↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界戦国記  作者: 鈴木颯手
最終章・三河決戦
109/109

第百二話・三河侵攻6

「全く。信秀様の無茶ぶりにも困ったものだな」


 織田弾正忠家家臣山口教継は千の兵を率いて同盟者である水野信元と共に西尾城を攻めていた。西尾城は前線の鷲塚城に援軍を送っていた関係で兵がほとんど残っておらず、水軍衆を用いて海を越えて渡って来た水野・山口連合軍の前にあっけなく降伏した。そして援軍として出陣していた兵たちも鷲塚城をさっさと落とした織田信繁の軍勢にあっけなく壊滅させられていた。


「ですが吉田城を落とすことが出来れば大きなけん制となるでしょう」


 そして、鷲塚城を落とした信繁と合流し、四千の兵となった彼らの次の目標は遠江からもほど近い場所に存在する吉田城だった。ここは三河南部の中でも要衝に位置している城であり、ここを落とすことは起きな利益を生み出すことは理解していた。

 しかし、それだけの城だけに今川家が三河に進出後は国人衆や松平家ではなく自らの配下を配置していた。


「確か城主は小原鎮実、でしたかな? 今川家でも中々の将だと聞き及んでおりますが」

「少なくとも三河で唯一今川家が保有する城を任せられるだけの器量を持った人物ではあるでしょう」


 吉田城には千五百の兵が配置されており、四千の兵では落とすことは難しい城だった。そもそも城事態が堅牢な造りの為に元々平押しでも厳しかっただろう。


「野戦に出てくれれば……。無理な話ですな」

「向こうはこちらの半分以下なのだ。その時点で出陣して来れば何かしらの奇策があると考えた方が良い。むしろそっちの方が厄介だ」

「城攻めも厳しく野戦で来れば何があるか分からない怖さがある。……難儀ですね」


 西尾城の本丸で山口教継、織田信繁、水野信元は話し合うが良案が出てくる事はなかった。そもそもの話、ここにいる三人は城攻めが得意ではなかったりする。山口教継は守りにおいては抜群の才覚を発揮し、信繁は野戦。信元はそもそも戦自体が得意ではない。完全に信秀のミスではあるが吉田城を落とす事さえ出来れば三人はそれぞれの分野で活躍する事になるため必要な人選と言えた。


「とりあえず出陣して包囲してみますか?」

「今川軍が近づいてる中で気長に包囲するのは得策ではないだろう。包囲している最中に攻撃でも受けたらひとたまりもないからな」


 既に今川軍が遠江に入っているという報告は信元たちの元にも届けられていた。猶予は長く見積もっても半月あるかないかだろう。早ければ一週間程度で三河に雪崩れ込んでくるかもしれなかった。そのため、気長に包囲するという事は不可能だった。


「さてはて、何かしら良い方法でもあれば良いのですが……」


 そんな風に教継が言った時だった。水野家の兵士が会議中の部屋に入って来たのである。


「し、失礼いたします! ただいま、戸田家の使者を名乗る者が訪ねてきております!」

「戸田家? 何処の国人衆だ?」


 教継は名前に心当たりがなかったのかそう尋ねるが信元は聞き覚えがあったのか表情を険しくした。


「戸田家は渥美半島一帯を領土とする家ですよ。三河の海運業を事実上支配していて三河の中だと松平家に次ぐ勢力ですよ」

「ほう? そんな力を持った家が我らに何のようか。伺ってみますか?」

「追い返すわけにもいかないからな。私は賛成です」

「私も。反対する理由もないですしね」


 三人は戸田家の使者に会う事を決めた。それが行き詰った現状に風穴をもたらすことになるだろうと何処か確信めいた直感を感じながら。






「お初にお目にかかります。某、戸田宜光と申します」

「水野家当主、水野信元だ」


 使者としてやってきたのは戸田家の一族の者だった。年若く、信元とそう変わらないように思えた。しかし、若くとも使者を任せられるだけの信頼を当主から得られていると信元は予想した。


「それで? 我らにどんな用事かな?」

「単刀直入にお伝えします。我ら戸田家、織田家に投降したくございます」

「投降? それはまた急な……」


 予想外、と言えば予想外の話だった。てっきり同盟なり不可侵なりを求めてくると思っていたばかりに宜光の言葉は想定外だったのだ。


「条件は?」

「本領安堵。それと三河湾の利権です」

「それは少し欲張りではないか?」


 本領安堵に関しては問題は無いだろうが三河湾の利権までを安堵しろというのは難しい話だった。水野家としては問題は無いが織田家が何というのかは分からない。黙って話を聞いている教継も困ったように首を横に振るだけだった。


「無論、その見返りを準備しております。現在、我が父にして戸田家当主康光は吉田城に兵を連れて入場しております。そちらが条件を呑んでくれるのであれば父上は城内で反旗を翻し、吉田城を落とす準備を整えております」

「なんと……」


 それは魅力的な話だった。吉田城を落とす方法で悩んでいたところなのに今まさにそれを成す方法が提示されたのだ。信元としては今すぐにでも応じたかったが一呼吸置くと宜光に言った。


「利権については信秀殿次第になってしまうだろう。しかし、吉田城攻略の功績があれば応じてくれる可能性も高くなる。吉田城を落とした暁には私からも推薦してみよう」

「ありがとうございます。今はそれで十分にございます。それと、吉田城の東部の二連木城は戸田家の影響力が高い城です。吉田城が織田家のものとなればおのずと投降してくるでしょうしそうでなくともこちらから口添えして寝返らせる事も可能です」

「……成程な。こちらとしては応じる以外にはなさそうだな」


 用意周到な戸田家の動きに信元は苦笑しながらそう言うしかなかったのだった。




 数日後、吉田城に到着した織田・水野連合軍は城内の戸田康光と呼応して内外から攻撃を仕掛け、半日で陥落させる事に成功した。城主小原鎮実は命からがら逃走し、曳馬城に逃れていく事になる。

 更に康光の働きかけで二連木城は織田家に投降した。結果的に連合軍は戸田家の兵二千に加えて三河南部をほぼ手中に収める事に成功するのだった。これにより、三河における今川の影響力は格段に低くなることになるのだった。


挿絵(By みてみん)

現在における三河の地図になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。