、何百人も死んだそうです。」

 『まぁ、火山だからな、仕方ないだろ。火山性ガスが噴出している所に入って行ったら、バカバカ死ぬだろ。腐敗臭が気にならないって言ってるのも、火山性ガスが今も噴出していて、風向きによっては、腐敗臭がするからだな?』

 「毒の理由を知っているのでございますか!?」

 『海の色が変色している辺りは、毒性が高いだろうな。だが、そこから離れれば問題無い筈だ。そうか、それでお前ら全員、毒耐性を持っているのか。』

 「毒耐性が無ければ、この島で暮らしていくのは、不可能でございます。」

 『あの山は火山だから、毒性のガスが出ているのは判る。だが、全てが毒にまみれている訳では無いぞ?』


 火山ガスには、硫化水素や二酸化炭素が多く含まれていて、どちらも濃度が高ければ、死に至る程の猛毒だ。


 「しかし、先日もそこの家の者が死にまして・・・」

 『それはありえないな。死んだ理由は、他殺だろう。』

 「た、他殺とは一体何ですか!?」

 『誰かに殺されたって事だよ。そこの家一軒だけガスで死ぬなんて、あり得ないんだよ。ガスってのはな、空気中では拡散するのが普通だから、死ぬほどの濃度があったのなら、この村全員に影響が出ていてもおかしくないんだよ。一軒だけ影響が出たのなら、それは家の中に撒かれたんだろうな。』

 「一体誰がそんな事を!?」

 『それは知らん。嫌われていたのか、逆恨みをされたのかは判らないが、誰が殺したのかは判るな。教えた方がいいか?』


 シーアを見ると、顔を横に振っていた。

 周りの者達も首を横に振っている。


 『知りたくない理由は?』

 「あの家の人は、みんなから嫌われていましたので。私も何度も殺してやりたいと思った事がありました。だから、殺されても仕方ないと思います。」

 『そんなにひどい奴だったのか?話題に出すくらいだから、村長はそう思っていない様だが。』

 「あんな奴は、死んでせいせいしたよ!」

 「アイツは、魚を生で食べる変人だったんだ!」

 『生魚なら俺も食うな。美味いんだぞ?』


 セイレーン達が、目を見開いてアルティスを見た。


 「以前食べましたけど、凄く美味しかったですよ。きちんと調理すれば、問題無く食べられると思います。」


 カレンも食べた時の事を話すと、隣で頷くリズと共に、驚きの顔で見られていた。


 「ほ、本当に生で食べるんですか!?」

 『魚にもよるけどな。バウンドパイクは厳しいが、サトウとクイタイは生で食ったな。寄生虫が怖いんだろ?魔法で寄生虫を殺せば問題無いだろう。で、殺された奴が嫌われた理由は、魚を生で食べるからというだけか?』

