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ヴァンプライフ!  作者: ししとう
scene.3
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028 クドラクとクルースニクと許嫁と

 タバコ屋は意外と遠くて、僕が学校へと戻って来た時にはすでに授業は終わり授業と授業の間の五分間の休み時間が始まっていた。

「あちゃ~」

 これじゃ完全に遅刻扱いだな。

 と、僕が頭を抱えつつ教室の扉を開けると、

「遅い」

 目の前に八神先生の姿があった。

「あ」

「……」

 わ~……やば。

 怒ってらっしゃる。

「たはは……」

 僕は誤魔化すように苦笑しながら買ってきたタバコを渡す。

「ち。さすがにこの時間じゃどうしようもねーな。あの件は諦めろ。じゃあな」

 と、言って受け取ったタバコをポケットの中に突っ込むとすたすたと歩いて去っていく八神先生。

「ふう」

 ……ま、遅刻したのは自分のせいだし、仕方ないか。

 と、そんなことを考えていると、

「よっ」

 不意に後ろから肩を叩かれる。

 振り返るとそこには一人の男子生徒が立っていた。肌は焼け、俊敏そうな体つきの少年。髪は今はやりのツーブロックのショートヘアで決めていて、いわゆるチャラめな雰囲気が滲み出ている。

「なんだ白檀(びゃくだん)か。びっくりした」

 白檀典明(びゃくだんのりあき)。この学校に入学した時に席が隣になり、それ以来懇意にしている。学校で一番の友人だ。

「お前が遅刻とは珍しいよな」

「うーん、まあ色々とね」

「何だ何だ? 教えろよー」

「だから色々だってば!」

 ぐいぐいと聞いてくる白檀を後に、僕は自分の席へと戻った。

 説明をしてやりたいのは山々なのだが、どうにも説明が難しい。

「どうして言わないの?」

 席に座った途端、不可視のクドがそんなことを聞いてくる。

 当然、他の人間からクドの姿は見えていない。見えていたら今頃騒ぎになっている。

「どうしてって言われてもね~。誰も信じないよ。吸血鬼がうんたらかんたらって話は。だったら言わない方がいいと思うよ。わざわざ自分から言うような話じゃないし、ただの痛い高校生だなって終わればいいけど、もし、万が一にでも吸血鬼って話を信じたとしても関わらない方がいいに決まってる。だから言わないって訳。クドも他の誰かに吸血鬼がどうのこうのってもし聞かれたとしても自分の正体は明かさない方がいいよ。絶対」

 納得したのかクドはこくりと首を縦に振る。

「それにね」

 僕は続ける。

「白檀の家は教会なんだ」

「えっ?」

 クドが不思議そうな顔をする。

「でもわたしの姿は見えていないようだけど?」

 と、クドが僕の席の隣に立ちながらそう言ってきた。

「よく分からないけどそういう力はないんだってさ。そういう力よりもモテ力の方が大事だって言ってね。それに白檀の家の教会はどっちかっていうと養護施設みたいなものだからそういう力はいらないんだって本人が言ってたよ」

 と、少し笑いながら話す。

 事実、白檀に霊能力めいた力は一切ない。クドの姿が見えていないのが何よりの証拠である。

 一応教会の跡取りとして聖書に目を通すぐらいはしたのだが、日本人らしい彼の感性では肌に合わず、本人曰く「心を込めて一所懸命祈れば、それが信仰になるんじゃないのか?」とある意味で中庸の態度を貫いている。

 それに白檀の教会は主に養護施設の方が近所の方々には有名だ。行く当てのない子供だったり、孤児だったり。そういった子供たちを引き取って世話をしているので教会の中はいつも子供でいっぱいだ。

 ま、本人も教会の跡取りというよりは養護施設の先生になるのが夢みたいなところがあるので、それはそれでいいのかもしれない。白檀のそういうところが好きなのかもしれないが。

 と、クドは僕の話を聞かずに辺りをきょろきょろと見回していた。

「どうかした?」

「いや……なにか……」

「???」

 もしかしてクドは学校に興味があるのかな?

 そういえばクドは学校の記憶がないのだから興味が湧いたとしても何の不思議もない。

 なので、

「せっかくだから学校を見て来たら? ここしばらく僕は動けないと思うし。たぶん、暇だよ?」

 そう言ってやる。

 クドは言葉に、

「うん。分かった。確かめてくる!」

 大きく頷いてから教室の扉をすーっとすり抜けて出て行っていく。

「あっ、ちょ、クド?」

 声を出してみたが、時すでに遅し。クドの姿はすっかり見えなくなっていた。

 入っちゃいけない場所もあるからその場所には入らないようにって言うのを忘れてしまった。大丈夫かな……?

 にして……も。

 確かめてくる?

 何を?

 う~ん、やっぱり心配だな。僕も追いかけた方がいいんだろうか。と言っても次の授業までもう一分もない。

 あー、でも。でもでも。心配だな~。ちょっと抜けてるとこあるし。

 よし! やっぱり追いかけよう。すぐに追いかければ間に合うはずだ。ちょっと言って、すぐ戻ろう。

 そう思って立ち上がってすぐ。


「あの、どこへ行くんですか? 久遠(くおん)くん……」


 不意に後ろから声を掛けられる。びくっと背筋が凍る。

「え」

 恐る恐る振り返る、と。

「あ、栗栖(くるす)さん」

 そこにはあった。

 きょとんと首を傾げ、こちらをじっと見据える女子生徒の姿が……。

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