080 狐と神狼、相まみえる
ただ、問題が一つあった。
それは。
いかにして学校を抜け出すか、である。
梨紅は周りを見た。
今はお昼休み中なので、教室の中は生徒の姿でいっぱい。
なので。
本当に、なので。
一人ぐらい生徒がいなくなっても誰も気が付かない。しかしそれは教室を抜け出すまでという意味で、だ。校門のところには教師が数人ほど立っていて、学校を抜け出そうとする生徒を呼び止めている。たまにいるらしい。学校を許可なく抜け出すような輩が。
そう。学校を抜け出そうとするのは輩と呼ばれるような人たちばかり。
梨紅はそんな輩の存在と一緒にされる訳にはいかなかった。
誰よりも優等生であり続けなければならない。
梨紅が遠い実家から離れ、この月城高校に通う条件が“何一つ問題を起こさずにすること”であったためだ。それは自分の“力”が暴走しないことを戒めるためのものであろうと彼女は考えていた。そう、あまり仲の良くない親に言い聞かせられている唯一の繋がりなのだ。だからこのことだけは絶対に守らなければならない。
なので。
ものすご~~~く困っている。
どうしよう。
どうやって学校から抜け出そうか?
と、梨紅は思っていた。
かなたの看病に行きたいがために、どうにかして先生らに見つかることなく。栗栖梨紅という一人の少女の評価が下がることなく学校を抜け出す方法はないか。
模索。
とりあえず友人たちにトイレに行くと言ってから立ち、教室を出ることにした。
真っ先に思いついたのは以前、この学校から逃げ出した時のように屋上から飛び降りるという方法。三階の教室から少し廊下を歩いて、屋上へと続く階段へと昇って行った。
と。
「うそ……」
屋上の扉がこの前と違い、かなり頑丈に施錠させられていた。
南京錠を三つほどつけられ、その内の一つには開ける気さえないだろと。思わずツッコミたくなるほど針金でぐるぐる巻きにされていたのだ。
別にこの程度なら壊すぐらいはどーということはない。
ちょっと力を入れてしまえばこの程度の鍵、簡単に壊せる。
だけどこれほどまでに頑丈に施錠させられている鍵を壊せば、きっと騒ぎになる。おそらく鍵をかけた本人でさえ簡単に開錠出来ない鍵を取り付けたということは、開ける必要がないと思っているはず。その鍵がもし、また壊されでもすれば必ず騒ぎになってしまうだろう。
「う~ん」
困った。困りまくりだ。
階段を下りながら腕を組んで、どうしたものかと頭を抱えた。
こうしている間にもかーくんは苦しんでいるというのに!
階段を下りて、すぐ。
梨紅は足を止めた。
目に入ったからだ。
梨紅の目の前にトイレがあった。
周りに人はいない。
――いない。
梨紅はそっと辺りを見回しながら、女子トイレの中へと……。
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