 「いえ、みんなが採った魚を捌いたり、調理しているのに、アイツは眺めているだけで、手伝いも何もしないし、魚の頭や内臓を海岸に捨てたりしてました。」

 『捨てた場所は、一カ所か?色んな所か?』

 「一か所だったと思います。」

 『案内しろ。』


 嫌われ者が魚のアラを捨てていた場所に行くと、そこにはたくさんの小魚が集まっていた。


 『ここか。ここには、色んな魚の稚魚が集まっている様だな。大型の魚が入って来れないから、安全地帯なんだろうな。』

 「ここに魚の内臓を捨てて、この稚魚に餌を与えていたと。」

 『違うんじゃないか?あのくらいの稚魚は、魚のアラなんか食わないから、別の何かに餌を与えていたんじゃないかな?ちょっと投げ入れてみるか。』


 以前爆散したオークの死体を落としてみると、岩陰からシーサーペントの子供が出てきて、肉を掻っ攫って行った。


 「シーサーペントの子供でしたね。こんな所にいるなんて、知りませんでした。」

 『一匹しかいないから、迷い込んだのかも知れないな。出て行けるのか?』

 「無理ですね。もっと小さい時なら出ていけましたが、あの太さでは、通り抜けができませんね。」

 『どうすんだこれ?』

 「狩るしかないと思います。」

 『頑張ってくれ。結局何がしたかったのか判らないが、下らない事で無視された事への仕返しのつもりだったのかもしれないな。』

 「でも、生魚を食べるなんて、した事が無かったので、信じられない思いでした。」

 『どうやって食べていたんだ?』

 「頭から丸かじりで、食べていました。」


 豪快な食べ方だな。

 本当にセイレーンだったのか、怪しく思えて来るな。


 『そいつはセイレーンだったのか?』

 「というと?」

 『似た様な別の種族とか魔獣とかじゃないのか?』

 「サハギンとかですか?」

 『サハギンって未だに見た事が無いんだけど?』

 「以前はこの島にも居たんですが、今はもう居ませんね。全員魔王軍に行ってしまいましたから。」

 『魔王軍の方にも居なかったよな?』

 「そうですね。沈めた船にも居ませんでした。」

 『どこかで消費されたのか、何かの依り代にされたのかってところだな。』


 サハギンはちょっと楽しみだったんだけど、残念ながら何処にも居なかった。

 居なかった理由は判らないが、戦力として使えないから、オークの餌に使われたのかもしれないな。


 「まぁ、サハギンは居なくなって正解という気がします。」

 『酷かったのか?』

 「凄い数居たんですよ。我々が20人しかいないのに、サハギンが2万居ましたから。」

 『多すぎ!何でそんなに居たんだ!?』

 「卵で増えるから。」


 サハギンは、青魚が母体?らしく、大量の卵を産んで、その内の1割が生まれるらしく、毎年100から1000ずつ増えていたそうだ。

 代わりにホイホイ死ぬので、人として扱ってはいなかったそうだ。

 長生きしても、3年程で居なくなるので、気にも留めていなかったらしい。

 ただ、数があまりにも多い為、サハギンの食料を獲るので、セイレーンは精一杯だったそうだ。

 まぁ、減り過ぎの様な気もするが、すぐ増えるんじゃそうなるか。


 村に戻ってみると、誰かがクイタイを獲ってきた様だ。


 「アルティス様、こちらのクイタイを食べて行きませんか?」

 『カレン、捌いてやれ。』

 「はい。刺身にしますか?」

 『少しだけ作って、セイレーン達にも分けてあげよう。』


 カレンが特製の包丁を抜き、パパッと3枚におろし、一部を切り取って刺身を作った。

 頭と骨は、捨てられそうだったのを回収して、表面を軽く炙ってから寸胴で煮る。

 頭は適度に切り刻んでから鍋にいれてある。

 昆布も以前採っておいた分があるので、それを入れた。


 『シーア、刺身を食ってみろよ。美味しいぞ?』


 カレンとリズが刺身を食べているのを見て、意を決して食べてみる事にした様だ。


 『この醤油を付けて食べてみてくれ。』

 「い、行きます・・・、美味しい・・・」


 シーアが食べ始めると、他のセイレーン達も興味を持って、近寄ってきた。


 『スープも食べてみてくれ。こっちも美味いぞ?』

 「何これ!?凄く美味しい!!え?え?これって頭と骨を使って・・・」

 『そうだぞ?今まで捨ててた物を使って、こんな美味いスープを作れたんだぞ?勿体ないだろ?』

 「勿体ないです!」

 『じゃぁ、目玉あげよう。』

 「何で!?」

 『目の周りのプルプルした部分は、コラーゲンと言って、肌をきれいにする効果があるんだよ。』


 カレンとリズが、勢いよく振り向いた。

 目がちょっと怖いが、目玉は直径50㎝くらいあるから、君らの分もあるよ。


 『一人で食いきれる量じゃないから、みんなで食えよ。』

 「残った骨はどうするんですか?」

 『出汁をとる時は、塩を入れずに煮て、骨を取り出してから味付をするんだよ。骨は乾かして石臼で細かくして、鶏にあげたり、麻袋に入れて貯めたりしておいてくれ。』

 「お安い御用よ。ね?村長?」

 「うむ。だが、バウンドパイクの骨でも良いのですか?こんな大きな魚は、滅多に獲りませんから、主食のバウンドパイクの骨ばかりになってしまう。」

 『あぁ、バウンドパイクの骨は、干物を食べた後の骨を使って出汁を取った方がいいぞ?生のを使うと、多分生臭いからな。それと、バウンドパイクの刺身は、食っちゃ駄目だぞ?アレは、新鮮なうちに捌かないと、不味くなるし、寄生虫も多いと思うぞ。』

 「おお、そうなのですか?刺身とやらがあまりにも美味しかったので、他でも試してみようかと、思ってました。」

 『危なかったな。パファーアウトの捌き方は知っているか?』

 「知っていますぞ?奴の肝は美味いのですが、ハズレだった場合は死ぬかもしれんのですよ。」


 何怖ぇ事言ってんだこいつ。

 パファーアウトの肝を、ロシアンルーレットの様な感覚で食ってるのかよ!?

 地球と同じように、蓄積系の毒だったら、養殖すれば毒は溜まらない筈なんだよな。


 『パファーアウトの刺身は美味いんだが、肝でキメるのはやめてくれ。養殖すれば、毒無しができるかも知れないぞ?』

 「何と!?養殖とは難易度が高い・・・」

 『貝を食べさせなければ良いのだと思うが、研究次第だろうな。』

 「むむむ、そうですな。我ら水の民、一丸となってこの海の研究を進めましょうぞ。」

 『この島の石材を使って、温度を一定に保てる部屋を作って、この刺身を食べた時に使った、醬油を作ると良い。農作物の豆が必要になるが、手に入れられるだろ?』

 「このタレは、豆から作られているのですか!?是非作り方を教えて欲しいですな!」

 『帰りに立ち寄るから、その時に作れる者を連れてこよう。それよりも、真珠は集めてあるのか?』

 「あぁ、そうでしたな。網の代金をお支払いする約束は、守らねばなりませぬからな。こちらに集めてあります。」


 案内された小屋には、大量の真珠が集められていた。

 大小様々な真珠の中には、海底で拾ったのであろう宝石も含まれていて、総額で白金貨20枚分ほどの価値になる様だ。


 『これ全部で、白金貨20枚分の価値があるぞ?網の代金分賄え(まかなえ)るのではないか?』

 「何をおっしゃいますか、アラクネ絹の網は白金貨2000枚程の価値があるのですぞ?これが20枚分だとすれば、あと100回は集めなければ、到底返済できるものではありません。」

 『そ、そうか。では、マジックバッグを渡しておくから、次はここに入れておいてくれ。あと、捕らえた大物の獲物があれば、マジックバッグの中に保存しておけば、腐らせる事無く刺身で食えるようになるから、便利だぞ?作り過ぎた干物も入れておいてくれれば、買い取らせてもらうよ。干物は美味いからな。但し、獲り過ぎは厳禁だぞ。魚が減っては元も子も無いからな。』

