10/10
【エピローグ 永遠の波紋】
その後――。
目が見えるようになり、元気に後宮を歩き回るようになった蓮華の愛くるしさと健気さは、すぐに宮中じゅうの知るところとなった。
かつて冷たい視線を投げていた侍女たちも、陸雲の一族の者たちも、彼女の咲くような笑顔と気品にすっかり魅了され、「碧蓮池の天女様」と崇めるようになったという。
陸雲と蓮華は、どんなに忙しい日でも、毎夕欠かさず碧蓮池のほとりを訪れた。
「ほら、みんな。今日も持ってきたよ」
蓮華が優しく微笑みながら、水面へそっと上質な餌を撒く。
すると、池の鯉たちが我先にと集まり、嬉しそうに尾ひれを振った。
もう餌の位置に迷うことはない。
もう冷たい水ばかりを呑むこともない。
「今日も美しいな、蓮華」
「ふふ、陸雲様ったら。……池のみんなが見ていますわ」
手を繋ぎ合わせ、寄り添う二人の影が、水面に優しく映り込む。
鯉に恋した男と、人に生まれ変わった鯉。
二人が紡いだ愛の波紋は、後宮の小さな池から始まり、これから先もずっと、永遠に温かく広がり続けていくのであった。
(おわり)




