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48.週末のお誘い

 体育の授業のあと、私たちは体操服から着替えるために更衣室に来ていた。


 この学校には制服というものは存在せず、それぞれが自由な服を着ていいとされている。

 そのこともあってか、学校の敷地内にはちゃんと服屋もあるらしく、()()()()()()()()()()服を買うことができる。


 その点、お小遣いを与えられていない私は成長した時にどうすればいいのだろうか? そもそも、エミリーは学園内でできるバイトを紹介するといっていたが、それっきり話がないし、アリゼラッテ家から送金が行われる気配はない。


 確かにこの学校では学業に必要なものは無料で提供されているものもあるのだが、衣服など必要ではあるものの学業とは関係のないものはすべて有料だったりするらしい。


 当初はそのことなど知らなかったのだが、サントルから“ターシャ様、今度の休日は一緒に服屋に行きませんか?”などというお誘いが来て、詳しく話を聞いていくうちにそのような事実が発覚したのだ。


 ついでに言えば、学校の敷地内とはいっても服屋は学生寮に行くよりも前に新入生たちが集められた広場の近くにある商店街にあるそうで、その商店街には服屋のほかに本屋は薬屋、病院、観劇場などがあるのだという。


 学生寮に住民がいて、その近くに学校があるという状況を考えると、この学校はまさしく帝都魔法学校という一つの街になっているともいえるだろう。


「それにしても、実家からの送金が一切ないとはどういうことなのでしょうか?」


 サントルからの誘いを断る際に正直に事情を話したためか、サントルはアリゼラッテ家からのお小遣いの送金がないことに疑問を持っているようだ。

 彼女曰く、お金を送金する際は、通信札と呼ばれる魔力が込められた札(前世でいうところの携帯電話のようなものだろうか?)をつかって、送金したい金額を学校側に伝えるだけでいいのだという。


 生徒は商店街にある銀行でお金を引き下ろし、送金をした生徒の親は専用の業者に依頼して学校までお金を運んでもらうという仕組みが存在しているらしい。


 だとしたら、アリゼラッテ家としてはその通信札とやらで送金をする意思を表明するだけで、とりあえず私の手元にお金は入るのだ。なぜ、そういった措置をしてくれないのだろうか?


「……ターちゃん。やっぱり、サンちゃんと一緒に商店街に行きましょう? 買い物はしなくても、見るだけというのもありでしょうし」


 いろいろと考え事をしながら着替えていると、同じく着替え中のメニーから声がかかる。が、視線をメニーの方へはむけない。一緒にお風呂に入ったりはしているのだが、いつもは先に私が入って、あとからメニーが入ってくるので着替え中というのはあまり見たことがなく、なんとなく見るのが恥ずかしいからだ。一応、宿での着替え中もそういう風に振舞って来ていたし、学生寮に入ってからも彼女が着替え始めるとなんとなく目を背けてしまう。逆に彼女の方は着替え中の私をじっくりと観察……とまではいかなくても、視線を私の方へ向けていたりするのだが……


「そうですね。ウインドウショッピング……でしたっけ? そういうのもあるらしいですし。せっかくの休日、寮の部屋に引きこもっていたらもったいないですよ」


 続いて、いつの間にやら着替えを終えたサントルもメニーの提案に乗っかってくる。


「……まぁ見るだけなら……いいかもしれないわね」


 確かに休日の予定は特にないし、さらに言えば商店街にも興味があるといえばある。そうなれば、メニーやサントルたちとショッピングに出かけるというのも悪くはないだろう。


「それじゃ、決まりですね」


 私が一緒にショッピングに出かけるという意思を見せたことで、メニーが笑顔でそう告げる。そのあとは、具体的に何時にどこの集合するかなどが話し合われ、週末のショッピングに向けた計画はあっという間に立てられた。




 *




 更衣室を出た後、私たちは三人そろって、教室へと向かう。


 教室に入ると、一足先に着替えを終えて教室に戻っていたメリーに出迎えられる。


「そうだ。メリーさん、今度の休日は予定はありますか?」


 それとほぼ時を同じくしてサントルがメリーに声をかける。


「あーそうですね。予定は特にないです。強いて言うなら、商店街にある教会に行ってみようかなっていうぐらいですけれど……」


 教会まであるんだ。そんなことを考えている私の横でサントルが目を輝かせながらメリーの手を取る。


「でしたら、ぜひ商店街で買い物をしませんか? 私たち三人で商店街に出かけようと思っていまして、教会に寄った後でもいいので……いかがですか?」

「そういうことですか……それでしたら、四人で教会に行ってから、買い物というのはいかがでしょうか? まぁ教会に興味がなければ私一人で行きますけれど」

「いえいえ、この学校にある施設には興味があります。教会もいきましょう。ターシャ様、メニー様。お二方はどうされますか?」


 教会に行くといっているメリーを半ば強引に仲間に引き込むと、サントルは私たちに意見を求めてくる。


「そうですね。教会を一度訪れてみるというのもいいかもしれません」


 私が別行動でというよりも早く、メニーが了承をする。そうなると、もはやそれに従うほかないだろう。


「そうね。だったら、私もついていこうかしら」


 私一人が別行動をしたところでうまみはない。むしろ、女子生徒が一人でウインドウショッピングを楽しんでいるという微妙な光景が出来上がりかねない状況だ。それに、この学校にどんな施設があるか気になっているというのも事実なので教会を訪れてみるのも悪くないかもしれない。


 本音を言うと、彼女たちが教会を訪れている間、メニーと二人で別行動をしたかったのだが……


 それはともかく、私たちの週末は四人で教会を訪れてから、商店街の散策及びショッピングという方向で決定する。


「そうなると、改めて集合場所と時間を決めないとですね」

「そうですね……学生寮の共有スペースの前の売店。ここに……朝の10時とかでどうですか? 最初はそういう話でしたし」


 サントルの問いかけに対して、メニーが返答する。

 それに難色を示したのはメリーだ。


「せっかく教会に行くのですから、もう少し早くいきませんと……朝の8時……いえ、7時ぐらいがいいです」

「あーそれもそうかも知れませんね……」


 どうやら、休日はのんびり寝てからお出かけというコースが消えつつある。教会で何が行われ、それがどういったスケジュールで進んでいくのか知らないが、少なくともメリーからすれば朝の10時に出ていては見たいものが見れないということなのだろう。もしかしたら、朝の礼拝とかそういうのがあって、それを見たいのかもしれない。


「わかりました。それでは7時にしましょうか」


 休日なのに学校に行くよりも早く起きそうになりそうだ。


 そのぐらいのレベルの提案なのにメニーはあっさりと要求を受け入れて、それで決定という空気を醸し出す。


「わかったわ。朝の7時ね」

「はい。ありがとうございます」


 結局、誰も抗議をする人が出なかったので朝の7時に共有スペースの前の売店に集合する方向で話がまとまる。


 そのあとは少し談笑をしてから、私たちは次の授業の準備に入った。

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