 「ありがとうございます!バウンドパイクの足が早すぎて、干物に加工する前に腐る事がたまにありますので、マジックバッグがあれば無駄にする事が無くなります!」

 『生きてる物は入らないから、殺した物を入れる様にな。』

 「了解しました!」


 真珠を回収している間、村長は上機嫌で鼻歌まで歌っていた。

 マジックバッグがそんなに嬉しかったのか。


 『ちょっと火山の方を探検してみようぜ?温泉があるかもしれんし、この島特有の名産品とか調べてみたい。』

 「そうですね。火山の近くであれば、サラマンダーやファイアーバードがいるかもしれませんし、調理もしてみたいので探してみたいですね!」

 「この島の気温は、少し高い様に思えますから、珍しい木の実があるかも知れませんね。」


 カレンは火山由来の獲物目当てで、リズは熱帯の果実かな?できれば地獄谷みたいな場所を見つけてみたいのだが。


 『温泉卵が食いたい!』

 「温泉卵?何ですかそれは?」

 『温泉の熱で茹でた卵だよ。』


 栄養価的に何か変わるのかは判らないが、温泉と言えば温泉卵か温泉饅頭だよな。


 『温泉饅頭もあったな!』

 「!?何か臭そうです。」

 『じゃぁ、作ってもリズは抜きで。』

 「ちょ!?嘘です!冗談ですよ!?」


 火山の探検に出かけた。

 シーアは村長と海の方で、何かをするらしいが、スーアが着いてくる様だ。


 森を進んで行くと、卵の腐った臭いがする場所が何度かあったのだが、硫黄が噴き出ている訳では無く、本当に腐った卵が落ちているだけだった。


 『紛らわしいな。あの鶏の卵は、無精卵なのか?』

 「この腐っている様に見える卵は、ファイアーバードの卵ですよ。臭過ぎて食べようとは思いませんが、食べた事のある者によれば、味は良いそうですよ。」

 『どうするかは、カレンに任せる。俺は遠慮しておくが。』

 「ゴーグルを着けても、〈腐った鶏の卵〉と表示されますが?」

 『そっちの卵はそうだな。これはファイアーバードの卵だな。見た目も臭いも同じだから、わざと近くに産むとか、卵を盗んできて腐らせるとかしているんだろうな。』

 「割っても同じなんですかねぇ?」

 『案外、割ったら親鳥が来るかもな。』

 「割ってみます。」


 カレンが皿の上に割ってみると、中から出て来たのは、黄身がオレンジ色でぷっくりと盛り上がった、美味しそうな卵だった。

 親鳥が飛んでくることは無かったが、生で食べるのは危険な為、とりあえず目玉焼きにしてみる事にした。


 『見るからに普通の卵だな。殻の臭いも拭けば取れるし、高級卵なんじゃないか?』

 「美味しそうですね。黄身の張りといい、白身の弾力といい、大きさも鶏よりも一回り大きくて、食べ応えもありそうです。」


 だが、問題が生じた。

 ファイアーバードの卵というだけあって、火耐性が高くて火が通らないのだ。


 『[アナライズ]・・・目玉焼きはできないが、雑菌は消えた様だな。寄生虫もいないし、TKG向きの卵なのかもしれないな。』

 「炊き立てのご飯ありますから、食べてみますね。」


 カレンのポーチに入っていた、炊き立てのご飯の上に、熱々の生卵が乗せられ、生醤油をかけて、ひと口。


 「んー!美味しいー!!」

 「ひと口頂戴!食べてみたい!」

 『これは、珍味だな。TKG専用の卵として優秀かもしれないが、採取には問題がありそうだな。』


 TKGの取り合いをするカレンとリズ、冷静に卵の利用価値を模索するアルティスを見るスーアの目は、完全に変人を見ていた。


 『スーア、その目はいけないな。新しい物を探求するには、挑戦する事が必須なんだ。知らない事を知らないままにするよりも、新しい知識を得る事は、人を一つ上の段階に押し上げてくれるんだぞ。村の中であれば、お前の態度は普通かもしれないが、この場でのお前の態度は、多数決でお前の方がおかしいと言える。』


 アルティスの屁理屈を聞き、周囲を見渡してみれば、確かに5人しか居ないこの場では、自分が少数派となる事に納得ができた。

 だが、アラクネは兎も角、TKGと呼ばれる物を取り合う二人を見ていると、中に混ざるのを躊躇い(ためらい)たくなるのも事実。

 取り合う程に美味しいらしいご飯が、気にはなるが料理とは言えない程の物を取り合う気にはなれない。

 スーアは、どんな態度を取ればいいのか、判らないでいた。


 『カレン、ひと口だけ、俺とスーアにくれ。』

 「私には無しですか!?」

 『優しいカレンがくれるだろ?』


 アルティス達のやり取りに、巻き込まれた事に驚きを隠せないスーア。


 「私も食べなければ駄目ですか?」

 『気になってます!って顔してるぞ?気になるなら食え。』

 「では、ひと口だけ。」


 スーアも取り合いに参加した。


 『そろそろ進むぞ。卵はまた見つかるんだから、さっさと行くぞ。』

 「「「はーい」」」


 かつては、噴火を繰り返して島を形成する程だったにせよ、近年では大規模な噴火は無く、森の木が太い事からも、大規模な噴火は起こってない事が判る。

 だが、地下にはマグマがあるのか、日陰の割に地面の温度が高く、気温も高く感じられるから、熱帯植物の様な、木の実がちらほら見える。

 それらを採取して、食べたり燃やしたりしながら、進んでいた。

 燃やしたのは、木の実だと思って割ってみたら、芋虫が大量に出て来たので、思わず[ファイア]を唱えてしまったのだ。

 程よく焼けた芋虫の匂いに釣られて、小動物が沢山集まって来たのには驚いたが、小動物たちには、相当に美味しい虫だった様だ。


 「何か、期待の目を向けられてませんか?」

 『何か、キラキラした目でこっちを見ているな。害虫っぽいし、幾つか燃やしておくか。そのまま燃やすと山火事になりそうだから、落としてくれ。』


 木の枝にぶら下がる直径50cm程の実は、実は虫の繭の様な物で、木の実では無い様だ。

 最初は、木の実を食い荒らす虫なのかと思っていたのだが、皮がそもそも繊維質なので、蚕やミノムシの様に糸で繭を作っているのだと知った。

 中身は3cm程の幼虫がわんさか入っていて、割ったまま放置していても動物が寄って来ず、何故かと思っていると、アルティスをロックオンした幼虫が数十匹、一斉に糸を吐いてアルティスを絡め捕ろうとして来たのだ。


 『[ファイア]生きていると、餌として認識しないのは、こういう事だったのか。割らずに燃やすとどうなるのか、見てみようか。』


 割らずに燃やすと、程よく火が通った頃に繭が崩れて、中から蒸し焼きにされた芋虫が出て来た。

 腹ペコアニマルズは、満腹になって別の集団に入代わっていたが、ファイアーバードやヒートリザードまでもが寄って来て、一心不乱に食べ始めて居た。


 『明らかに、何か異常が起きているな。』

 「そうですね。魔獣すらも痩せこけていますし、何かが起こっているとしか思えないですね。」

 「あの芋虫が、原因でしょうか?」

 「違うと思いますよ。あの虫の塊は、以前からありましたから。」

 『昔からあんなに狂暴なのか?天敵らしき魔獣が居ないのは昔からか?』

 「いえ、天敵としては、マグマリザードとレッドスネークが居た筈ですが、全然現れませんね。」

 『火山の異変か、誰かの仕業か、芋虫の進化か、とにかく原因を突き止めない事には、どうにもならないな。ソフティーは何か思い当たる節は無い?』

 『んー、マグマリザードが居なくなったのは、火山が静まってマグマが地表に出なくなったのが原因だと思う。レッドスネークが居なくなった理由は、巣穴に異変が起こったのかもしれないよ?』

 『レッドスネークの巣穴ってどこにあるの?』

 『この辺だと山の北側かなぁ?』

 『行ってみよう。魔力感知でも北側に何かが集まっている気配があるから。カレン、スーアを乗せてあげて。』

 「了解」


 山の北側に行ってみると、そこには大規模なゴブリンの村があった。


 『あれが原因か?レッドスネークってゴブリンに負ける程に弱いのか?』

 『レッドスネークは水に弱いから、ゴブリンメイジが水魔法が得意な奴だったんじゃないかな?普通なら負ける筈は無いよ。』

 『じゃぁサクッと殲滅するか。折角だから、元気な連中を連れて来るか。ウルファ、ミュール、ウーリャ、フィーネ、セリナ、リミア、イーリス、ゴブリン集落の殲滅だ。出動準備!』

