あの男との再開
魔女の二つ名はさておき、空を眺めればまだまだ青が広がっている。
市場から一度離れて再び中央広場まで戻ってきたけれど、やることは思いつかない。
「おやおや、お久しぶりです」
「うん?」
設置されてる椅子に座って空を見るように顔をそらしていると、視界の上からひょこっと1人の見覚えのある男が顔を出す。
「あ! あんた、あのときの!」
あたしのことを奴隷店まで連れて行った男だった。
「あの節はどうも。いやー、紹介した方が購入してくれたということで、わたくしのほうにも色々と良い事がありました」
「あっそう……それで? こんな昼から何の用よ」
リリアちゃんとの出会いという事を考えて怒ったりあの時のことを恨む気はないけど、積極的に絡みたいとは思わない。
「いえ、顔を見かけたのでついですね。話しかけてしまいました」
「そう……あたしはあんまり会いたくなかったわ」
「そんな寂しいこと言わないでくださいよ」
何故かそう言って自分の手をこすりながら隣に座ってくる。
「寂しいもなにも……そもそもあのときだけの関係でしょうが」
「それがですね。また新しい――」
「奴隷はもう買うつもり無いから」
あたしは相手の言葉にかぶせてきっぱりと言ってやった。
「おっと……いえいえ、滅相もない。今回は正真正銘に良い物ですよ」
「それを何か今ここで言ってくれるならもう少し話を聞くけど」
「今回は簡単に言えば魔法道具ですねー。競売ではなく純粋に値段の付いた販売店です。ただ、最近開いたばかりで宣伝を頼まれていまして」
「へぇー……魔法道具か」
いや、ここで騙されてはいけない。というか奴隷店を紹介してると思ったら、魔法道具店を宣伝するって、こいつは一体何者なの。
「ご興味がお有りで?」
「まあ、少しはあるけど。それ以上にあなたのことを信用しきれてないってことよ。一体何者なの?」
「そうですね。あえていうなら、お金さえいただければなんでも宣伝するといったようなことでしょうか」
「へ、へぇ……」
聞いたこともない事をしているけど、仕事として成り立ってるのね。
「とはいえ、流石に非合法店とかとは契約する気はないですがね。あくまで、合法の場所のみです」
「まあ、たしかに合法だったけど……そこまで言うなら、行ってあげるわよ。その魔法道具店とやらに。ただ、あなたも一緒に店に入るならね」
「もちろん構いませんとも」
「じゃあ、そういうことなら行ってあげるわ」
「では、こちらですのでついてきてください」
立ち上がって男はそう言う。あたしも椅子から立つと男はギルドなどがある通りの方向へと移動していく。あたしはそれをゆっくり追うように歩き始めた。




