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神々のガラクタ船 ーWater alchemist and the Worldtree’s landsー  作者: 猫隼
Ch1・宇宙から失われたもの
27/142

27・化け物(悪党星系の少年4)

 ミズガラクタ号に残っていて、ミーケたちと通信がとれなくなったが、別にそれは予測通りでもあったので、もちろん慌てもしなかったスブレットとエクエス。


「だけど、こうなってくるとさすがに少し心配でもあるね。セキュリティシステムとか、結構ろくでもないんでしょう」

 連絡の取れない時間が経つごとに、心配で落ち着かなくなってきているようであったスブレット。

「大丈夫だろ、リーザがいる」とあっさりと言いきるエクエス。


「確かにわたしのロボット2体相手に戦った時は、かなり常人ばなれしてたけど。もしかして、あれでもまだ本気じゃなかったとか」

「まあ、あれはそもそも別に。そっちだって殺す気どころか、大してダメージを与えるつもりも多分なかっただろう。リーザの方も、だからか、なるべく壊してしまわないように気を使ってたみたいだぞ。ようするにそのくらいは余裕があったってことだ」


 その2体のロボットとの戦いの時に、「ちょっと本気出すから」とリーザは言っていたが、それは本当に文字通りちょっとだろうと、エクエスは考えていた。


「いったい、何者なのよ、あの人」

「そういえばおまえは知らなかったっけか。あの子、リーザは《ヴァルキュス》って国の軍人だ」


 エクエスがそれに気づけた理由は、リーザの戦闘時の構えかたが、その国の軍式のものだったから。


「《ヴァルキュス》って、なんか聞いたことあるけど、有名な国なの?」

「まあ"世界樹"外だからな、 あまり関わりもないし、距離もかなり離れてるから、こっちじゃあまり有名ではないよ。ただこの宇宙全体では、多分一番名の知られた国家だ」


 それから、それぞれに三角の各辺のような、細長い3つの銀河フィラメントの縮小イメージを表示させたエクエス。


「何これ? フィラメントが、3つ?」だとは、スブレットもすぐに気づけた。

「その3つ全部が、《ヴァルキュス》の本拠だ。そして周辺のかなり大規模な範囲にある数多くの他国も支配下においてる、その圧倒的な軍事力でな。ようするに《ヴァルキュス》は宇宙最大の軍事国家だ」


 そしてリーザは、その最大の軍事国家の元軍人というわけである。


「確かにそれは凄そうね。でもそうだとしても、別にそういう国にいるからって強いとは。それともその軍式とやらを習う人ってのは、基本的に強い人とか?」

 さらに問うスブレット。

「それを体得していることよりも、それを体得しておきながら、国外にいるって事がすごいんだ。《ヴァルキュス》はこの《ルセドラ》とか、というより"世界樹"のどんな国とも違う、本当の軍事国家なんだ。軍の戦略に関する機密情報のセキュリティはかなり高い。フィラメント間戦争なんか長い間もう起きてないのに、軍の型を会得してる者なんかが、どういう理由にせよ、外にいるって事は、2つしか理由は考えられない」


 つまりその、現に外にいるリーザは、《ヴァルキュス》の追っ手を退けられるほど強い存在か。あるいは、例え国を抜けたとしても機密情報を外に漏らすような者ではないと信頼されるほど、軍内での立場が上であったか。


「どっちにしても化け物の中の化け物だよ」

 だからこそエクエスは、リーザなら、"世界樹"のどこにも、大した敵なんていないだろうと確信していた。

 最悪どこでだって、力ずくでどうにかできるだろうと。


「それはほんとに凄そうだね」

 実際にはちょっとスケールが大きくなりすぎて、想像が追いつかなかったスブレット。

「けどさ、エクエス。あなたはなんで、そういうこと知ってるの?」

「それは長生きの賜物だ。おれは単に、《ヴァルキュス》という国がまだ、今のより大したことなかった頃から知ってるというだけの話だ」

 そういうわけだった。


ーー


(今)

 そのタイミングを逃さず、ミサイルの小規模爆破で軽く弾けとんだ岩石を踏み台にする。さらにその爆発の勢い自体も逆に利用し、戦闘機の上まで飛んできたリーザ。


 そしてそれから、ある程度の力を込めた拳で、戦闘機を直接叩き壊す。



(これ)

 真っ二つになって墜落した戦闘機の残骸の横で、リーザはまだ、怪我の1つもない様子だった。

(違法取引で流れてきたのかな)


