4ー1・空の欠片の少女
これまでにすでに、とてつもなく長い時間がこの唯一の宇宙にあった。辺境の宇宙領域〈ジオ〉の、辺境の惑星であった《地球》で生物が生まれるよりもずっと以前から。
やがて、生物ではありえない生物(?)、実体なきもの、《虚無を歩く者》がどこからか現れた。そしてそれは、唯一の宇宙の全ての生物の敵となった。
戦いの末に、いくらか特別なテクノロジーを持っていたエルレード生物たちが、唯一の宇宙から、(それを利用していた敵を一時的にでも無力化するため)最もありふれていた物質、水を永遠に消してしまった。
テクノロジーなしで宇宙の閉ざされた領域を飛び越えることができたのかもしれない、そしておそらくはその力を利用して、生物に知性を与えた神々と呼ばれた何かたち。その神々と直接的に関わっていたとも言われるアルヘン生物は、水が失われた後の宇宙に、それでもいつかまた現れるだろう《虚無を歩く者》との再びの戦いに備えて、辺境の〈ジオ〉にいくつかの希望をもたらしたようだった。
他の宇宙のあらゆる生物と同じように、最も重要な要素であったろう水の代用品、ただそれだけでなくジオ生物、人間を驚くべきほどに強くした緑液。聖遺物と呼ばれる古代テクノロジーの産物の中に含まれている、特別な武器と思われるいくつか。物質を媒介に現れる《虚無を歩く者》に対する生物兵器|(?)である、物質をコントロールする特殊能力を有する者、錬金術師であり、おそらく道しるべとしての封印された記録を持つ少年ミーケ。そして、知の小世界"世界樹"と、力の大世界《ヴァルキュス》。
《ヴァルキュス》という大国家の核を構成する3つの銀河フィラメントの1つ、"空の欠片"で生まれた少女リーザ・シャーリドは、待ち望まれていた強き子だった。そして彼女は、いくつかの戦いをこえて、いくつかのことを理解し、付き合いは短くとも、無二の親友でもあるミーケのことを、どこまでいこうと守ることを誓った。
アルヘン生物が〈ジオ〉に望んだ、知の世界と力の世界。リーザは力の世界の特別な子、そして知の世界には……