【第12話】推しからの幻影メッセージに崩れ落ちる
半年前、俺は異世界恋愛番組『LoveTrial』の初回で共感力−2.1を記録し、
視聴者投票により開幕追放された。
演出BGMが止まり、テロップで“好感度マイナス”を流された記憶は、今でも悪夢のように焼きついている。
そんな俺、志無野 睦夫(49)。
あれから多少は変わったつもりだ。共感力はついに【0.1】になった。
もう二度とあんな恥はかかない。そう誓っていた。
──のに、また番組からオファーが来た。
「今回はリベンジじゃなくて、“過去の失敗例として出演していただければ”と……」
つまり俺、“反面教師”として召喚されることになった。
企画名はこうだ。
『LoveTrial Re:Lesson〜過去の感情事故を振り返って学ぼう〜』
俺の過去の出演シーンがスタジオでフル放映される。
・登場早々に「見た目は経理系が好きです」と発言
・「記憶にないことは責任取れないので〜」のスピーチ
・無言で周囲の共感ゲージを下げる姿
共演者たちは半笑いで俺の映像を見ている。
「あ、これ知ってる! “共感マイナスの人”でしょ」
「この人の話し方、全部“言い訳フィルター”通ってるんだよね」
「情緒クラッシャー、マジ実在したんだ……」
俺は無言で苦笑するしかなかった。
さらに、番組中盤でサプライズゲストとして登場したのは、あのルミナ・ミスティア──
俺が異世界で出禁を食らった推しアイドロス本人だった。
彼女は微笑みながら、こう言った。
「志無野さん……今日も、来てくれたんですね」
「ル、ルミナ……っ」
「あなたの存在、本当に勇気をもらえます」
「……え、本当か!?」
「“自分よりヤバい人がいる”って、安心できるから」
その場にいた全員が頷き、拍手が起きた。
それは俺に対する感謝ではなかった。
ただの比較材料として、誰かの“底”として存在価値を持っただけだった。
俺は泣きそうになった。だが泣く資格もなかった。
帰り際、プロデューサーが俺に声をかけてきた。
「今後、出演者用に“情緒アラート”つけることになりました。あなたのおかげです」
「それ、ありが……あ、ありがとう……」
第12話、終了──俺、推しに“乾燥剤”として処分され、心の砂漠で崩れ落ちる。




