第16話:「トップランカーの無駄遣いと、念願のカウンター席」
「ふははははっ! どうだエド! 私の方が倒した大樹の数も、切り出した石材の量も多いぞ!!」
「ふざけるな。お前の木材は切り口が荒い。俺の『飛燕』でスライスした木材の方が、建材としての品質は圧倒的に上だ」
ドスンドスンと森を揺らす足音と共に、更地に二つの巨大な山が築かれた。
一つは、エドが持ち帰ってきた均等な厚さの美しい巨大木材の山。
もう一つは、セリアが力任せに引っこ抜いてきた大樹と、岩山から削り出してきた巨大な石材の山。
そしてその横には、セリアが「ついで」とばかりに狩ってきた『森の怪鳥』や、エドが仕留めた『暴れ牛』などの新鮮な肉がゴロゴロと転がっている。
「ひぃぃ……森の生態系が壊れちゃいますよぉ……」
ミレがその常軌を逸した光景に震えているが、レナは目を輝かせて巨大な建材の山に駆け寄った。
「すごい! これだけあれば、立派なお店が建つよ! 二人とも、お疲れ様!」
「ふん、当然だ。さあ、早くこの素晴らしい建材で私専用の玉座を作れ」
「馬鹿かお前は。レナ、俺の木材から先に使え」
「はいはい、どっちも使うから喧嘩しない。それじゃあ、組長の指示に従って、組み立て作業開始!」
レナの頭の中には、すでに完璧な建築図面が引かれていた。
彼女が指示を出し、エドとセリアが重機のようなパワーで巨大な丸太や石材をパズルのように組み上げていく。釘は一切使わない。木材に切り込みを入れ、互いをガッチリと噛み合わせる古代の建築技法(木組み)だ。
これほどの巨大建築、普通なら数十人の職人が数ヶ月かけて行う作業だ。
しかし、レベル計測不能のトッププレイヤー二人の圧倒的な筋力とアバターの機動力にかかれば、ログハウスの壁はみるみるうちに立ち上がり、丈夫な屋根が更地を覆っていった。
数時間後。
夕闇が森を包み始める頃には、中央の巨大な「石窯」を囲むようにして、頑丈で立派なログハウス風の店舗が完成していた。
「……できた」
ススと泥で顔を汚したレナが、腰に手を当てて満足げに頷く。
雨風を完全に凌げる分厚い木の壁。
そして何よりレナがこだわったのは、石窯と厨房をぐるりと囲むように設置された、分厚い一枚板の『カウンター席』だった。
「これなら、みんなで並んで座って、出来立てのご飯を一番美味しいタイミングで食べられるでしょ?」
レナがカウンター席をポンポンと叩くと、待ちかねたようにエドとセリアがドカッと席に腰を下ろした。
「悪くない。厨房の熱気が心地いいな」
「うむ! この席からなら、肉が焼ける様子を特等席で見張っていられるぞ!」
「わふっ!」
パピーも短い脚でピョンと飛び上がり、セリアの隣の席(の上のテーブル)でお座りをして尻尾を振っている。
ミレも恐る恐るエドの隣に座り、「木のいい香りがしますね……」と嬉しそうにカウンターを撫でていた。
「よし、お店も建ったことだし! 今夜は新装開店の、お祝いの宴会だよ!」
レナはカウンターの奥――自分の城である厨房に立ち、二人が狩ってきた巨大な肉の山へ向けてナイフを構えた。
温かいランタンの灯りに照らされた、真新しい隠れ家食堂。
記念すべき第一回目の「夜の営業」が、今まさに始まろうとしていた。