 『私も向かいますね。』


 何故かワラビが反応した。


 『人間はいないぞ?セイレーンの島だから、捕まる人間は居ない筈。』


 ワラビが来たがる理由は、捕まっている人間の救済の為なのだが、今回は居ないと思うので、そう伝えたのだが、来るという。

 ワラビの中で、何かが囁いたのだろうか。


 全員が集まったので、即席部隊に作戦会議をやらせて、殲滅に向かわせた。

 作戦は、ウルファ、ミュール、ウーリャ、フィーネが正面から突入し、セリナ、リミア、イーリス、グリフォンが弓と魔法で援護するという、シンプルな作戦だった。

 ヒポグリフは来ないのかと聞いたら、今はアーリアに扱かれて、死んでるそうだ。

 ウルファとウーリャは、ブートキャンプに行ってから、まだ4日しか経っていないが、ウルファはスッキリした体型に戻っていて、ウーリャは精悍さが増した感じになっている。

 それぞれが配置に着くと、戦闘が始まった。

 ウルファが持って来た武器はハルバードで、ドワーフが標準装備している物だ。

 ミュールは空中機動を使いながら、突出して突き進んでいる。

 エルフ3人は、ゴブリンアーチャーとゴブリンメイジを中心に刈り取っていて、グリフォンは上空から警戒をして、後ろに回り込もうとするゴブリンシーフを狩り取っている。

 たまに直線的にゴブリンが殲滅されているのは、セリナに渡した弓で撃ったからだろう。

 遠くにいるゴブリンの上位種を狙う時には、偏差を考える必要が無いので、重宝する様だ。

 ちなみに、セリナがグリフォンに付けた名前はイーグルで、下位互換の名前になっている気がしないでもないが、当人が気に入っている様なので、黙っている。

 鳥人達からは不評だ。

 イーグルとは、鳥人達の神と崇めている者の名前なのだそうだが、厳密には過去の英雄の名前らしい。


 ウルファ達が集落を攻めていると、海側から大量のゴブリンが集まって来た。

 海岸から集落までを埋め尽くす程の群れだが、ちょっと多すぎるな。


 『スーア、増援のゴブリンを混乱させてくれ。ルベウス、増援の方行っていいぞ。』

 『行ってくるー!!』


 ルベウスは、戦闘が始まってから、尻尾がピクピク動いていたので、参加したくてウズウズしているのが視て取れた。

 カレンが少し驚いていたが、普段はカレンの陰に隠れていて、あまり活躍できていないからな、こういう時に暴れさせるのも必要なんだよ。


 『心配なら見に行って来いよ。』

 「見てきますね。大丈夫だとは思いますが、少し心配です。」


 スーアが混乱させてるんだから、大丈夫に決まっているんだが、やはり心配ではあるらしい。

 増援の方にゴブリンジェネラルがちらほら居るが、混乱していて周りのゴブリンを蹴散らしているし、正気じゃないからルベウスの敵では無い。

 戦闘開始から10分で、ゴブリンの数は半減したが、まだまだ数は多い。


 『あと半分だぞ。がんばれー』


 ウルファがゴブリンがダンジョン産である事を突き止めた。


 『こいつら、ダンジョン産のゴブリンじゃねぇか!?近くにダンジョンがあるんじゃねぇのか?』

 『レッドスネークの巣がダンジョン化したんだろうな。』

 『じゃぁ、大ボスはレッドスネークか?』

 『違うと思うぞ。大ボスがレッドスネークじゃぁ、このゴブリンの数はおかしいだろ?』

 『まぁ、確かにな。じゃぁ、ゴブリンキングが居るって事か。』

 『それはどうだろうな。ついでに調べて来てくれよ。』

 『・・・今の会話は、嵌められたのか?』

 『正解。』

 『くっそー!!』

 『アルティス様に舌戦で勝てる訳が無いですよ。』

 『ダンジョン攻略なんて、きついだろうが!』

 『そうか?そんなに深くないんじゃないか?ゴブリン程度なら、そのメンバーでは、過剰戦力だぞ?』


 ウルファが横目で周りを見ると、汗もかかずにサクサクと処理をするウーリャ達と、不思議な動きで切り込んでいくミュールが見えた。

 一瞬あっけにとられそうになったが、すぐに切り替えて戦闘に戻った。


 アルティスは、少し気になっている事があった。

 それは、南側にたくさんあった、芋虫の繭玉が北側には無いという事だ。

 これだけの大群を維持する為に、食い尽くしたという可能性もあるが、その前に相当な被害が出ると思われるのだ。


 『あの芋虫の繭を、こっちの大群の中に放り込んだら、どうなるんだろう?』

 「アレは何の虫なんですか?」

 『クリーチャーワームとは出るんだが、芋虫というよりも動く卵って感じじゃないかな?』

 「クリーチャーワームって、サンドワームの卵の事ですよ?」


 サンドワームの卵がクリーチャーワームという物らしい。

 卵というよりも芋虫なのだが、卵なのにアグレッシブに動き回る性質を持っている様だ。

 しかも、小動物を捕食するのだ。

 本当に孵化するのか怪しいと思えるが、何故かサンドワームの卵と言われると、あり得そうだとも思えてしまう。


 『砂が無いのに?木の枝にぶら下がっているのに?』

 「サンドワームの近縁種でしょうか?」

 『可能性はあるな。確認の為に落としてみようぜ?』


 本当にサンドワームの近縁種なのか、確認してみる必要があるだろう。

 しかも、種類が表示されないって事は、新種の可能性もあるって事だもんな。


 「じゃぁ、取りに行ってきますね。」

 『ソフティーと行って、くるんでもらえよ。運んでる途中で、ばら撒かれても困るし。』

 「了解」


 取りに行くのはリズだ。

 リズは、芋虫やら毛虫やらに耐性がある様で、手で掴める程に、何とも無い様なのだ。

 アルティスは、大量に蠢く(うごめく)芋虫や不規則に集まったブツブツが無理なので、割れた瞬間にファイアで燃やしたのだ。

 ちなみに、カレンも割と平気らしい。

 モコスタビアで治安を守る職務をこなしていると、その手の死体や遺体など、何度も見るらしく、慣れてしまった様だ。

 カレンが当初、無表情キャラだったのは、そういう経験が原因で、鬱だった様だ。

 リズは・・・、何とも無い訳無いよな。


 「取ってきました。コレ、開けたらきっと弾け飛ぶので、このまま落としますね。」


 ソフティーの糸でネット状に覆っているが、一部を緩めてからゴブリンの増援の中に落とした。

 弾けた繭から、クリーチャーワームが飛び出して、周囲のゴブリンに襲い掛かった。

 半径20m程だろうか、白い粘液が広がり、ゴブリンが次々と捕らえられていき、特徴的な紫色の血をまき散らしながら消滅していく。

 ダンジョン産のゴブリンだから、死体が残らず魔石のみ残るのだが、クリーチャーワームが学習したかのように、ゴブリンを殺さずに齧る様になった様だ。

 ゲームではないので、ポリゴンにはならないが、消える際は黒い粉になって、煙の様に消えていくのだ。

 暫らく見ていると、太った芋虫の背中がパックリと割れて、赤紫色の細長い物が出てくるのが見えた。


