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戦わずに全部潰したら、誰も戦わなくていい村になった  作者: 慈架太子


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73:魔道具バレット銃 試作

朝の空気は、磨き上げた水晶のように澄み渡っていた。

村の外れに新設された試験場には、簡素な的、土を魔法で固めた防壁、そして水が並々と張られた桶が配置されている。一見すれば物々しい武器の試験場だが、そこに漂うのはピリついた殺気ではなく、新しい何かが生まれる直前の、最高にワクワクするような熱気だった。


「よおし、野郎ども! 今朝の目覚めの一杯は、火薬の匂いじゃなく魔力の煌めきだ! 世界で一番『優しくて痛い』新兵器のお披露目会を始めるぜ!」


カイゼルが試験場の中央で、いつものように底抜けに明るい声を響かせた。

その手元には、従来の魔導式バレット銃。だが、その内部構造はカイゼルの手によって、よりシンプルに、より「理詰め」に書き換えられている。


「……また物騒なものを増やしたのか、カイゼル」

エルダが槍を傍らに置き、腕を組んで尋ねる。その瞳には、村の防衛を預かる者としての厳しい期待が宿っていた。


「ははっ! 増やすんじゃねえよ、軍曹殿。今日は『整理整頓』の時間だ! 今までみたいに複雑な魔法を混ぜるんじゃなく、役割を三つの色に絞り込んだのさ!」


カイゼルが机の上に三つの魔石を並べた。

澄み切った青、透き通るような透明、そして淡く神々しく輝く白。


「水、風、そして光。基礎はこの三つだ!」


「整理、ねえ……」

マリナが扇子をパチンと閉じ、不敵な笑みを浮かべて覗き込む。

「機能を絞るってことは、汎用性を捨てるってことかしら?」


「いいや、迷いを捨てるのさ! 混ぜれば混ぜるほど、扱う側には高度な知識が必要になる。……それは俺の設計図じゃ『弱さ』なんだよ。誰でも一秒で『正解』を選べること。これこそが、この村を最強にするんだぜ!」


### 1:ウォーターバレット――貫通から「制圧」へ

試験が始まった。まずは青の魔石。

リナが銃を構える。かつて奴隷商の馬車で震えていた彼女も、今では民兵としての凛とした立ち姿が板についていた。


「リナ、思いっきりぶっ放してやれ!」


「……はい!」

引き金が引かれた瞬間、高圧の水弾が一直線に放たれた。

ドォン! という重低音と共に、厚い木の的を容易く貫通し、背後の土壁に深い穴を開ける。


「……すご。これなら、どんな鎧だって……」

リナが驚きに目を見張る。だが、カイゼルはニカッと笑いながら首を振った。


「ははっ! 強すぎるぜ! 貫通しすぎだ。これじゃあ村の中で撃ったら、壁の向こうで昼寝してる奴まで串刺しになっちまう。……不合格だ!」


カイゼルは即座に魔石の出力を調整し、魔導回路を書き換えた。

「いいか、村の中での戦いは『殺す』ことじゃなく『止める』ことだ。――もう一回!」


再度、放たれた水弾。

今度は的に当たった瞬間、衝撃を周囲に撒き散らしながらバシャァッ! と激しく弾けた。貫通はせず、しかし標的を確実に地面に叩き伏せる。


「これだ! 捕縛用、制圧用。汚れを落とすついでに悪党の戦意も洗い流してやるのさ!」

「……なるほど。これなら、誤射を恐れずに踏み込めるな」

エルダが満足げに頷く。


### 2:ウィンドバレット――「面」で制する暴力

次は透明な魔石。風の弾だ。

放たれた瞬間、空気が悲鳴を上げた。

不可視の刃が扇状に広がり、並べられた三つの的を一瞬ですべて切り刻む。


「……範囲攻撃か。対集団戦には理想的だが、扱いが難しそうだ」

エルダが冷静に分析する。


「その通り! 敵も味方もごちゃ混ぜの乱戦じゃ使えねえ。だからこそ、撃つ場所を『仕組み』で決めるのさ。マリナ、こいつの量産体制を整えたら、配置場所の最適化も頼むぜ!」


「ふふ、いいわよ。一番効率よく『お掃除』できるポイントを見つけてあげるわ」


### 3:ホーリーバレット――闇を払う「正義」の一撃

最後は、白く輝く魔石。

リナが放った光の弾は、一直線に闇を切り裂くように飛んだ。的を貫いた直後、桶の水に触れた瞬間――蒸発するように、光は何も残さず消え去った。


「……跡形もない。浄化の力か」


「当たりだ! 夜戦やアンデッド相手に、後腐れなく片付けるための特効薬さ。残響が残らねえから、暗闇でも自分たちの位置を悟られにくい。……ねえ、最高だろ?」


カイゼルは満足げに、試作銃を掲げた。

「迷わない武器。それが、俺たちが手に入れる新しい『言葉』だ!」


### 結び:仕組みが人を強くする

夕方、試験を終えた村人たちが口々に感想を言い合う。

「俺でも当てられたぞ!」「これなら家族を守れるかもな」


「ははっ! そうだ、それでいいんだよ!」

カイゼルは村人たちの輪に入り、陽気に肩を叩いて回る。

「武器が強いんじゃない。誰でも使えるお前たちが強いんだ! 仕組みを信じて、しっかり訓練に励んでくれよな!」


夜、三人は焚き火を囲んでいた。

「……普通の村じゃ、あり得ない光景ね。農業に、識字に、今度は軍事教練まで。……カイゼル、あなた本当にこの村をどこまで持っていく気?」

マリナが杯を傾けながら笑う。


「どこまでもさ! 普通じゃないからこそ、誰も奪えない。普通じゃないからこそ、みんなが笑える。……守るためなら、俺はどんな非常識だって仕組みに変えてみせるぜ!」


「殺さない武器、か。……甘いが、この村らしいな」

エルダが火を見つめて呟く。


「ははっ! 殺すか止めるか、それすら自分たちで『選べる』ようになること。それが本当の強さなんだぜ、軍曹殿!」


カイゼルの陽気な笑い声が、夜の静寂を明るく照らす。

水、風、光。

三つの基礎から生まれた新しい力は、人を英雄にするためではなく、誰もが平穏を守れる「歯車」になるために。


止まらない物語は、新しい武器という名の希望を手に、さらなる光り輝く未来へと加速し続けていた。

「さあ、明日は魔石の仕入れルートの再構築だ! 未来は、俺たちの計算通りに踊ってるぜ!」

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