プロローグ
「うぅん…おかしいなぁ…私、さっきまで雑貨屋さんにいたはずなんだけど」
何故だろう、私は何故森の中にいて、隣には見知らぬ黒猫がいるのだろうか。ふと空を見上げれば、沢山の星が不自然なほどに輝いていて、私の目を眩ませる。綺麗だなぁ…私の住んでた東京なんかじゃ見られない光景だなぁ。でもな、家に帰らないと…。
「はーぁ…どうしようかね。て、あ!待て、お前!!」
そんなことを思っていると、隣から黒猫が走り去っていってしまう。それを追いかけてどれくらい走ったのだろうか。不思議と疲れは感じず、どこまでも走れるような気分だ。体も軽いし、足も軽い。でも、黒猫はもっと早く走っている。それでも尚、止まらない黒猫の足。どこまで走るんだろう。余所見をした瞬間、腕に少しの痛みが走る。何か、障害物に当たったようだ。それも結構大きいものに。
「痛いなぁ…何?」
見上げれば、アーチがあった。淡いオレンジ色をしたそれは暗い所によく生えていて、とても綺麗だ。何か手がかりが掴めるかも知れないと、書いてある文字を読み上げる。文字は黒いインク、しかも筆記体で書いてあったので読み辛かったが。
「“welcome to Halloween town”…?ハロウィン街へようこそ?」
隣で黒猫がにゃあんと鳴いて、また走っていった。
やばい、追いかけないと。また走り出すと、また何かに当たる。さっきとは違って弾力がある。そう、まるで人に当たったときのような。謝らなければいけない、そう思って顔を上げると、そこにはかぼちゃ頭の人が…。え、かぼちゃ頭?何で?
「いやいや、悪いね。お嬢さん、大丈夫かい?」
そう言って、かぼちゃ頭さんが手を差し伸べてくれたのにもかかわらず、不覚にも私は、その場で倒れてしまった。倒れる寸前の歪んだ視界にみえたのは、先ほどの黒猫が人間の女の子に化けたような…そんな、夢みたいなものだった。




