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『餓死寸前の最弱アバターからのサバイバル料理 ~現実世界での完全栄養食に絶望したので、VRゲームで失われた「本物の味」を再現して夢の食堂を開きます!~』  作者: ゆっきー
第2章:「最強の護衛と、夢の食堂の予定地」

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第17話:「暴力的なミックスグリルと、開店祝いの宴」

 真新しいログハウスの厨房で、凄まじい音と匂いが爆発していた。


 ジュワァァァァァァッ!!


 レナが熱した巨大な石板(エドが切り出した玄武岩の特製プレート)の上に、分厚く切り分けた『暴れタウロス』の赤身肉を叩きつける。


 見事なサシの入った肉が超高温で一気に焼き上げられ、濃厚な牛脂が焦げる暴力的な匂いが、カウンター席で待機する面々の鼻腔を容赦なく蹂躙した。


 「おおおおっ! なんだあの分厚い肉は! 見ているだけで私のレベルが上がりそうだぞ!」


 「騒ぐなセリア。レナは今、隣で『森の怪鳥コカトリス』の肉も焼いている。あの皮が弾ける音を聞け」


 最強プレイヤー二人が、カウンターに身を乗り出してヨダレを垂らしている。


 エドの言う通り、レナは牛のステーキの横で、コカトリスの巨大なモモ肉を皮目から香ばしく焼き上げていた。ミレが提供してくれた香草(ガーリックに似たハーブ)をたっぷりと擦り込み、滲み出た鶏油チーユで表面を揚げ焼きのようにカリカリに仕上げていく。


 「ミレ、お皿の準備お願い! みんなよく食べるから、一番大きい木のプレートね!」


 「は、はいっ! わぁ……すごい熱気と、すっごくいい匂い……!」


 ミレがカウンター越しに並べた大皿に、レナが次々と焼き上がった肉を乗せていく。


 表面はカリッと、中はレアに仕上げたタウロスの極厚ステーキ。


 噛めば肉汁が弾け飛ぶ、コカトリスの香草グリル。

 その二つの主役の横に、肉の旨味を吸わせた森のキノコと野草のソテーをたっぷりと添える。


 「お待たせ! 夢の食堂、オープン記念の『特製ミックスグリル』だよ!」


 ドンッ、とカウンターに大皿が置かれた瞬間、歓声が上がった。


 「いただくぞおおおおっ!!」


「……いただきます」


 セリアがタウロスのステーキをフォークごと噛み砕かんばかりの勢いで口に運び、エドも無言でコカトリスの肉に食らいつく。


 「――ッ!! 柔らかいっ! なんだこのタウロスの肉は! 噛まなくても口の中で解けていくぞ!!」


 セリアが目を見開き、感極まったように叫んだ。


 タウロスの肉は本来、筋張って硬いハズレ食材だ。しかし、レナが事前に叩いて繊維を断ち切り、絶妙な火加減で焼き上げたことで、極上のステーキへと変貌していたのだ。


 「……こっちのコカトリスもすさまじいな。皮はサクサクなのに、中の肉汁で溺れそうだ。香草の風味が肉の臭みを完全に消している」


 いつもは仏頂面のエドも、口の周りを脂まみれにしながら恍惚と笑っている。


 ミレは小さく切り分けたお肉を頬張り、「おいひい、おいひいれすぅ……っ」とまたしても泣きながら食べていた。パピーも専用のお皿に顔を突っ込み、夢中で尻尾を振っている。


 【料理名:『タウロスとコカトリスの極上ミックスグリル』】

【効果:HP・スタミナ完全回復。状態:『極上の満腹』『至福』を付与】


 システムログに踊るチートじみた数値はない。

 あるのはただ、「最高に美味いものを食べて、お腹と心が満たされた」という、当たり前で、けれどこのVR世界(そしてレナのいた現実世界)の何よりも尊いバフだけだった。


 「ふふっ。いっぱいあるから、おかわりしてね」


 レナはカウンターの内側から、ガツガツと肉を貪る騒がしい常連客たちを見渡した。

 温かいランタンの光と、木の匂い。そして、笑顔で料理を食べる仲間たち。


 味覚を失った現実世界で、飢えと孤独に震えていた最弱の少女が作り上げた『夢の食堂』は、今夜、最高の形で産声を上げた。

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