森の魔女
更に数日後。あたしは再び街を訪れていた。
理由は簡単でアリアさんからの連絡を受けるためである。ひとまず城へ行くと夕方に改めて来て欲しいということになって、前の時と同じく暇をつぶさなくちゃいけなくなってしまった。
さて、何をしようかな。
そう思いながら歩いていると、中央の広場についた時に突然腕を掴まれた。
「えっ!?」
「ちょっと!」
いきなり過ぎて誰なのかもわからないままにあたしは引っ張られる。抵抗できそうだけど、ひとまず流れに身を任せていると市場のある大通りの影にたどり着いた。
「あ、あなた……私の覚えが正しければだけど、野菜うちに売ってくれた人よね?」
「へっ?」
腕を離してもらってからその人を見ると、たしかにあたしが野菜を売った市場の若い女性だ。
「まあ、そうだけど……もしかしてまずかった?」
「まずくないわ。むしろ魔力をこめてをあそこまでしっかりと育てるなんて見事なものよ。ただ、そのせいであれを欲しがる人がたまにうちにくるようになってね……」
人気が出ちゃったほうだったのね。事故とかよりはいいけど、それは少し困ったな。安定して供給するのは難しいのに。
「余裕があったらでいいの。お願い!」
「まあ、わかったわ。次の収穫時期で余裕が出たら来るから。落ち着いてくれないかしら?」
「ご、ごめんなさい……ふぅ。あ、私はヒルダよ。市場で野菜とか木の実とかの売買をしているわ」
「あたしは……たしか売る時に証明で名前教えたわよね?」
「アンジュちゃんでしょ! 若いのに凄いわね」
見た目的には確かにあたしのほうが若いけど、ヒルダさんも成人して数年ってぐらいに見える。実際の年齢は知らない。
「しかし、あんなに平然と歩いてて大丈夫?」
「どういうこと?」
「あなた結構有名人になってるから」
「え、うそ!?」
「本当よ。城によく出入りしてて、ギルドでは突如現れたのにも関わらず冒険者の多くに慕われていて、街の外からやってくる。更に、市場だと魔力がこもって質のいい野菜を突然売りに来たって。これで、噂にならないと思うの?」
「くっ……たしかに噂になってもおかしくはない」
迂闊だった。目立ちたくないと思って行動してたはずなのに、肝心な所で普通に生活を送ってしまった。
一箇所に留まって人と関わったりし続けるのはじめてだから忘れちゃってたのかな。
「ちなみに市場では二つ名までついているわ」
「い、一応聞いておこうかしら」
勇者みたいな扱いになるのはごめんなんだけどね。でも、知っておけば何か対策とれるかもしれないし。
「森の魔女様って」
「様づけなの?」
「あの野菜で魔力欠乏症にかかってた子が体調戻ったりして、ある意味奇跡を起こしたみたいな雰囲気があるってことと、魔力が高い野菜って結構形崩れたりしちゃうこと多いのに、他の野菜と遜色ない綺麗な形してるから」
「そうなのね」
あの森でしか育てたことないから知らなかった。でも、そういえば最初の100年は大きさも形もバラバラだった覚えもある。すでに忘れかけてるから、どのくらいまでだったか思い出せない。
「そこから魔力を操ってるんじゃみたいな感じね。まあ、噂がどんどん広がってくに連れて形を変えちゃって、結果的に市場のあなたを知っている人たちの間では魔女様ってね」
「ありがとう……できれば名前で呼んでほしいけど、まあ仕方ないわね」
「ふふっ。いいじゃない。他に魔女様なんてこの辺じゃいないからね」
「そうね……」
せめて『魔女』じゃなくて『魔女のアンジュ』って呼ばれるように頑張ろう。じゃないと、前世に逆戻りだ。