 『あれはワームか?』

 「レッドスネークが産まれた!?」

 「レッドスネークってワームだったんだ。」

 『ちょっと待て、芋虫からレッドスネークが生まれるって事は、レッドスネークが共食いするって事なのか?』

 「そうみたいですね。あれ?別のクリーチャーワームが、白い物に変わりましたよ?」

 『細長い物の詰め合わせなのか?』

 「・・・嬉しくない詰め合わせですね。」


 下では、色とりどりのワームが誕生している様だ。

 その光景を見て、結論を考えてみると、サンドワームやロックワーム等のワーム類は、全て同じ種類のワームであり、生まれた地域の状況に合わせて、進化するのではないかと思う。

 そして、今まで蛇だと思われていた、レッドスネークが実はワームだった事が判明したという事だ。

 まぁ、セイレーン達も、レッドスネークを食料としていた訳では無く、見かけるといつも芋虫を食べていたので、別の種類だと思っていただけだ。


 産まれたワームがどうなったかというと、それぞれの生息域を目指して移動を開始した様で、ゴブリンには見向きもしないのだ。

 たまにゴブリンに攻撃された個体が、ゴブリンを食い殺している程度で、必死に動き回っている。

 暫らくすると、生息できる場所を見つけられなかった個体が、ドロドロに溶けて、酸の水たまりを形成する様になった。

 入り込んだゴブリン達が次々と煙になって消えてゆき、水たまりに落ちた魔石は底に溜まっていく様子が見て取れる。


 『アレは放置しても問題無さそうだな。』

 「そうですね。ワームが生き残ったとしても、生存できるか疑問がありますし、放置でいいと思います。」


 ウルファ達の方に視線を戻すと、疲れが溜まってきた様子が見て取れた。

 既に数千匹のゴブリンを殲滅している訳で、疲れない方が異常と言えるだろう。

 当初は数百だったのが、ダンジョンらしき洞穴から、どんどん湧いて出て来るので、エンドレス状態になってきているのだ。

 それに加えて、海岸から集まって来た増援と言える数万のゴブリンが居る訳で、到底数名の兵士で対応できる数では無いのだ。


 『王都のドワーフと馬人、兎人に加勢させるか。』

 「リザードマンも加えてやってください。」

 『あるじー、兵力貸して。数万のゴブリン殲滅に従事させるから。』

 『数万のゴブリンだと!?それは、ゴブリンエンペラーがいるんじゃないのか?』

 『ダンジョン産でもそうなるの?』

 『可能性が高いな。リザードマンと馬人、兎人、狼人族に対応させよう。ゲートを開いてくれ。』

 『[ワープゲート]』


 ゴブリン集落の入り口前にゲートを作った。

 中から、リザードマン、兎人、馬人、狼人族がそれぞれの武器を携えて出て来た。


 『ウルファ、ウーリャ、フィーネ、ミュールの援護に向かえ。そしてそのまま交代してこい。カレン、リズ、食事の用意を頼む。スーアとルベウスは一旦下がれ。』


 今まであまり使って来なかった、馬人と兎人族だが、訓練はちゃんとやっていたし、戦闘力も当然ある。

 だが、元々が農耕民族である為、基礎戦闘力が低かったのだ。

 種族特性も、戦闘向きとは言えない為、オーク相手では心許無いので、訓練を続けさせていたのだ。

 一部はハンザ神国に行っているが、農耕民族とはいえ、全員が農家という訳では無いので、戦闘向きの者達は残って訓練を続けていたのだ。

 種族全体の数も減っていたというのも、残した理由の一つである。

 農家は軽く見られがちだが、せっせと食料を作ってくれているのだから、蔑ろにしていいなんて事は無いのだよ。

 寧ろ敬うべきだろう。

 農家が居なくなれば、食べる物に困るのだからな。

 ここにいる兎人と馬人達は、農家の盾となる重要な役割を担ってもらうのだ。

 特に兎人族、彼等は兎同様に一度にたくさんの子供を産む事ができるそうで、住みやすい環境さえあれば、すぐに人数が増えるそうだ。

 だが、多産だからこそ危うい部分もあって、近親婚が起こり易いという欠点があるので、ある程度の人数が残っていなければ、滅亡のリスクが高いと言える。

 それなりに、各地に分散して生活をしている様だが、魔王軍に参加した事で各地の同族が一度に集まり、混ざった事で血が薄まった様だが、その状態が長く続けば、濃くなるのは当然と言える。

 獣人族は、寿命が短命の種族も多数いる為、人間よりもサイクルが早い種族も存在しているのだ。

 だから、上位種族以外の獣人達は、遠征をさせるなどして、遠くの同族を探す旅に出そうと思っている。

 その為の戦力は、必要不可欠な存在なのだ。

 食事の準備が終り、ウルファ達が食べ始める。


 ムシャムシャガツガツ


 ふと、周囲に小動物達が集まって来ている事に気が付いた。


 『くず野菜とか、捨てる物があったら、皿に盛って出してみる?』

 「大したものが残ってませんよ。それに、小動物と言っても、獣人じゃないですか?」

 『え?これ獣人なの?小さ過ぎないか?』

 「会話の内容を理解しているなら、出てきて欲しいんですが。」


 一人が代表して出て来た。


 「申し訳ありません。私目が代表して対応させていただきます。我々はピカ族の者です。普段は火山の麓の岩場に住んでおりますが、ゴブリンの大群が、島の北側を占拠していましたので、隠れて住んでおりました。そのゴブリンが倒されているのを見て、新たな支配者様にご挨拶に伺った次第でございます。」

 『支配者?支配はしないぞ?ゴブリンは倒すが、この地をどうこうするつもりはないな。今回ゴブリンを倒す事になったのは、たまたまだ。南のセイレーン達の村に、危害があるかもしれないからな。』

 「なんと!?では、我々に何かを要求したりはしないと?」

 『何ができるのかも知らないしな。この島で平和に暮らしたいのなら、それで構わないよ。』

 「しょ、少々お待ちください。」


 茂みの中に引っ込み、キーキーと鳴き声が聞こえたと思ったら、再び茂みの中から出て来た。


 「仲間に相談したのですが、我々を貴方様の末席に加えて頂く事はできませんか?」

 『何ができるんだ?俺は人間の国に所属しているんだ。俺の下に付くという事になれば、人間の国に属する事になるが、それでもいいのか?』

 「獣人を束ねているのでは無いのですか!?」

 『仲間に獣人はいるが、俺の主人は、人間だ。生活する場も、人間の街の中にある。君らを迎え入れても、君らの居住を保証できるとは思えないな。』

 「かつての我々の先祖達は、人間と共存しておりました。しかし、いつしか人間から狙われる事が増えた為に、この地に逃げ延びて来たのです。」

 『共存していた?どうやって?』

 「畑の雑草等を駆除しておりました。」

 

 ピカ族という種族がよく解らないのだが、げっ歯類でドブネズミ程の大きさで、尻尾が短く、耳が丸っこくてかわいい動物の記憶が・・・鳴き兎か?


