第三話 夢 (2/3)
夜になってベッドへ横になると、またあの時間がやって来た。
「お母、さん……?」
私は背後から感じる気配に身構えた。
姉の念は飛んで来ていない。上手く対処が出来たのかなと思った。ただ今日の障りは、これまでのものと違っていたようだ。
私は首元に手を入れられ、毛先に向かって髪を梳かれた。その行為は気味の悪さだけでなく、意図のわからない怖さがあった。
「い、いや……っ」
さらに両手で頭を撫で回された私は、堪らず逃げるように身を縮める。すると、曲がった腰に何かが当たった。壁ではない。人の身体に触れた感覚だった。
実体化しないはずのものが、人と同じように身体を形成しているのがわかったのだ。自分から触れてしまう経験がなかっただけに、私はまるで病状が進行してしまったかのようにショックを受けた。
――背後に居るのは母なのか。
母ならまだ……なんて妙な感情を芽生えさせつつ、私が相手の出方をうかがっていると聞こえた。
少女の笑い声だった。
無邪気で怖かった。でも私は、それがゆえに邪悪さを感じたわけじゃない。人間離れしていたのだ。霊魂は1つしかないはずなのに、声は何層も重なって聞こえた。
けれど声は遠のいた。後に消失もし、背中越しに接していた身体の感覚も無くなった事から、私は解放されたのだと悟った。
だから咄嗟に振り返っても、誰も居なかった。当たり前な事なのに、居ない方が不思議に感じるのは、もう頭がおかしくなっている証拠だと思った。
でも安堵したのだろう。私は時計の秒針のカウントで、催眠術でも掛けられたかのように深い眠りへとつく事が出来た。
私は見知らぬ少女たちと遊ぶ。
真白くらいの年齢の子がいっぱい居て、顔が無い子もいっぱい居て、私は訳もわからずに駆けていた。
ここはどこだろう。
家がぽつんぽつんと建っている、静かな街だった。
不安になって立ち止まると、私の顔をみんなが覗きにくる。
『大丈夫。怖くないよ』
戸惑う私に、黒いドレスを着た一人の少女が、そう手を伸ばした。
遊ぼうと言う声が、周りの少女たちのものと重なった。
……夢だった。それがいつを境に始まったのかはわからないけれど、起きる直前まで見ていた夢なのは確かだ。
だって私は、夢で話していた台詞を口にしながら目覚めた。
そして私が話すその台詞を、枕元に立つ少女が同時に呟いたのも確かだった。




