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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第1章:「泥水と残飯のフルコース」

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第1話:「生存限界タイムアタックと底辺の恵み」

 視界の端で、赤いアラートが明滅を続けている。


【HP:3/15 ※空腹ダメージにより継続減少中】


 全身の細胞が悲鳴を上げ、胃袋が自身の内臓を消化しようとしているかのような激痛。


「あ、がっ……はぁ、はぁ……」


 泥水の中に倒れ伏したレナは、痙攣する体を必死に動かし、周囲を見渡した。

 薄暗い裏路地。石畳には苔が生え、壁際に行き場のないゴミの山が悪臭を放っている。チュウチュウと鳴き声がして、丸々と太ったドブネズミがゴミの山から何かを咥えて走り去っていった。


 普通なら吐き気を催す光景だ。しかし、狂気的なまでの食への執着と、古代のサバイバル知識を詰め込んだレナの脳は、この状況を極めて冷静に分析していた。


(ネズミを狩る……無理。今の最弱ステータスじゃ、素早さで追いつけない。逆に噛み殺されるリスクがある)


 彼女の震える視線が向かったのは、ネズミが漁っていた酒場の裏口らしきゴミ捨て場だった。

 這いつくばるようにして泥水の上を進み、生ゴミの山へと手を突っ込む。

 腐った野菜の切れ端。誰かが吐き出したような謎の汚物。その中に、泥にまみれた巨大な『骨』があった。

 おそらく、酒場で提供されたモンスターの肉の残骸だ。表面の肉は綺麗に削ぎ落とされ、ただの硬いゴミとして捨てられている。


「……これなら」


 レナは骨を両手で掴み取ると、傍らに転がっていた手頃な石を握りしめた。


 ガンッ! ガンッ!


 細い腕の力では一度では砕けない。何度も何度も、血が滲むような執念で石を骨に叩きつける。

 五回目の殴打で、バキィッという音と共に太い骨が縦に割れた。

 中から姿を現したのは、赤黒くドロリとした髄液――『骨髄』だ。


(古代人類は、肉食獣の食べ残した骨を砕いて髄をすすり、生き延びた……骨髄は高カロリーで栄養価の塊……!)


 衛生観念など知ったことではない。

 レナは割れた骨に躊躇なく口をつけ、泥まみれの顔でそのドロドロとした髄液を啜り込んだ。


「んぐっ、ちゅ、ずずっ……!」


 生臭い血の匂いと、獣特有の泥臭い脂の味が口の中いっぱいに広がる。

 現代の完全栄養食しか知らない彼女にとって、それは強烈すぎる『本物の異臭』だった。

 だが。


「……おいしい」


 涙が溢れた。

 不快なはずの臭みも、舌にまとわりつく生ぬるい脂も、すべてが「生命の味」として彼女の脳髄を強烈に刺激した。無機質な灰色のゼリーでは絶対に得られない、圧倒的な味覚の暴力。


【条件を満たしました】

【『生骨髄(鮮度:劣悪)』を摂取。空腹度が5%回復しました】

【※警告:寄生虫および食中毒の判定に成功しました。状態異常は発生しません】

【スキル『悪食』を獲得しました】


 赤い明滅が消え、HPの減少がピタリと止まる。


「あはは……っ」


 泥と血で顔を汚したレナは、裏路地の底で割れた骨を抱えながら、恍惚とした笑みを浮かべた。

 これが、味覚を失った現実世界から来た狂気の少女による、異世界サバイバル料理の第一歩だった。

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