 『草以外には、何を食べるんだ?』

 「草以外は食べません。」

 『じゃぁ、数名で視察に来い。それで大丈夫そうなら、農業の友として迎えてやろう。』

 「では、私と他6名でお願い致します。」


 ゴブリン退治の途中で、ピカ族という新たな獣人に会うというイベントが発生したが、ひとまずそっちは置いておこう。

 まずは、ゴブリンをどうにかしないと、どうにもならないからな。


 「地面に散らばる魔石、どうなさるおつもりですか?」

 『放置しようと思っているが?集めるのが面倒くさいからな。』

 「我々が集めましょうか?」

 『見返りは?』

 「バレイショを少し分けて頂ければ十分です。」

 『カレン、バレイショの在庫ってどれくらい持ってる?』

 「500個程ですね。」

 『余裕で残るな。じゃぁ、バレイショを渡そう。何個必要だ?』

 「我々の人数が120名程ですので、30個程あれば十分です。」

 『生のまま食べるのか?』

 「生のままがいいです。」


 バレイショ30個を渡すと、周囲からシャクシャクと齧る音が鳴り響き、3分程で鳴り止むと、ゲフゲフ聞こえた。

 リズが爆笑してるよ。


 『リズ、お前が彼等を護衛しろ。』

 「え!?」

 『とりあえず、魔石を集める時に、襲われては困るからな。一人じゃ辛いから、セリナを呼ぶか。というか、セリナ達も居たのを忘れてた。』

 『やはり忘れられてましたか。』

 『すまん。飯食ったら、ピカ族の援護に回ってくれ。』

 『了解です。』


 エルフ3人がキャッキャッ騒ぎながら戻ってきた。


 『済まないな。情報過多ですっかり忘れていたよ。』

 「ほら、やっぱり忘れられてたじゃないの!」

 「だから、早く聞けって言ったのに!」

 「本当に忘れられているとは思ってもいませんでした。」

 『俺も万能ではないからな。言いたい事は遠慮なく言ってくれ。』

 「判りました!」

 「もう食べてもいいですか?」

 「では、食事に入ります。」

 『召し上がれ。』


 3人ともガツガツ食い始めた。

 先に食っていたウルファ達は、疲労困憊だった様で、食べ終わった時に、スリープをかけたので、すぐに寝始めた。

 食べながら、リミナが気になっていた事を聞いてきた。


 「アルティス様、ヒポグリフさんの事なのですが、テイムさせないのですか?」

 『ん?別にできるのなら、してもらえると助かるんだがな。アイツが希望するかどうかだろ?』

 「ドワーフと契約しそうだったのを止めたと聞きましたが、それは何故ですか?」

 『あぁ、それは、ドワーフがクズだったからだよ。クズに強力なパートナーなんてやる訳無いだろ?それに、ドワーフにヒポグリフなんて、宝の持ち腐れになるだけだ。』

 「確かに。ドワーフは空を飛ぶなんて嫌がりますからね。」

 『リミナがテイムできるのなら、してもいいぞ?』

 「いいんですか?ヒポグリフさんとは、よく話をしていますので、契約してもらえるかもしれません。」

 『今呼ぶか?どうせ暇してるだろうし。』

 「暇なんですか?」


 (しご)かれて死んでいると言っても、30分もあれば復活するし、今呼んでも問題は無いだろう。


 『ヒポグリフ暇か?』

 『うおっ!?その聞き方は無いのではないか・・・?』

 『どうなんだ?リミナが寂しがってるぞ?』

 『リミナ殿が会いたがっているのなら、赴こうではないか。何処に向かえばいいのだ?』

 『迎えに行く。』

 シュン

 シュン

 『・・・お主には、クールタイムという概念は無いのか?』

 『無いぞ?テレポートなら、40回繰り返しても、MPが余るからな。』

 『ぐぬぅ、敵わんな。』


 クールタイムと言うのは、魔力を集める為の時間の事で、魔法を使うには、頭や手に魔力を集める必要がある為に、その為の時間がクールタイムになるのだ。

 アルティスの場合は、体が小さい事と、保有MPが多い為に、殆どクールタイムが存在しない。

 ただ、消費量の多い魔法を使えば、当然クールタイムは発生する。


 『そんな事より、リミナと契約しないか?』

 『いいのか?』

 『いいぞ。ドワーフとの契約は駄目だがな。あんな連中と契約しても、窮屈になるだけだからな。』

 『ドワーフとはそんなに酷い人種なのか?』

 『契約者を乗せて飛びたいと思うか?』

 『もちろんだ。空が我らの支配領域だからな。』

 『ドワーフは高い所と海が苦手なんだよ。』

 『なんと!?では、ドワーフと契約していたら、飛べなくなっていたと?』

 『そうだぞ。飛ぶなんて言ったら、ボロクソに悪態をつかれるし、逃げるだろうな。それに、お前らの羽、良い素材としか考えていないぞ?』

 『納得がいった。あの場でドワーフがスルーされていたのが、気になってはいたのだ。』

 『なら、リミナと契約するのは問題無くなったな?』

 『うむ、問題無いというより、お願いしたい。』

 「ありがとうございます!契約お願いします!」


 何か、名前がホークでは嫌だったらしく、フォークになったんだが、落ちそうだよね。


 イーリスがチラチラとこっちを見て来る。

 自分だけ従魔が居ないので、気になっているのだろう。


 『何か用か?』

 「いやぁ、私だけ従魔契約が無いのがちょっと・・・」

 『良いのが見つからないと、ちょっと無理だよな。知能があって飛べるとなると、限られてくるしな。』

 「あーん、酷いですぅ」

 『・・・何かあざといから、放置でいいか。』

 「イーリス、アルティス様相手に使える訳無いでしょ?立場が悪くなったわよ?」


 セリナからのツッコミが入ったな。

 相手をするのが面倒くさいというのもあるのだが、今はテイムできる様な相手が居ないというのもある。

 そして、空を飛べるとなると、選択肢が狭まるというもの。

 当分見つからないだろう。


 平和なムードから一転、ゴブリン退治の方に注意を向けると、ダンジョン入り口前と増援部隊に挟まれた本隊が完全に囲まれた形で戦っている。

