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津島天王祭!そのニ 意外な出会い

「やけに武士が多いですね。」


「今日は清洲や他の家の者も参りますからな。」


 津島の町は朝から賑わっていて、尾張領外からの商人や近隣の農民や土豪など様々な立場の人が集まっていた。


 ただ多いと言えば武士か多く、織田弾正家の者ではない武士も今日は津島に多く来るらしい。


 現代人的な感覚だと敵じゃないのかと思うんだが。


 元々尾張下四郡守護代の織田大和守家は主筋であるし、尾張上四郡の守護代の岩倉城の織田伊勢守家に至っては、織田家の宗家になり向こうが形式的な立場は上だと。


 このややこしい血縁と権威による秩序が、戦国時代を終わらせない一因な気がする。


 この時代の武士って縁起を担ぐんだよね。


 津島神社の祭神は牛頭天王で薬師如来の姿の一つとされてるようで、薬師如来自体がザックリ言えば人の病を治したりする医療の神様らしい。


 健康と長生きは武士でなくても誰でも望むことだからね。


 この機会にお参りして祈る人は多いんだって。




「あの御方は……」


 物知りな平手政秀にいろいろ戦国の武士や津島の話を聞いていたけど、そんな平手政秀の表情が変わったのは十人近い武士の集団を見た時だった。


 一番偉い人は多分五十代くらいの、 かなりの身分の武士らしい。


「周りに人混みに隠れてる奴らもいるね。気を緩めるんじゃないよ」


 しかも周りには人混みに隠れてる護衛か忍が居るらしく、ジュリアが一益や勝三郎と犬千代に警戒をさせてる。



「これは五郎左衛門殿。このような所で会うとはな」


「山城守様こそ、よく津島へおいで下さりました」


 山城守? 誰だ? この時代は官位を勝手に名乗るから誰だか分からんのだが。


「斎藤利政様です」


 オレが相手を誰だか知らないことに気付いたエルが、耳元で囁いて教えてくれるが、その名前にびっくり。


 斎藤利政って道三だよね? なんで津島に来てるのさ。


 平手政秀の表情が変わるはずだよ。


 和睦がほぼ決まっているとはいえ、敵地の他国に僅かな手勢で来るなんて。


「織田三郎信長である」


「斎藤山城守利政じゃ」


 賑やかな津島の町の往来でそこだけ奇妙な緊張感が生まれ、信長と道三は互いに名乗り相手を見つめる。


 道三は平服ではあるがそれなりにちゃんとした服装だけど、信長はいつものうつけ様スタイル。


 道三の家臣の何人かは明らかにうつけだと言いたげな表情をしてるけど、道三自身はそんな表情は全くない。


「その方が噂の南蛮船の主か?」


「久遠一馬にございます」


 本来の歴史では信長と道三が、津島で会ったなどなかったはず。


 記録に残ってないだけか?


 それはそうとして信長とは名乗っただけの道三は、何故次にオレに注目した。


「五郎左衛門殿。何処かで茶でも飲めませぬかな? 婿殿とせっかく会った故に少し話したいのじゃがの」


「はっ。茶室でなくば……」


「構わぬ。年ゆえに少し疲れての」


 困ったね。うつけと成り上がり者と素直に蔑む目でも向けてくれればいいのに。


 信長にもオレにも蔑む目を向けるどころか、その内側まで探ろうとするような視線を向けてるよ。


 油売りから美濃の大名にまでなっただけはあるか。


 戦は知らないけど、人を見る目や洞察力は信秀以上な気もする。


 弱点は周りがそれを理解してないことか。


 全く、素直に祭りを楽しませてくれないもんかね。



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