081 狐と神狼、相まみえる
梨紅には一つだけ、学校を上手く抜け出す方法が思いついていた。
しかし。
それはあまりしたくない。
その思いが非常に強かった。
けど。だけど。でも。されど。
「う~~~~ん」
トイレの中の個室の中で頭をうんうん唸っている姿は誰にも見られたくない。
“ええい! うっとうしい!”
と、梨紅の頭の中で声が響く。
出来るだけその声は無視しようとした。
だけど、思いのほか。梨紅の頭はパニック状態であったのだ。
「ねえ」
気が付けば。
梨紅はあまり会話をしたくない存在に声をかけ、なんとも驚くべきか。
「どうしたらいいと思います?」
声に相談を持ち掛けていた。
驚いたのは梨紅だけではなく、声も驚いたように一瞬だけ声を詰まらせる。
が。
“知らん”
とだけ答えるとむすりと黙り込む。
「そこは何がだと聞くのが礼儀だと思いますけれど」
“知らんもんは知らん。勝手にしろ。そもそも何を悩んでいるのかも理解出来ないのだよ。私は”
「だからアレになるのが嫌だから、何か他に方法はないのかって話です!」
声は少しぽかんとして、
“…………何が嫌なのだ? アレの何が不満だ。アレは“神狼と呼ばれるような気高き姿の、神の如き強さを備えた狼なのだぞ?”
「“神狼”ねえ……」
梨紅は少し鼻で笑いそうになってしまった。だが、なんとか堪える。我慢。
“よいか。貴様に言っておくぞ。貴様がどれだけ戦いを拒もうが、誰が私たちの戦いに介入しようとも。私たちが“十字架を背負うもの”としての天命はなにも変わらぬ。“悪疫”を打ち滅ぼすこと。悪を焼き尽くすこと。これはなにも変わらぬのだ。それ以外のことを私に問うな。知らん。そんなものは何一つ知らんのだ。勝手にしろ。天命さえ忘れなければ私は何も咎めぬ。勝手にしろ”
そう言ってから声は梨紅の中へと消えていく。
相変わらず、自分勝手な人ですね。
結局、相談の答えは何一つ返って来ませんし。
もう一度頭を抱える。
トイレの中に入ってからもう一〇分以上は経った。これ以上悩んでいると昼休みの時間が終わってしまう。そうなるとかなたの家に寄ってから学校へと戻ることは困難だ。
しかし。
言い換えると。
梨紅が最も嫌う“神狼”の姿になればかなたの家へと速攻で駆け、あらかたのお世話をして戻ることも可能であるということだ。
悔しいが“神狼”という名前は伊達ではない。名ばかりのそんなに緩いものでもないのだ。
ぐぬぬ……と唇を噛む。
おそらく“神狼”になるともう元には戻れない。
詳しく言えば。
かなたの前では決して、元の梨紅の姿には戻れない。
あの姿はものすごく強い反面、精神上の弱点がある。
まず、普通の羞恥心を持ち合わせている女の子では絶対になろうとなんてしない。
しかし。
最早限界だった。
ぎゅっと拳を握る。
そして……。
覚悟する。
「待っててくださいね、かーくん!」
トイレの中で絶叫。
よかった。周りに誰もいなくて。いたら悶絶もんだ。
気合を入れたのち、梨紅は、
「…………うぅ」
トイレの中で服を脱ぎ始めた。
しゅるしゅると布が擦れるような音がトイレの中に響く。
上着を脱ぐとトイレの後ろのわずかなスペースの段に畳んで置いた。次に制服の下のYシャツのボタンをぱちり、ぱちりと外し始めた。三個目ぐらいのボタンを外すと、今まで窮屈になっていた胸が弾むようにして外へと露出して、肌色の山とそれを下から支えている純白のブラジャーが露わになる。ボタンを全て外すとYシャツを脱いで、またそれを畳んでからスペースに置く。
次に便座を下ろしてからその上に座って、形のよい足を高々に上げ、トイレの地面に靴下がつかないようにして、それを脱ぐ。やがて、ふくらはぎが捲られて、真っ白な素肌が現れる。
そして座ったままの体勢で少しだけ桃のようなお尻を浮かしてから、スカートを脱いで指先でそれを抓む。すっと立ち上がると指先で抓んでいたスカートを制服の上に置いた。
今、梨紅はトイレの個室の中で上は純白のブラジャーで下はその純白に合わせたような真っ白なパンツ一枚だけというあられもない姿になっている。
改めてトイレの個室の中で下着姿になってみて。
顔がぽおっと紅潮。
何だか不思議な気分だった。
体育の授業なんかで着替えることはよくあるし、学校でこの姿になったことがないという訳でもないのに、ものすごく恥ずかしくなってしまった。
トイレの中で無防備なこの恰好をしているのがものすごく変な気分にさせているのだ。
「うぅ」
顔を赤くしながら、背中に腕を回す。次はブラジャーを外そうとしているためだ。
背中に回した指先をバックホックに置くと、すっとブラジャーを外した。張りがあり、大きさもある乳房が露になる。
誰も見ていないのに、ものすごく恥ずかしい。
さっきから顔はずっと真っ赤だ。
ブラジャーを外しただけでこれとは。
次に脱ぐのはパンツなのに。
そこのところは分かっているのだろうか。自分。
「うぅ……」
やっぱり抵抗がある。
お風呂に入るわけでもないのに、素っ裸になるのは年頃の娘としては恥ずかしすぎた。
だが。
(かーくんのため……ためだもん!)
断固たる意志が彼女にはあった。
梨紅は眉根を寄せ、心底恥ずかしそうに身をよじる。
指の先をパンツと太ももの間にくぐらせ。
そして……とうとう。
彼女はパンツを脱いだ。
しばらくはスマホ投稿が続くと思います。
ネットが……ネットが……。
最悪更新が停止、もしくは遅れるかもです。
執筆がしづらくて……。