 囲まれているといっても、絶望に満ちている訳では無く、作業の様にゴブリンを倒し、疲れたら後ろに移動して、休憩する。

 疲れが取れたら、前線に復帰するというサイクルができあがっている様だ。


 『スーア、また状態異常をばら撒いてくれ。』


 ウルファ達も少し寝て、復活した様だ。

 実は、食事にロイヤルゼリーを混ぜ込んであって、スタミナが復活する様にしてあった。

 ロイヤルゼリーは、スタミナ復活に効果的な栄養を持っているのだが、体に吸収されるまでに、少し時間を要する。

 だいたい、小一時間程かかるのだが、ただ待つより昼寝をさせた方が、精神的にも休息できるので、軽くスリープをかけて、寝させたのだ。


 『起きたか?体の調子を確認しろ。確認が終わったら、戦況を見て自分達のやる事を考えろ。』

 「私は洞穴の入り口を攻める!」


 ミュールは、自分の武器の特性を考慮して、ダンジョン攻略の足掛かりを作る様だ。

 ミュールの武器は、パワードスーツ的な物なので、近接戦闘を補助するような魔道具が、大量に組み込まれている。

 ジェットスーツの様にホバリングできたり、スラスターを使って空中で向きを変えたり、ブーツにホバー機能と無限軌道が付いていて、武器には魔道砲やホーミングレーザーも付けた。

 魔道砲は、要はレールガンで、魔力で引っ張りながら押し出す感じだ。

 ホーミングレーザーも、圧縮した光魔法をロックオンした相手に打ち出しているだけだ。

 大量に打ち出されるミサイルも実現したかったのだが、魔法自体が誘導できるので、態々榴弾を作って誘導させる必要性が無いので、諦めた。

 しかも、魔力の乗らないただの爆発では、威力など無いに等しく、無防備な民衆か、魔法効果を着けていない建造物の破壊くらいにしか使えないのだ。

 つまり、効果が限定的過ぎて、使えないという訳だ。

 その代わり、肩に乗せる形の弾種を選べるバルカン砲を作ったので、面制圧も可能である。


 「私達は増援の方を横から妨害する。」

 『それは許可できないな。』


 ウーリャとフィーネは、増援部隊を横から急襲して、分断を図ろうとした様だが、そんな危険な作戦は容認できない。

 何故なら、そんな事をすれば、ウーリャとフィーネにゴブリンが集中するだけで、集落に投入した馬人と兎人の意味が薄れるのだ。


 「何故ですか?横やりを入れれば、彼等の負担が軽くなりますよ?」

 『それに何の意味があるんだ?副次効果も無く、解決にも繋がらず、唯々(ただただ)、お前らの体力を削るだけの作業に、意味を見出せるのか?』

 「・・・。」

 『お前らは、ウルファと共にゴブリン増援部隊の発生源を探れ。止められれば、効果は絶大だし、彼等の助けにもなるだろ?』

 「ウルファはとろいから、戦闘に使えないの。」

 『だが調査能力は高い。ウーリャの100倍くらいな。』

 「ぐふっ」

 『ルベウスはスーアの援護を頼む。』

 『判った!』


 ウルファが、アルティスに苦言をこぼした。


 「アルティスさんは、優しく無いな。」

 『優しく言って覚えてくれるのなら、優しくするさ。お前らの教育係が何を教えていたのかは知らんが、愚策しか思いつかない様な勉強をしていたのなら、叩き直すしかないだろう?』

 「判らなくも無いが、あんなに落ち込んでいるのを見るとなぁ。」

 『あれは、お前の下に付かされたのが不満なだけだぞ?』

 「なにぃ!?」

 「ほらぁ、やっぱり気がついて無いじゃない。」

 「ぐぬぬ、そんなにまで愚兄になっていたとは・・・。」

 「俺、そんなに評価の下がる事をしたか?」

 『実力が下がったのがデカいんだろ?』

 「すぐに戻すよ!ほら、行くぞ!」


 ゴブリン増援部隊の湧き場にウルファ達が向かったのだが、到着と同時に応援要請が来た。


 『何があった?』

 『地面に穴が開いてて、そこから湧いている様なんだが、どうしたらいい?』

 『穴に油と火でも落としてやればいだろ?』

 『そんな簡単な事でいいのか?』

 『金を掛けたければ、かけてもいいが、費用は全部お前持ちな。』

 『何でだよ!?』

 『無駄な金を使いたいんだろ?なら、その費用をお前が持つのは当然だろ?』

 『そうじゃねぇよ、火力の心配をしてんだよ!』

 『試さずに何を心配すると?』

 『悪魔関連だったら効かねぇだろ?』

 『それを調べる為にやるんだよ。いきなり高価なアイテムを使う訳にいかないだろ?』

 『何だよ、ケチくせぇな。』

 『だから、お前の金でならやっていいと言ってるだろ?』


 神聖魔法玉1つで、白金貨50枚程の価値がある。


 『あのアイテムの値段知ってるだろ!?』

 『判ってるんなら、一々口答えするなよ。国の予算だって、無限じゃないんだよ。余計な金を掛けなくてもいい所には、安く済ませるんだよ。判ったらとっととやれ。』

 『へいへい。』


 油を放り込むと、ゴブリンが出て来なくなり、ファイアを撃ち込むと、穴が消えた。


 『ダンジョンから煙が出て来た!』

 『ウルファ、理解できたか?無駄遣いをしていると判断したら、お前の給金から引くからな。』

 『・・・うっす。』

 『お前らは殲滅しながら進んで来い。』


 ダンジョン入り口前では、ミュールとリミナ達が煙が噴出する入り口を眺めている。


 「どうしますか?これ。」

 『塞いだら、酸欠で中の奴死なないかな?』

 「試してみましょう。」


 ダンジョンの仕組みは知らないが、火元は明らかにダンジョン内にある為、空気が必要なら酸欠になる者もいるだろう。


 ダンジョンの入り口に、石と泥を使って壁を作った。

 隙間からは、白い煙がモクモクと立ち上り、中が燃えている事を知らせている。


 『待ってる間に、食事と休憩にしよう。野営準備を開始しろ。セリナ、リミナ、島全体の監視を命じる。異変があったら、教えろ。』

 「「はっ!」」

 「野営準備を始めろ!」


 ダンジョン前広場での戦闘は、ほぼ終っていて、残るは増援部隊の殲滅のみとなっており、増援部隊は前後を挟まれる形での戦闘を強いられている為、ゴリゴリと数を減らしている。

