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戦わずに全部潰したら、誰も戦わなくていい村になった  作者: 慈架太子


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111/120

111:価格操作対抗 マリナが逆に市場操作。

外部商人が流通を止めた。


だが、それで終わるほど甘くはない。


「……来たわね」


マリナが市場の中央で呟いた。


いつもの余裕。


だが目は鋭い。


村の市場。


今日も人は多い。


野菜が並び、肉が吊られ、パンが焼かれている。


一見、平和。


だが――


「値段、上がってるな」


誰かが言う。


塩。


薬草。


鉄材。


じわじわと。


確実に。


「外が絞ってる」


レイナが淡々と言う。


「流通量を減らして、価格を吊り上げてる」


マリナが笑う。


「典型ね」


商売の基本。


供給を絞る。


需要は消えない。


だから価格が上がる。


単純。


そして――


「舐めてる」


一言。


空気が変わる。


カイゼルが静かに問う。


「どうする」


答えはもう出ている。


「やり返す」


マリナは迷わない。


広場の中央に立つ。


人が集まる。


自然と。


この女は、そういう力を持っている。


「聞きなさい」


声はよく通る。


「外は、私たちを絞ってる」


ざわめき。


「でもね――」


笑う。


妖艶に。


「それ、逆に使えるの」


意味が分からない。


だが、彼女は続ける。


「価格が上がるってことは――」


「価値が上がるってことよ」


静寂。


「つまり、今あるものは全部“高く売れる”」


理解が広がる。


ゆっくりと。


「でも売らない」


マリナは言う。


「市場から消す」


レイナが横で頷く。


「在庫を一時的に引き上げる」


「全部じゃない。必要最低限だけ残す」


供給をさらに絞る。


だが――


「それじゃ困るだろ」


村人の一人が言う。


当然の疑問。


マリナは即答する。


「困らない」


カイゼルを見る。


合図。


カイゼルは軽く手を上げる。


魔力が流れる。


無音で。


そして――


市場の一角に、新しい棚が現れる。


整然と並ぶ。


「内部供給」


レイナが言う。


「村内専用の流通」


つまり。


「外の価格と、内の価格を分ける」


マリナが補足する。


「外には出さない」


「内では安く回す」


理解が追いつく。


「……外だけ高いのか」


「そう」


マリナは微笑む。


「外の商人は、“高い市場”を作ったつもり」


「でも実際は――」


「自分たちだけが高値で買うことになる」


静かに、残酷な構造。


エルダが口を開く。


「外に売るのか」


「売るわ」


マリナは即答する。


「ただし――選ぶ」


売る相手。


量。


タイミング。


全部。


コントロールする。


「安売りしない」


「でも、止めもしない」


カイゼルが言う。


「流れは維持する」


レイナが笑う。


「止めない。でも握る」


それが答え。


その日の夕方。


裏ルートから荷が来る。


少量。


だが十分。


レイナが即座に仕分ける。


「これは内部」


「これは外」


迷いがない。


「この量で足りるのか」


エルダが問う。


「足りるようにするのが仕事よ」


レイナは軽く言う。


実際――足りる。


無駄がない。


夜。


マリナが動く。


小さな商談。


裏のルート。


相手は外部商人。


だが――


立場は逆。


「高いわね」


商人が言う。


「当然でしょ?」


マリナは笑う。


「あなたたちが上げたんだから」


逃げ場はない。


相手は分かっている。


だが、必要だ。


「買うしかない」


「ええ、どうぞ」


完全に主導権を握っている。


その頃、村では――


料理人が腕を振るっていた。


「今日は塩効いてるぞ!」


笑い声。


湯気。


肉の焼ける匂い。


子どもたちが走る。


何も変わらない。


いや――


むしろ良くなっている。


リナが薬を配る。


「はい、これ。安くしといたから」


「助かるよ!」


笑顔。


自然な流れ。


無理がない。


エルダはそれを見ていた。


腕を組んで。


「……悪くない」


短い言葉。


だが認めている。


カイゼルが横に立つ。


「どう思う」


エルダは少し考える。


そして言う。


「戦ってないのに、勝ってる」


それが本質。


マリナが戻ってくる。


「終わったわ」


「どうだった」


カイゼルが問う。


「向こうが焦ってる」


当然だ。


自分たちで作った高値。


だが、支配できない。


「そのうち崩れる」


マリナは確信している。


「価格は、操作できても――」


「流れは支配できない」


レイナが続ける。


「止めたら死ぬ」


それが商人。


それが市場。


翌日。


外部市場。


異変が出る。


「高すぎる」


「売れない」


「でも仕入れは高い」


崩壊の兆し。


そして――


「例の村だけ普通だ」


噂が広がる。


情報は止まらない。


どこからか漏れる。


それもまた――


カイゼルの仕組み。


夜。


村は静かだ。


だが、確実に動いている。


マリナが言う。


「これで主導権はこっち」


レイナが笑う。


「流れ、完全に握ったわね」


エルダが頷く。


「守れる」


カイゼルは最後に言う。


「壊さない」


それがこの村。


奪わない。


潰さない。


ただ――


回す。


正しく。


強く。


「市場は戦場じゃない」


マリナが呟く。


「でも――」


少し笑う。


「勝敗はある」


そして今回は。


完全勝利だった。


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