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第二話 縁 (3/3)

「いってらっしゃいっ」


 私が手を振ると、奈菜はありがとうと言いながらも謝るように手を合わせて、西日が差し込む教室を出て行った。

 気にしなくてもいいのにな。でも彼氏になった先輩が、今日も部活を見に来てくれるらしい。奈菜の足取りに、自分の心も軽くなったのだった。


 さぁ、真白が待っている。急ごう。


 初等部は中等部よりも終業が一時間ほど早い。登下校には電車を利用するが、真白には近所に住む友達が居るので一緒に帰ってもらってもいいのだけれど、誰も居ない家に帰るのが怖いと言い張り、私を待っていてくれている。


「お待たせ真白。その本、もう少し読んでいく?」

「青ねーちゃん……っ」


 待ち合わせ場所にしている学院の図書館へ入ると、真白は本を眺めていた顔を上げた。館内にはテーブル付きだったりと色んなタイプの座席があるが、真白はこのふかふかソファー。出入り口横がいつもの定位置で、今日は星座でも惑星でもなく、動物の生態について書かれた本を数冊借りて読んでいたようだ。


「ううん。今日もりょうくんたちと遊ぶから」

「わ。そうだったんだ、いいね。じゃあ帰ろう」

「うん……っ」


 そう頷いてぎゅっと繋いでくる手を、私は優しく握り返した。


 それから私たちは、いつものようにカウンターへ声を掛け、エントランスホールに出ると見知った顔に出会った。


「居た!」


 と言っても、私にとってだ。しかも見知ったのは、今日である。


「良かった……あっ、いや、ごめんっ。お昼、行けなくてごめん!」

「……青ねーちゃん、誰この人。知ってるの?」

「うん、知ってるよ。えっと……サッカーボール先輩?」


「何それ?」と言って、真白は頭を下げている先輩に眉根を寄せる。私も正直、どう説明したらいいのかわからない。


「名前、青ちゃんって言うんだね。青ちゃん、今日はごめんね。待ったよね?」

「待っててと仰っていたので」


 先輩は私の言葉に、ぎくりと反応した。棘を含んだつもりではないが、意地悪だったかな?

 ぐいぐいと繋いでいる手を引っ張り出した真白に、私は微笑んでうなずいた。


「でも謝らないでください。来られない事情があったと思っていましたから。では急いでいますので、また」


「失礼します」と私は何か言いたげにしている先輩に会釈をして、真白を連れ、図書館を後にした。


 だけれど何で私、先輩に“また”と言ってしまったのだろう……。

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