 リーザがロタレイを知っていたのは、それを開発したのが、ヴァルキュスの軍事研究所であったからである。


「まあ今はそんなことより」

 とにかく、捕まってしまったミーケとザラであった。


ーー


 ザラが目覚めた時、すでにミーケは目を覚ましていた。

 2人とも椅子に座らされ、それほど硬くはなさそうだが、上手い具合に身動きが取れないよう縛られていた。


「2人とも目覚めたみたいだね」

 間もなくその部屋に現れたルカ。

「ぼくはルカ。あんたが」

 ザラを指差す。

「《アズテア》とかいう国の姫で、地質学者のザラセニタだということはわかった」

 そして指を下ろし、続いてミーケを見る。

「誰かわからなかったのはおまえだ、おまえも《アズテア》の者か? それでも研究者仲間とかか?」

「研究者仲間だ。名前はミーケ」

 別に隠す必要もないだろうので、すぐさま答えるミーケ。


「ルカ、あなたたちは、この辺りを支配している組織なのですか?」

 ザラが聞いた。

「そうだ。ぼくらは『レデン』、そしておまえたちが、多分何も知らずに歩いていたのは、ぼくらの土地だ」


 どういう形にせよ、自分のものと主張できるような領域を、土地とする表現はかなり古い感じだった。


「ねえ、わたしがザラセニタだと知ってるってことは、今のこの状況がどういうことにつながりかねないかも、わかってるんじゃないかしら?」

 普通に脅しのようだったザラの言葉。

「さあ、微妙なところだろうな。だが確かに、ぼくはあんたの価値を知っててさらったんだ。最初から素性がわかってたわけじゃないけどな、だけど、そういう立場の存在じゃないかとは期待してた」

「きみも外の。この星系の外の出身なの?」

 そうでないかと思うミーケ。

「さあね。だけど確かに、ぼくはここの住人にしては、例外的なほどに知っていることは確かだよ。ここが本当はどこなのかってことをね」


 だからこそ、突然に現れたミーケたちに関して、正しい推測をすることができた。

 どれほど価値があるのかも、どれほど警戒すべきかも、よくわかっていた。


「まあ無駄話なんて、後でいくらでもできるだろう。今はとりあえず本題に入ろう。《アズテア》とかいう国の規模がどの程度かは正確に知らないけど、ぼくの要求を叶えられるくらいには十分に発達してるはずだ」

「わたしを交渉の材料にするつもりなのですね。だけど無駄じゃないかしら。わたしは確かにあそこの王家の出身だけど、ほぼ勘当状態。人質として大した価値なんてないですよ」


 それは普通に嘘だった。何はともあれ、ザラの命なら、《アズテア》を相手にする場合の非常に大きな交換対象にはなるだろう。


「試してみるさ。そっちの男、ミーケの体を壊して見せてやったら、ぼくらの本気度はわかるだろ」


 ルカのその発言には、さすがに、背筋がゾクリとしたミーケ。


「言っておくけどねルカ。もし本当に彼を殺したりなんかしたら、後悔するのはあなたですよ」

 ザラも、こうなってはかなり緊張した様子を見せる。

「あの女だろう、おまえたちと一緒にいた。確かに恐ろしい力を持っているみたいだけど、この場所を見つけられなければ意味はない」

「きっときみが思ってる何百倍も、あいつは恐ろしいよ」


 ミーケのその言葉も、予想以上に覿面(てきめん)なようだった。


「おまえたちに発信器とかは仕掛けられていない。そんなことはわかってる、そのくらいはわかるんだ」

 しかし今や、そうであってほしいというような感じだったルカ。

「だいたいもう、生きてなんていないはずだ。強力な戦闘機をぶつけてやったんだ」


 ミーケは何も答えなかったが、ザラが《フラテル》にやってきた時、 生身で戦艦相手に全然余裕そうだったリーザのことを思い出す。

 そして、沈黙をどう解釈したのか、さらに不安そうな雰囲気を高めたルカ。


「ルカ」

 そこで、部屋に新たに入ってきた2人の少女。

「なんだ?」

 不安そうな感じを一瞬で消して、振り向いたルカ。

「『キルディ』の使者が来てるの」

 名前を呼んだのではないほうだろう少女がそう言った。

「わかった、すぐ行く」

 それから、ミーケとザラ、それぞれを何か確認するように見てから、少女たちよりも先に部屋を出て行ったルカ。


 少女2人はザラの方を見て、片方は怒っているような、もう片方はちょっと複雑そうな表情を見せてから、ルカの後に続いて行った。

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