 足元では、ピカ族達が走り回り、魔石の回収を行っている。


 ゴブリンの魔石は、直径1cm程の大きさしかなく、内包される魔力も少ない為、少量では利用価値が無いのだが、ある程度集めて精製する事で、ランタンなどのMPとして使う事ができる様になる。

 魔石の精製とは、フォレストウルフやグレーウルフの魔石や、同サイズの魔石にMPを移す作業の事で、錬金術の基本でもある。

 同サイズの魔石は、ゴブリンの魔石を消費して、錬金術を使う事で合成する事が可能である。

 魔石とは、魔力が結晶化した物であり、魔力を吸い出してしまえば、残るのは一つまみのカスだけだ。

 だから、空になった魔獣の魔石などは、存在しない。

 一旦MPを吸い取り、別の魔石に移す作業を延々と続けるという、忍耐力とMPの性質変換の技量を鍛える為の訓練にもなる為、錬金術の練習にはぴったりなのだ。

 今、目の前では、アルティス監修の元、カレンとリズがせっせと精製作業を行っている。

 アルティスの持論では、魔力操作を覚える事は、魔法を使う時には必須の技量だと考えている為、関係者は全員魔力操作を覚える為の訓練を続けているのだ。

 一度覚えてしまえば、錬金術を覚えるのも簡単になり、そこら中に生えている薬草を使って、ポーションを作る事も可能となり、全員の生存率が上がる事にもなるし、MAGをアップさせる一助にもなるのだから、覚えないという選択肢は無い。


 リズもカレンも、アルティスの為になる事なら何でもやるという思いで、錬金術を学んでいるのだ。

 今、軍に支給されているポーションは、魔道具部隊が作り、配布されているのだが、作くれる者はどんなに居ても構わないので、覚える意思のある者は、積極的に教え込んで人材を育成している。

 それでも、アルティスの業務は全く減らないどころか、益々増えて来ている為、二人は必死に錬金術を覚えようと努力している。

 なんとしても、アルティスの手から、この雑用を奪い取り、抱・・・ゆっくり寝かせたいのだ。

 カレンは、黙々と集中して作業をする事が得意で、大量に集まって来る魔石を、アルティスがポンポンと精製している姿を見て、自分に教えて欲しいとお願いしたのだ。

 カレンは魔力操作を覚え、錬金術も教わりながらコツコツと続けてきた為、MAGが3000を超えるまでに成長した。

 元々魔法騎士を目指していた事もあり、上位魔法が撃てる様になると、嬉しくてたまらない様だ。

 今は、時空間魔法を覚える為に勉強を続けている最中なのだが、概念を覚えるだけでも、かなり難しく、イメージを沸かす事ができないらしい。

 ディメンションホールは使える様になったのだが、最初は空間の広さを把握するのに、相当苦労したのだ。

 目測で範囲を決められなければ、想像すらできないのだから、漠然とした広さを想像しても、空間を作る事ができないのだ。

 最大値で作ってもいいのだが、MPがごっそり減るので、お勧めはできない。

 そんな大容量のを作っても、不良在庫が増えるだけで、良い事無いしね。

 錬金術は、そんな時空間魔法よりもずっと楽だと思うと、単純作業と化した今の作業も、全く苦にならなくなった。

 しかも、自分で作った魔石を使って、簡易コンロでお茶を入れる為の湯を沸かしているのだ。

 成果が判るというのは、やる気が出る物だ。

 そして、目の前にはアルティスが作った同じ物がある。

 いや、同じ見た目だが、性能が段違いの魔石が目の前にあるのだ。

 その性能は、内包するMPの量が、カレンが作った物の数十倍入っていて、魔石の硬度もかなり高いのだ。

 アルティス曰く、魔石とは魔力が結晶化した物で、結合構造を変える事で、硬さを変える事が可能なのだそうだ。


 『これの構造は、正四面体同士で繋がっていて、ダイヤモンドと同じ構造なんだよ。』


 全く理解できていない顔をしていると、分子構造の一部を形で教えてくれた。

 見せてくれたそれは、物質の最小単位を表しているらしく、それを構成する事ができるようになれば、お手本の硬さを真似する事ができるそう。


 「この模型の形はどの辺にあるのですか?」

 『全体だよ。』

 「全体??」

 『[マイクロスコープ]今が1000倍に拡大しているんだが、表面に細かい傷が見えるだろ?肉眼で見ると綺麗だが、実はこんな感じなんだよ。これを更に1000倍に拡大する。まだ見えないだろ?これを更に1000倍に拡大すると、何となく判るか?』

 「小さなブツブツが沢山見えます。」

 『更に10倍拡大すると、見えただろ?さっきの形が沢山並んでいるのがさ。』

 「これをどうやって作るんですか?」

 『分子構造をコレで作るって思っただけなんだよなぁ。それでできないか?』

 バタッ

 『わっ!?カレン!?MP切れか!?一旦[キャンセル]』

 「カレン!どうしたのですか!?」

 『魔石の構造を実践させてみたんだよ。だけど、まだ難しいみたいだな。理解が及ばないから、余計な事にMPを使っちゃって、使い切ったんだと思う。』

 「MP補充しているんですね?なら、その内気が付くでしょう。」


 実際は、頭がパンクしてMPが飛んだ様な状態だった様だ。

 MPは、限界を超えた力を発揮する為にも使われるから、頭がパンクすると使用してしまう様だ。

 よくアニメで見る、頭がパンクした時に、シューって湯気が出る感じだな。


 「ふー、ゴブリン掃討終わったぜー!疲れたー!」

 『おう、ご苦労だったな。向こうで休憩してこい。』

 「りょーかい」


 戻ってきたウルファが、ウーリャとフィーネを両肩に担いで、休憩場所に歩いて行った。

 リズが目で追ってるのは、気になりだしたって事かな?

 リズの好みって、イマイチ判らないんだよなぁ。

 偽メビウスとの共通点は、タメ口で自分より弱い奴ってとこかな?


 『後で模擬戦やってみるか?』

 「えっ!?どうしたんですか?急に」

 『目で追ってただろ?気になったのかと思ってな。』

 「そそそ、そんにゃこちょはないれすよ?」


 噛みまくりじゃねぇか、めちゃくちゃ動揺してんな。

 ウルファとなると、フィーネが立ち塞がるんじゃないかな?

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