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神々のガラクタ船 ーWater alchemist and the Worldtree’s landsー  作者: 猫隼
Ch1・宇宙から失われたもの
23/142

23・神様がくれたチャンス(自分の世界でひとりぼっち9)

 スブレットが再び部屋のドアを開けてその姿を見せたのは、1時間ほどしてから。

 その間、とりあえずは許可もあったので、いろいろ話をしながら、ミーケとリーザは、スブレットの作品コレクションを、続けて楽しませてもらった。



「"世界樹"の基準じゃ、あなたたちって変わってるよね」

 また部屋から出てきたスブレットは、まずそう言った。


「そう、かな」

 自分では全然判断つかなかったミーケ。

「なんでそう思うの?」

 聞いてみたリーザ


「それはあなたが」

 リーザを指差したスブレット。

「どう考えても科学者って感じのタイプじゃないから、で」

 さらに今度はミーケを指差す。

「あなたは科学者みたいだから、それも重度の」


 そう、《カルディラ大学》の者たちのような……。

 それとも、違うのだろうか。


「ミーケ、あなたさ」

 指はおろしたスブレット。

「あなたは楽しいの? そんな、あなたの話の半分もわかっていないような女と話すの。いちいち回りくどい説明しなきゃならないし、何が重要かを理解してもらうことも苦労してるんじゃない」


 そこで、リーザは少し気まずそうになって、しかしミーケは笑みを見せた。


「つまらなさそうに見える?」

 問うミーケ。

「いいえ、とても楽しそう。とても」


 どうしてか、スブレットにはわからない。なぜかを知らない。


「おれはさ、科学者かもしれないけど、そんなに優秀じゃないんだ、きっと。わからないことがとても多いし、どうでもいいことだって多い。きみがそう思った通り、おれはリーザと一緒にいて楽しい。だけど、その理由なんて知らないし、興味もないよ」


(ミーケ)

 なんとなく、もうリーザにはミーケの言いたいことは理解できた。そして、それは嬉しかった。


「スブレット、きみはさっき、楽しいものの創作能力こそ、生物の1番素晴らしい習性と思うって言ってたろ。同じようにさ、難しい理屈なんて抜きに、誰かを好きになれるって事も、生物の素晴らしい習性だよ」

「あなたは彼女を好きなの? それにリーザ、あなたの方も、彼が好きなの?」


 その実にストレートな問いかけに、顔を見合せ、 そして微妙に、照れ隠しのような笑みを浮かべあったミーケとリーザ。


「友達ってそういうものだよ」

「友達だからね」

 その声も重なった。


 "世界樹"でなくても変わり者だと思った。

 難しい理屈ではきっとない。だけど2人の間には、2人が考えている以上に、奇妙な絆があるように思えた。

 きっと2人は、自分が欲しかったものを持っている。

 自分はどうだったろう。カルディラ大学で探していたのは、誰だったのだろう。


(「あなたが噂の天才ね」

「やっぱり違うよね、こうして意見の合う人と話すのは」

「楽しいよね」

「あいつ、嫌い」

「むしろこれはおまえのためなんだよ」

「きみは、友達と話すの楽しくないの?」)

 きっと好きになってもらおうとした。好きになろうとした。そういうふうに思い込もうとしていた。

 だけど、そういうふうに本気で思えるような相手と出会うことなんて、この広い宇宙の中で難しい。だって、自分もきっと変わり者だから。


「ていうかさ、わたし、ミーケのする水とか歴史の話、普通に興味はあるんだよ。確かに説明されても、ちゃんとわかってるか怪しい部分もあったりするんだけど」

 そこは何に対してか、少しばかり悔しげな感じでもあるリーザ。

「だから、あなたはあんなに聞くんだね」


 スブレットは、彼女も笑みを見せた。


「わたし、これでもあのエリート学校で、何万年かに1人の大天才とか呼ばれてたんだ。だからさ」


 自分が探していた存在なのかわからない。だけど、少なくともその答を、2人は教えてくれる。

 そんなふうな気がした。


「きっと役に立てると思う。だから」


 スブレットは、わずかな会話や感情の動きから、もう2人の性質をよく悟っていた。

 ミーケを重度の科学者、と表現するのは大袈裟じゃない。彼はそういうタイプだ。本質的に物事を見るのが得意で、感情をごまかすのが上手い。だけど実際にはシンプルで、きっと裏表なんてものがない。

 リーザは、ミーケより遥かにわかりにくい。元の性格もよくわからないけど、それは何か、異常と言えるくらいに、理性的なコントロールに長けていることを示している。複雑で、何重にも裏側を持っているような印象さえ受ける

 明らかに2人共、自分とは違って、孤独を大した苦にしないような人たちだけど、かつて自分がどれだけ欲しがっても、手に入ることがなかった絆を持っている。


「だからわたしも」


 実のところスブレットも、ミーケと同じように、レトギナ教の敬虔(けいけん)な信者だった。ただ、レトギナの創造神を心から信じているかというと、そういうわけではない。彼女は単に、レトギナの説く様々な思想、理想が好きで、関心があるだけ。いつか、自分の作品のために勉強した際、単純に素敵だと思ったのがきっかけだ。

 そう、神様を信じてるんじゃない。

 だけど、今この時の出会いは、それこそ神様が与えてくれたチャンスかもしれないと、ちょっと真剣に考えてしまう。


(そうだ、がんばれ。言っちゃえ、わたし)


 そしてまるで、ためらいとか、迷いとかなんてものを、強引に吹き飛ばそうとするかのように、彼女はほとんど叫んだ。


「わたしも、仲間にしてください」


--


「正直、計算通りでした。スブレット、歓迎します」

 スブレットを連れて宇宙船に帰ってきたミーケたちを見るや、すぐにそう言ったザラ。


「そういえばレコードは結局あったの?」

 とりあえず聞くミーケ。

「はい、やっぱりミィンが受け継いでいたようです」

 エクエスの持っていたものに比べると、少し小さめな、しかし見かけはほとんど同じ欠片レコードを見せたザラ。


「ザラ。2人から聞いたわ、聖遺物の、なんか凄い船があるんだよね。それ、わたしも力になれるかも」

 ミーケやリーザに比べ、ザラ相手にはまだ、あまり馴れてない様子のスブレット。


「ところでな。ひとつ思い出した」

 何か思い悩んでいるように、明後日の方向を向いていたが、急に真剣な顔になったエクエス。

「あと1つのレコードがあるかもしれない場所」

「何か妙に不安そうですね。けっこうまずい場所だったりするんですか?」

 すぐにザラは聞く。

「ああ」


 頷き、ため息をついてからエクエスは告げた。


「《ルセドラ》だ。この"世界樹"で最大の国」


 そして、最悪の国。

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